朱の衝動
ミズハ
あ・・・燃えてる・・・
街が燃えてる・・人が逃げまどっている・・両軍の兵士が入り乱れている・・
綺麗だなぁ・・・
あれ?でもなんで燃えてるんだっけ?
あぁ、ボクが火を付けろって言ったんだった・・・
だって・・・この方が夜でも回りが見えるんだもん
「・・・え?」
出陣前、背後から呼び止められたミズハが振り向く、そこには共和国の「双翼の舞姫」と呼ばれている片割れアスティが立っていた。
「ですから・・心配しているのです・・・貴女は時々自分を見失いますから」
「自暴自棄って言いたいんでしょ?」
「え?・・・えぇ・・周囲から見ていて貴女の生き方は冷や汗をかきます」
「いいじゃん、ボクの人生なんだから」
そう・・ボクの人生なんだから、好きにさせてくれない?
人生が三回あるのなら一度くらいは協調性を備えて社会の歯車となってあげるけど・・・一度しかないのだから、好きにさせてよ。
所詮人は同じ終着点に向かって歩いているんだ、その過程はそれぞれのやり方があっていいじゃないか。
ボクは・・・薄い氷の上を歩くのが大好きなんだ。
ボクは・・・今にも切れそうなロープで結ばれた道を渡るのが大好きなんだ。
アメリアやアスティはボクを憐れんだ目で見る、他の多くはボクを狂っていると言う。狂っているのかな?いや違う・・きっとボクの「価値観」が狂っているだけなんだよね。
・・・・・・様・・・ミズハ様・・・
「え?・・・あぁ・・キミか」
「言いつけ通り街に火を放ちました」
「うんうん、とても綺麗だね・・・ふふ・・」
崖の上から見下ろすミズハ、その眼下では突如現れた群生に家を焼かれて逃げまどう人々の姿が映った。
街の人々にもそれぞれの生活と人生と軌跡と希望があったんだよなぁ・・・
まぁ、それはボクの人生という名のキャパシティに勝てなかった・・ということで、仕方がないね。
だって・・・夜の闇は明かりがないと怖いんだもん・・・
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