The Tower

御剣 叢雲

そこにあったのは単純かつ明確な拒絶だった。
しかしそれを蝕んでいく快楽の前に、少しずつそれは崩れ始め、そして加速的に崩れ落ちていった。

ようやく弛緩剤も媚薬もその効果を失ってきた頃、叢雲はまだ犯されていた。
どれ位の時間がたっていたのだろうか、叢雲は時折強くなる刺激に甘い声をあげてはいたものの、それ以外のときはほとんどされるがままに陵辱されていた。
「あっ…ふあ…」
その喘ぎ声もどこか虚ろだ。表情からも一切の感情を宿していないようにも見える。
すでに何かを考えることすらできない状態になってしまっているのだろう。それでも何かを求めているようだった。…それが何かは誰にも分からなかったが。
「あぅっ…」
そんなことは関係無いとでも言うかのように異形の者たちがさらに激しく責め続ける。
宴がいつ終わるか…それも誰にも分からなかった。

気を失ってしまった叢雲の前で、ようやくゲイルは自我を取り戻した。異形の者たちもその場には居らず、叢雲だけがそこで何があったのかを示していた。

規則的に身体を揺らされる感覚に叢雲はおぼろげながら意識を取り戻した。
「……」
視界に飛び込んできたのは狭い空間と小さな窓。その窓の外の景色は次々と流れ去っていく。
「…ココどこ?」
ふと身体を起こしてみる。自分が馬車に乗っているらしいことは分かったが、その前の記憶が全て抜け落ちている。
「あ…梢は…? こ〜ず〜…」
辺りをきょろきょろと見回して幼かった頃にいつでも一緒にいた親友の名を呼ぶ。その叢雲の視界に突然雨の振る中で血を流して笑顔を自分に向けながら死んでいく梢の姿が断続的に現れる。
「えっ…あ、ああ…」
頭を抑えてうずくまる叢雲。その叢雲の視界に無理矢理数多の兵士が死んでいく様子が映り、そして次々と消えていく。
最後に最も最近の記憶が現れる。
「…もうイヤだよ…こんなのイヤだ…」
うずくまったまま叢雲はそう繰り返すのだった。

(2002.12.08)


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