叢雲壊滅日記〜壊滅後〜

御剣 叢雲

戦闘と言っても結果は最初から分かっていた。200人に満たない兵士たちがその10倍の兵を相手に戦うなど勝算は0を通り越してマイナスだ。
自身を守る兵士など居るはずも無く、叢雲は一人で自分の周囲を囲む敵を一人でも減らそうと奮戦していた。
しかしもともと戦闘能力の高くない叢雲である。次第に刀を持った腕が上がらなくなり、遂には帝国兵の打撃を受けてあっさりと馬上から転落した。

「っ〜〜!!」
縄を打たれた叢雲は帝都の一角にある塔の地下へと連れ込まれ、自分の部隊を壊滅させたソフィア・マドリガーレの配下によって拷問を受けていた。
腕を天井の方向へ伸ばした状態で吊るされ、その小さな背中に容赦なく鞭が振るわれる。ところどころに真っ赤なミミズ腫れや裂傷ができ、あまりの痛みに叢雲が気を失う。それでも冷水を浴びせられ、叢雲の意識が戻ったことを確認されると再び鞭が振るわれる。

ようやく腕の戒めが解かれると叢雲は重力に逆らうことなく床に倒れ伏した。
しかし拷問吏は容赦なく叢雲の身体を抱えて木馬の上へと運んでいく。

半裸にされた叢雲が突起のついた木馬の背に乗せられる。秘所を襲う刺激と羞恥、そして角のついた木馬の背からの傷みに耐えかねた叢雲の眼から涙が零れ落ちるが、拷問吏は躊躇うことなく叢雲の足に重りを結び付けていく。
そのたびに強烈になっていく刺激に叢雲は幾度も気を失った。

木馬から下ろされた叢雲は虚ろになった瞳で虚空を見つめていた。
その後も石抱き、股裂き、水責めと叢雲への拷問は続いていったが、それを見ている仮面の女性や拷問吏の口からは何一つとして言葉は発されなかった。

口の中に漏斗で無理矢理水を流し込まれ、呼吸ができずに意識を失う叢雲。拷問吏は叢雲が意識を失うと顔色一つ変えずに冷水を叢雲の顔にかけるが、最早叢雲は冷水をかけられても朧にしか意識を取り戻さなくなっていた。
「帰ったら、レナスティーナ姫にお伝え下さい」
ふと叢雲にそれまで黙ってみているだけだった仮面の女性が声をかける。既に何も考えることができなくなっていた叢雲のほとんど閉じられた視界の中に鮮やかな光が飛び込んでくる。
反射的とは程遠い緩慢な動きで叢雲は瞼を少し開いた。
叢雲の耳の中に女性の声が入ってくる。残ったわずかな気力であまりに重い首をもたげてみるが、霞掛かった視界ではその声の主の姿をはっきりと見て取ることはできなかった。
先ほどまで叢雲を拷問していた拷問吏たちが力なく四肢を投げ出している叢雲に手当てを施していく。
しばらくすると前進を苛んでいた痛みが徐々に薄れ、身体全体が中を漂っているような感覚が訪れる。それでも頭の中に残っていく言葉を言う女性の表情を見ようと瞼を開けようとした叢雲だったが、その努力と裏腹にその瞼はゆっくりと閉じられていくのだった。

(『帰ったら』…か… また…おんなじことするだけなのに…なんで…殺さないんだろ………)
意識が真っ白になっていくのを感じながら、叢雲は最後にそう思った。

(2002.10.28)


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