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ココロノキズ
 
 
 御剣 叢雲 誰が望まなくても朝は必ずやって来る。
 緯度が高すぎて日が出ない地域も必ず日の出の時はやってくる。
 例えそれを望まぬものがいても
 例えそれから逃げるものがいても…
 
 開け放たれた窓からそのすぐ横で顔まで布団をかぶって寝ている少女に向かって日の光が降り注ぐ。
 「ん…」
 その光から逃げるように叢雲は寝返りを打ち…そして慣れないベッドの上から床に転落した。
 
 「あだっ……痛〜…」
 床にぶつけた額をさすりながら叢雲が起き上がる。
 突然慌てたように周りを見回した叢雲は突然床に座ったままうつむいた。
 「そっか…そうだよね…」
 
 ベッドの上に体を縮めて座り込んでいる叢雲。日の光から逃げるような場所で膝を抱えて額をその膝にくっつけている。
 「自分で決めたことなのに…ここはクレアじゃないってわかってるのに…」
 自分に言い聞かせるようにつぶやく叢雲。
 (本当に私はこの国の人を信用してる? 信用できてる? …私は…怖がってない?)
 その時、窓の外から軽薄そうな男が通りすがりの女性に声をかけている声が聞こえてくる。
 (…どんな人だってすぐに本性出すんだ…私だって……)
 と、突然驚いたように顔を上げる。
 「あ〜っ、ダメダメこんな暗い考え…とにかく信じてみないと始まらないし…」
 最初は堰を切ったように明るかった口調も最後の方は少し暗くなる。
 「とにかく…信じておかないと…」
 
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