時代
御剣 叢雲
「昔の人はいいよな〜…戦乱はあってもこんな受験戦争なんか無いもんな〜」
マンションの最上階に位置する家に帰ってきた少年はベッドに身を投げ出しながら天井を仰いだ。そのままなんとなくテレビとエアコンの電源を入れる。
世の中ではずっと物騒な事件が続いているように思えるし、殺したの殺されただのといちいちテレビが報道しているからそれを聞く自分も「やってられん状態」になると少年は自分に自己弁護してみた。
「イヤだな〜…大体なんで教師に怒鳴られて勉強なんかする必要あるんだよ…」
『…次のニュースです。700年ほど前、ラグライナ帝国が戦争を開始した頃に当時のクレアムーンやレヴァイア王国の将軍として戦地を駆け回っていた御剣叢雲と450年ほど前、『偽りの遺産』に山賊として参戦し、アザル建国にかかわった馬来こずえの所持していた刀が、この度の調査で同じものであったことが明らかになりました。
このことによって両者に血縁関係があった説が濃厚になり、研究家たちの間にわずかな波紋を投げかけています…』
付けっぱなしのテレビからそのようなニュースが流れてくる。画面には話題になっている二人の違う時代の人間の肖像画が仲良く並んでいる。
『さて、今回の焦点となっている刀ですが、御剣叢雲が使用していた時代には「蒼く光る刀で雷撃を発することがあった」との記述があり、また馬来こずえの使用していた時代には「時折青い光を放つ刀で雷を呼び寄せた」との記述が残っています。
刀が高圧の電気を発するという記述については伝承じみた誇張が大きいものと考えられていますが、今回の調査ではこの刀が非常に静電気を帯びていることなどが確認され、この伝説の元になったものと推測されます』
「昔のコトなんか調べててど〜すんだよ…暇な連中だよな〜」
そう言って少年はテレビのチャンネルを変えた。画面の中では先ほどまでのニュースキャスターと打って変わって少女5人のバンドが最近ヒットしている曲を演奏していた。
「昔ってイヤだよな〜…音楽もゲームも無いもんな〜」
少年はジュースを取りに台所へと歩いていった。
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