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朝ごはん
 
 
 御剣 叢雲 「…………」
 叢雲は無言で朝食の盛られた皿と対峙していた。
 「……」
 皿の上には真ん丸いパンが堂々と座り込むように乗っかっている。その横のスープ皿にはたまねぎが入っているスープが湯気を立てていた。
 「…」
 そして何より叢雲を一番困らせた存在は
 「牛乳……」
 その白い姿を見せ付けんばかりに透明なグラスに注がれた牛乳の存在だった。
 
 まず叢雲はスープ皿に手を伸ばす。
 「の、飲みにくい…」
 スープ皿の縁の部分を口につけてどうにかして中のスープを飲もうとするのだが当然うまくいかない。口の周りから垂れそうになるスープと格闘するも、しばらく後にはあっけなくそのスープをあきらめた。
 「塩っ辛い…」
 スープが服に垂れなかったのが幸いだったと思いながら今度はパンに手を伸ばす叢雲。
 「お握りみたいに食べればいいのかな…?」
 とつぶやきながらパンに噛り付こうとするのだが
 「ん…」
 口の大きさよりパンの方が大きく、叢雲は口を開けたまましばらく固まってしまった。
 
 ばりばりと音を立てながら叢雲がパンを細かくちぎる。そしてそれを片端からバターもつけずに口の中に放り込むのだが…
 「んっ…ん〜!!」
 喉に詰まったらしい。
 慌ててグラスに手を伸ばす叢雲だが
 「…………」
 牛乳を即座にあきらめてスープ皿に手を伸ばしても
 「……」
 そしていすに座ったまま辺りを見回す叢雲。
 「…」
 
 叢雲の朝ごはんは続く。
 
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