五月蝿い奴等
御剣 叢雲
また今日も騒がしく走り回る二人の声が響き渡る。夕方にもなっているのに元気なものだ。
「こら!! 牛乳飲めって言ったでしょ!!」
「絶対ヤダ!!」
「飲まなかったら大きくなれないよ!!」
「イヤなもんはイヤ!!」
「飲まなかったら晩御飯の味噌汁に牛乳混ぜるよ!!」
「…っ!!」
それを聞いて急停止する叢雲。緋和は急に止まることができずにそのまま叢雲の背中に激突した。
「わわっ!」
身長差で緋和が頭の上に覆い被さるような形になってしまったので、低い方の叢雲は見事に緋和の身体に押しつぶされる。
「痛た…」
地面にイヤと言うほど頭をぶつけた緋和がぐらぐらする頭を抱えて起き上がった時、叢雲は目を回してノびていた。
「まったく…暴れるだけ暴れて置きながら最後は人任せなんだから…」
そう愚痴りながらも緋和は叢雲を背負って歩いていた。
「…黙ってればかわいいのに…って何考えてんだアタシ!!」
ぶつぶつと呟きながら(時々慌てながら)叢雲を背負って歩いていく。
「にゃぉ」
「あ、さすけ…あんたいつからいたの?」
突然足元で聞こえた猫の鳴き声にそこにさすけが居たことを教えられる。緋和は何となくさすけに話しかけてみた。
「……」
もちろんさすけが答えるわけは無いのだが、さすけはいつものふてぶてしさで緋和を一瞥すると案の定大きなあくびをした。
「…あんたとこの子って…何か似てんのよね…」
そのまましばらく歩いていると突然さすけがどこかへ走り去ってしまう。
「本っ当に…似てるわよね…ってさっさと起きなさいよ」
緋和がさすけを見送ってから叢雲を揺さぶった。それでも叢雲は全く起きようとしない。
「それにしても軽いわね…こんな軽いコが将軍やってるなんて…」
まあ、もうしばらくならいいか…と緋和は背中で寝息を立てている叢雲を肩越しに見て呟いた。
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