戦
御剣 叢雲
カルカシアの街から北西に抜けた場所に帝国の帝国第三騎士団と白鎧騎士団が並んで陣を構えていた。
聞いた話によると白鎧騎士団の将軍は叢雲もよく知る白峰渚だという。その妹で一時は叢雲と共に一つの部隊を編成していた白峰螢も帝国軍にいるらしい。
「まさかこんなトコで敵と味方になるなんて思わなかったなぁ…」
しばらく天井の方を見てクレアでエアード・ブルーマスターに金ダライをぶつけていたころを思い出す叢雲。
「ま、こっちに攻めてきてんだから敵だよね」
叢雲がまた一つ歳相応の少女から離れた瞬間だった。
強行移動の最中、少しずつついて来れない兵士たちが部隊を離れていった。
それでも馬を走らせ続けた叢雲たちは地平に白鎧騎士団と思われる姿を確認すると勢いを殺すことなく突撃していく。
相手は全員白い鎧に身を包んでおり、その姿は美しくもあり恐ろしくもあった。
砂煙を上げて迫る一団を落ち着いて正面から迎え撃つ白鎧騎士団。初めは強行移動の勢いに乗って斬り込んだ叢雲たちが優勢かに思えたが、すぐさま白鎧騎士団の激しい反撃が襲い掛かる。
戦場となった場所に紅い池ができる。そしてそれを乗り越えて馬が、人が、戦い続ける。
「やばいやばい…押されてるよ………ん?」
一度後方へ引いて戦況を見ていた叢雲が戦場の一箇所をじっと見つめる。
「あれって…渚さん?」
「ちょっと! 叢雲ちゃん!!」
彼方に見える人物に吸い寄せられるようにふらふらと歩いていこうとする叢雲をカルカシアで再会して無理矢理部隊に入り込んだ緋和が引き止める。
「渚さんか確かめないと…本当に渚さんなら何で帝国で戦ってんのか聞かないと…」
「殺されに行くつもり!? ここが戦場なの忘れた!?」
そうこうしている間にその人物は戦場の向こうへと見えなくなっていった。
「カルカシア出た時から半分ぐらいまで減っちゃったね…」
戦いが一段落し、戦況を確認する叢雲。しかしその口元には何故か微笑すら浮かんでいるようにも見えた。
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