報告は落ち着いて読みましょう
御剣 叢雲
「報告します」
いつも通りの連絡が入る。
「ん〜?」
昼食をとった後、昼下がりの陽気に誘われて意識が800メートルほど出かけてしまっている叢雲はあくびをしながら報告書に眼を通した。
「ふんふん…『帝国がレヴァイアに大規模な攻略戦を展開した…』…これはいいや」
最初の一文を見て叢雲は紙をめくる。
「次は…『クレアムーン神威巫女、月風麻耶失踪』…失踪!?」
突然大声を上げて報告書を読み始める叢雲。
「え〜と…『帝国軍がシチル・鬼哭を占領した直後、聖都クレアにおいて月風麻耶が失踪、詳細は不明。跡継ぎには弥生が…』詳細は不明…?」
そう反芻して叢雲は何かを考え始める
「シチルと鬼哭が占領されたってコトはクレアの拠点が聖都だけになったってことだよね…そうなった途端に失踪…? 責任取って引退したのかな……」
叢雲の脳裏にかつて自分が見ていた月風麻耶のいろいろな姿が浮かぶ…神威巫女としての姿、暇つぶしに館に忍び込んで眼にした重圧に耐えている少女としての姿…
そう言えば風呂を覗いてしまったこともある。ばれてないことを祈ろう…
「な〜んかイヤな予感がするなぁ…無事だったら良いんだけど………って言うか責任取るんだったら『若いじじい』の神官連中と軍の人間じゃないのかな…」
そう言って叢雲は先ほどめくった一枚目の紙になんとなく眼を通してみる。一番上にあったのだから重要なのだろう。
「ん? これって帝国軍の……」
そこに書かれていた帝国将の名前は叢雲をびびらせるのには十分すぎた。
「…選抜?」
――約一時間後、騎上の緋和に首根っこをつかまれた叢雲は戦線へと突撃していった。
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