でも結局沈む。
御剣 叢雲
「遂にソバをうてるようになったか…」
厨房で叢雲が作ったそばを食べて厨房長は感慨深げにつぶやいた。
「思い返せばあの爆発以来…叢雲君!! 私が君に教えられる料理はコレで終わりだ!! その名は…」
「…その名は?」
目玉焼きから始まり、肉料理や魚料理、そしてさまざまな地域のさまざまな料理を覚えてきた叢雲は緊張のあまり身体が強張っていた。
「ご飯だ!!」
「えっ…ご飯って…?」
「そう、ただ炊くだけという極めてシンプルなその料理!! だがしかし!!…」
――(厨房長の熱弁が続いております。しばらくお待ちください)――
「…と言う訳でいくらでも派生のあるパンと違って単純であるがゆえに最も難しい…それがご飯なのだ!!」
「あの〜…炊けたんですけど」
熱弁を振るっていた厨房長に茶碗に盛ったご飯を差し出す叢雲。
「…………合格っ!!」
「…あ、はぁ…」
涙を流しながら見送ってくれる厨房長の姿に背中を押されるように、叢雲は何処と無く去っていった。
「いやぁ〜、叢雲ちゃんの手料理はおいしいっすね〜」
「うわっ!! …って今日はどっから現れてんの…?」
突然茶碗をもって叢雲の進行方向上の地面から顔を出す荻生。どうやら穴を掘って隠れていたか何かしたらしい。
「そうだ将軍、今度僕にも手料理を…ぐほぇ!!」
地面から上半身を突き出して茶碗を持った手を叢雲のいた方へまっすぐ差し出す荻生。しかしその間に叢雲は逃げてしまい、代わりにやってきた馬車にその身を思いっきり轢かれた。
「くっ…む、叢雲ちゃん…あの日の味噌汁の味…忘れないよ…ぐはっ」
「だ〜れがいつアンタにお味噌汁なんか作ったんですかっ!!」
ずかずかと戻ってきて荻生の脳天に金ダライを叩きつける叢雲。ついでに周囲の「地獄耳…」と言う声にしっかりとガンを飛ばすことも忘れなかった。
「いやぁ〜、それにしてもいつも過激なスキンシップだね〜」
ガンを飛ばして視線を戻した時には目の前でさわやかな笑顔を浮かべる荻生。
とにかく叢雲は全軍を率いて戦場に立ち、荻生から逃れようとするのだった。
「叢雲ちゃん!! 戦場では僕が守るからね!!」
「そ〜だ…コイツ副官なんだった…」
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