No title

御剣 叢雲

――カルカシア
 山や河に囲まれた場所にある街。帝都ラグライナの東に位置する防御の要となる場所である。
 北へ行くとカルスケート、南にはレヴァイア王国があり、有事には数多の兵がこの近くで命を落としていった。
 後の世の戦乱において帝国が二分された時、この地が欠かすことのできない存在となるのだが、もちろん知るものは居ない。

 叢雲は大胆にもカルカシアの街中に入っていた。その後ろに並ぶ『反乱軍』の兵士たちもあまり緊張している風ではない。
 陽が昇っているというのに通りに面する家が一様に鎧戸やカーテンを閉め、物音一つ立てずにひっそりとしている様子はさながら廃墟のようでもあった。

「え〜と、結局帝国領まで来ちゃったんだし、ど〜せこんだけの人数の動きなんて筒抜けになってんだからいっそのことカルカシアの街の中入るからね。略奪暴行その他諸々のコトは一切禁止。それから買い物その他は全部自腹。もし違反したら…」
 カルカシアの街に入る直前、叢雲は部隊の面々に向って言った。
「食事抜き&次の戦闘丸腰で最前ね♪」

 ふと叢雲を強烈な目眩が襲う。
 突然のことにとっさに額を押さえる叢雲。
 そして目眩が終わったその時――叢雲は薄暗い部屋の中にいた。

 目の前に三人の人間が居る
 一人は生気を失った瞳をした…意図的にそのような表情を作っているかのような男性。
 そしてその男性が睨む先には意地を張るようにその目を睨み返す緑髪の少女。
 最後の一人はどことなく妖しい笑みを浮かべた女性。
 今まで叢雲が体験したことの無い、奇妙な空気の中でその三人はその部屋の中にいた。

 男性が少女に少しずつ近寄る。虚勢を張っていた少女の表情が次第に恐怖に染まり始める。
 しかし誰一人として叢雲の存在に気がついていないようだ。
 狂喜にとりつかれた表情の男性が少女の服をつかむ。そのまま男性は女性と少し言葉を交わし、楽しそうに少女の服を引き裂いた。
 そのまま男性と女性が恐怖でその身を固くする少女へと近づいていく…。

 何がどうなってるのかは分からないけれど、少女に何が起ころうとしてるのかは分かっている。
(止めなきゃ…)
 そう思って飛び出そうとした叢雲だったが、足が床に吸いつけられたかのようにまったく動かない。
(あ、あれ?)
 そう思って自分の足を見ようとする叢雲だが、視線も、手も、身体全体が動かずにただ少女が犯されていく光景を見つめることしかできない。

 宴は叢雲の存在を無視して続く。
 男性と女性に同時に責められる少女は涙を流しながら必死に抗おうとしていた。
 その情景を動くことも声を出すことも眼をそらすことも何一つできないまま叢雲が見つめている。
 不意に…喘ぎ声を上げながら責められ続けていた少女の朧な視線が叢雲のそれと重なる。
(えっ?)
 そのまましばらくの間叢雲と視線が合っていた少女はそれでも続く責めに絶頂に達したらしくおとがいを反らせる。
 その後も叢雲がそこに居ることなど誰も気づかないまま少女への責めは続いていった。

「…んっ…将軍っ!!…」
 暗い世界に声が響いてくる。身体を揺さぶられる感触もする。
「ん…んぇ?」
 眼を開いた叢雲の視界に飛び込んできたのはカルカシアの町並みと…馬の顔だった。
「う、馬ぁ〜っ!!」
 瞬時に数メートル逃げる叢雲。
「そうだっ!! あの女の子!! 誰か早く助けないと」
「女の子…? ここに居る女性は将軍とうちの兵士だけですよ」
「…え?」
 心配そうに叢雲を見つめる兵士。
「あの…調子が悪いんだったら看護兵でも」
「ん〜大丈夫大丈夫、ちょっと寝てただけみたい」
 そう言って叢雲はその場を後にした。


「夢…?」
 帝国の天幕の中で、こずえは眼を覚ました。

(2002.10.21)


270年後に実際に発生した陵辱イベントの光景(18x)

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