乱世の毒

御剣 叢雲

「前から一つ聞きたかったんですけど」
突然ソフィア・マドリガーレの元を訪れた叢雲は周囲からあまり歓迎されていない感を覚えながらも前フリ無しで言った。
「何でしょう?」
「帝国が戦争をしてる…いや、帝国がクレアと共和国を侵略してる理由は何ですか?」
無遠慮に言葉をぶつける叢雲の周囲の空気が一気に冷たく重いものとなった。
「はっきり言って私は政治関係のことなんて私にはまったく分かりませんよ。でも、ある程度戦況が落ち着いて――それで何で終わらなかったんですか?」
しばらく間が置かれ、その間に深い沈黙がのさばる。
「確かに十年前ぐらいはいろんな国が戦争してましたけど…帝国と共和国が戦い始めるまで、レヴァイアが一度降伏したときに終わってた戦争じゃないんですか?」
「では…」
ブラックコーヒーを口に運びわずかな、それでいて大きな間をおくとソフィアが続けた。
「レヴァイアが降伏した時点で争いは本当に終わっていたのですか?」
「『本当に』?」
予想だにしなかった問いに叢雲が視線を斜め上にずらせてしばらく考え込む。
「確かに内乱は起こるだろうけどここまで大きな戦争にはならなかったと思うんですけど…」
自信なさげな叢雲。
「内乱と言うのは鎮圧したら終わるものではありません。鎮圧された者たちは時間を置けば再び立ち上がります」
現にレヴァイアがそうだっただろうとその仮面が語っているように思えたのは叢雲だけだっただろうか。
「皇帝陛下の真意は私にも分かりません。ただ『毒を持って毒を制す』と言う言葉があるように…戦乱は戦乱によって平定できるのではないでしょうか?」
完全に沈黙してしまった叢雲にソフィアがやわらかく語りかける。
「毒を持って毒を制するんだったら…毒を制する毒はかなり強力ですね…」
少しの時間を置いてから叢雲がぽつりと言う。
「ソフィアさんはどんな『毒』何ですか? ……やっぱいいです、これ以上聞くと混乱しそうだから」
「……」
そのまま叢雲が席を立ち、ドアへと向う。
「…強すぎる毒は依存性があるんです…無くなった時が大変ですよ…その時はどうするんですか?」
その言葉には誰も答えなかった。

(2002.11.15)


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