決意
神那 美雪
聖都決戦を明日に控えたその夜、美雪は副官である鈴峰玲香を居室へと呼んだ。
「失礼します・・・美雪様、何か・・・」
何も答えない美雪・・・美雪の手には前に風華よりもらったリボンが握られていた。
「美雪様・・・」
「あっ・・・玲香さん・・・すみません・・・突然呼び出して・・・」
「いえっ・・・私は別に・・・どうかなされたのですか?」
美雪にいつもの明るさがないことには玲香も気づいていた・・・。
「ねぇ玲香さん・・・明日・・・私たちどうなっちゃうんでしょうね・・・」
突然の一言・・・いくら指揮官とはいえまだ16の少女・・・何という過酷な運命であろうか・・・玲香の脳裏は美雪への哀れみの気持ちでいっぱいになった。
「きっと・・・多くの人が死ぬんでしょうね・・・私の部隊の兵士の皆さん、もちろん帝国兵士の皆さん・・・もしかしたら風華姉様やみゆ・・・」
「おやめください!!」
突然の大声に美雪もびっくりして玲香を見る・・・その瞳にはうっすらと涙を浮かべて・・・
「美雪様・・・そのようなことお考えにならないでください。美雪様は・・・必ず生きて後のクレアを支えていかなければならない身・・・死ぬなんてこと・・・決して・・・考えないでください・・・」
その言葉に美雪の瞳からも熱いものがあふれてくる。
「ふぇっ・・・玲香さぁん・・・」
自分より小柄な少女を抱きしめる玲香・・・さも母親のように温かく包み込む。
「美雪様、いつか私にお話くださいましたよね・・・理想の国について・・・帝国も共和国も・・・皆仲良く暮らしている国・・・私もその中で風華様や他の将軍たちと笑顔で囲まれている美雪様を見てみたい・・・」
「・・・」
美雪は玲香の胸の中であのときの夢物語を思い出す・・・。
「だから皆生きていかなければならないのです・・・」
その後しばらく玲香に抱きついていた美雪であったが何かを決意したかのように立ち上がった。
そして自分の部隊の兵士全員を集めた。
「おおっ・・・美雪様がいらっしゃったぞ!」
一人の兵士の声とともに大歓声が沸き起こる・・・。
「美雪様〜!」
「命にかけてもお守りします!」
以前までの美雪ならその歓声に怖気づいていたが・・・今日は違った。
まず衣裳が違う・・・いつもの浴衣風ではなく上に白衣その上に羽織をかけ下は朱色の長い袴・・・当然チャームポイントのリボンは付けているが袴の帯にも不自然なリボンがついている・・・風華から貰った赤のリボンだった。
そして決意は声にも表れていた。
「皆さん! いよいよ明日が決戦の日です!」
全体が静まる・・・その声に誰もが耳を疑った・・・本当に美雪の声なのかと・・・。
幼さは残るが凛とした声・・・以前の美雪からはとても想像ができない。
「それぞれの想い・・・あるでしょうが・・・皆、美雪についてきてください・・・」
そして・・・美雪が両手を突き上げる・・・。
「クレアの名の下に・・・皆さんに神のご加護がありますように・・・」
「うおおっっ!!!」
全体が喝采に膨れ上がる。
そして美雪は・・・最期の自らの決意を果たしにその場から離れていった。
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