ペット
御剣 叢雲
嫌な夢を見た次の日は大抵身体が重い。
「あ〜…疲れた…」
まだ昼前なのにそうつぶやいてはごろごろと意味も無く転がってみる叢雲。
ごろごろと転がった叢雲は壁にぶつかってようやく止まった。
「な〜にやってんだろ…」
床に横になって壁に背中をくっつけた格好で叢雲がそういいながら視線を外へ向ける。その視線の先には日差しを浴びてのんびりとあくびをする一匹の猫の姿があった。
「ん〜…」
じーっと猫を見ている叢雲、その視線がいつの間にかその猫と重なっていた。
「よ…っと」
猫を見据えたまま叢雲が身体を起こす。壁にもたれかかって座った叢雲は猫に向かって手招きをした。
「………」
それを見た猫は何やってんだと言わんばかりに大きなあくびをひとつかます。
「…眠い」
そのあくびに触発されたのか、叢雲も大きなあくびをして、いつしか寝てしまっていた。
「む〜ら〜く〜も〜ちゃ…」
いつもどおり怒りのオーラを廊下からほとばしらせながら緋和が叢雲の部屋へとやってくる。
しかし叢雲が壁にもたれて眠っているのを見て、いつもならそのまま怒鳴り散らすはずの緋和が口をつぐんだ。
「猫…?」
壁にもたれて熟睡している叢雲のひざの上に丸まって寝ている一匹のトラ猫…
しばらくの間、緋和はその光景を何もせずに眺めていた。
「ふあ…あ、緋和さん…」
目が覚めた叢雲がひざの上で眠っている猫を遠慮なく抱き上げて床に置く。それでもふてぶてしく眠っている猫を見て、緋和の顔に笑みがこぼれた。
「ほら、蛍ちゃん待ってるよ」
「あ、そういえばそ〜だった…緋和さん、さすけのことよろしく」
「さすけ…?」
聴きなれない言葉にとりあえず思い当たった猫を見る。
「今つけた名前だけど」
と言って叢雲はさっさと部屋を後にした。
「あ〜してれば可愛いのにねぇ…そう思うでしょ?」
部屋を出て行った叢雲を見送りながら緋和がなんとなくさすけに話しかける。
「ってふてぶてしい猫ね…」
緋和の言葉を聴いているのか聴いていないのか、さすけはふてぶてしくあくびをしてから再び眠りについた。
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