直ぐそこにある絶望

朝霧 水菜

「ホントにいいのかニャ? 捕まえるなら、今しかないと思うんだけどニャア・・・」
負傷兵として聖都クレアに運ばれていくエアードさんを見送りながら、紫苑が言う。
「いいんです。やっぱり、他力本願では駄目ですから・・・」
同じように、見送りながら水菜が言う。
エアードを捕虜として捕らえてもいい―その申し出を、水菜は断っていた。
恐らく、彼女なりに思う所があるのだろう。
「何か、微妙に言葉の意味が違う気もするけど・・・まあ、これ以上は言わないニャ」
「それに・・・お互い、戦場に立っていれば、また、会えるでしょう?」
言いながら、水菜は携帯式お茶セットを取り出し、お茶を啜り始める。
「み、水菜様ぁ・・・・」
そんな穏やかな2人に声をかける者が一人―部隊の副官、メイリィである。
「あら・・・どうかしましたか、メイリィさん?」
あくまでものほほんとした雰囲気を崩さずに、振り返り、水菜が微笑む。
手早く広げられた盆には、美味しそうな饅頭がのっていた。
「どうかしましたか、じゃないですよ。私達の部隊も壊滅寸前なんですよ〜」
言われてみれば、確かに、兵士の数がかなり減っている。
そういえば、さっき、一騎打ちで引き分けたクレア第12部隊が、
その反撃にと突撃を仕掛けてきた、とか何とか。
「あらあら・・・大変ですねぇ・・・・」
(兵士一同)『早く、部隊指揮をしてください・・・・(涙)』
全然、大変そうではない感じで呟く水菜に、
兵士達は本当の絶望と言うのはこんなに身近にある物だと、悟ったとか、何とか。

(2002.09.24)


年表一覧を見る
キャラクター一覧を見る
●SS一覧を見る(最新帝国共和国クレア王国
設定情報一覧を見る
イラストを見る
扉ページへ戻る

『Elegy III』オフィシャルサイトへ移動する