料理
神那 美雪
「・・・風華姉様・・・ちょっとお願いがあるのですが・・・」
秋風が心地よく吹くある秋の夕方、美雪はいつものように風華と宮廷の廊下を歩いていた。
「はい? ・・・何ですの?」
もじもじしている美雪の顔を覗き込むように聞き返す。
「あのっ・・・あのですね・・・姉様・・・この前美雪の看病に来てくださったときお粥作ってくださったでしょ」
「あっ・・・はい・・・作りました。結構自信作だったんですよ・・・カイザー君が病気したときも作ってあげましたし・・・」
いつもの優しい微笑を浮かべ美雪に応える。
「でっですね・・・美雪に・・・あのっ・・・えっと」
美雪はモジモジしながら続ける。
「美雪にお料理を教えてください!(赤面)」
「へっ!? ・・・お料理ですの・・・?」
『何か困ったことでもあったんですの・・・美雪さん追い込まれているみたいですの。またコマ将軍からリボンを取られたのか・・・それともアザゼルから人体実験でもされそうになったのか・・・もしそのどちらであってもかわいい義妹にちょっかいをかけるなら今度は本気で痛い目にあってもらわないと・・・』
そんな物騒な(笑)考えを持っていた風華は料理の二言で唖然とした。
「美雪・・・母様がいなくなってから・・・お料理教わっていませんの・・・。この前も村雲さんに『大切な人が出来たらお料理くらい作ってあげないと』と言われて・・・」
突然べそをかき始める美雪。
「美雪さん・・・大丈夫ですの・・・簡単なものからはじめましょう! 美雪さんならすぐ上達しますの!」
「本当ですか・・・姉様」
美雪の顔がパアッと明るくなる。
「ええ・・・姉様にまかせるですの!(ニコッ)」
美雪の頭を風華は優しく撫でながら二人並んで風華の部屋へと向かった。
「どうぞ・・・美雪さんお入りください」
「はい・・・失礼します。姉様・・・」
「おう、姉ちゃんお帰り・・・あれ・・・あんさん?」
「はい、カイザー君・・・美雪さんにご挨拶は・・・?(ニコッ)」
「こっ・・・こんにちは・・・(警戒)」
「あっ・・・!! はひぃ・・・こっこちらこそこんにちはですぅ(ビクビク)」
カイザーの低い声に美雪はおびえていた。
そんな姿を見て風華がカイザーの頭をこっつんこした。
「いたいやん姉ちゃん・・・なんばするんね!」
「誰が美雪さんを泣かせといいましたの?(ニコニコ)」
「・・・ごめん・・・」
「ふぅっ・・・美雪さん・・・この子も悪気はないんですの、人畜無害だから脅えないでですの」
風華がぎゅっと美雪を抱きしめる。
その光景を見てカイザーが放った言葉・・・この一言をカイザーは後悔したと後に語っている。
「姉ちゃんと美雪さんって実は・・・レ○? ・・・ぐはっ」
ずびし・・・バシュ、バシュ・・・べきっ・・・
見事な薙刀さばきでカイザーの肢体を攻撃する。(勿論鞘に入れたまま)
「カ・イ・ザー・君・・・誰と誰が○ズですって(ニッコリ)」
美雪は風華の横で赤面しうつむいている。
「いやぁ流石に姉妹!素晴らしいなぁ(ビクビク)」
「じゃあカイザー君は味見役ですの」
「姉ちゃん・・・俺を殺す気・・・はうっ」
カイザーの座っている調度真横に薙刀が突き刺さる。
「本当に殺すなら心臓に刺しますの(ニッコリ)・・・それとも私たちのご飯が食べられないんですの(微笑み)」
「・・・姉様・・・顔が笑っていません・・・」
「いえっ・・・とても光栄です・・・」
「そうですの? 美雪さん作り甲斐がありますね。さて・・・試食係りも出来ましたし・・・早速準備しますの!」
「じゃあ味噌汁作りましょう・・・美雪さんは材料を切ってくださいね・・・皮むきは出来ますか?」
「はいっ頑張りますぅ(ガッツポーズ)」
慎重に皮をむいていく美雪・・・材料の切り方・・・むき方を丁寧に指導する風華・・・はたから見ると実の姉妹と言っても頷ける。
「出来ました・・・姉様!」
大根・・・長ネギ・・・玉葱・・・それぞれ不揃いではあるが綺麗に皮はむかれている。
「さぁ美雪さん・・・材料と味噌を入れますの!」
しばらくして材料を入れ終えた美雪に風華がささやいた。
「まだ入れ忘れているものがありますの・・・美雪さんわかりますか?」
「ほえっ」
暫くちょこんと首をかしげる美雪・・・その光景に風華は微笑みながら教えてあげた。
「一番の材料は愛情ですの!」
出来た料理・・・味噌汁とご飯以外は不揃いな野菜が入っている煮物・・・御浸しなど・・・見た目はかなりアレである。
「くすん・・・せっかく姉様に教わったのに・・・」
美雪が自分の不甲斐なさに涙する。
「美雪さん! いっぱいがんばったですの! 最初は誰でもこんなものですの!」
「・・・」
風華が一生懸命フォローするも美雪の涙は止まらない。
そこに一つの箸がのびてきた。
「(むぐむぐ)・・・けっこういけるで・・・この煮物・・・」
カイザーだった・・・しっかり試食しながら応えていく。
「この御新香も御浸しも・・・最初姉ちゃんが作ったモンに比べたらずいぶん美味いで・・・(ハッ)」
そういわれて二人も箸を運ぶ・・・確かに見た目は悪いが味はしっかりとしておりなかなかおいしい。
「ねっ美雪さん・・・料理は愛情ですの・・・それはそうとカイザー君・・・私の最初のころの料理がどうだったの?・・・」
「ひいっ〜」
こうして美雪のお料理会は幕を閉じた。
「姉様・・・また料理教えてくださいね・・・」
「もちろんですの!」
余談ではあるがその夜・・・カイザーの叫び声がこだましたという・・・
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