終幕 〜緋和&荻生編〜

御剣 叢雲

  一人の少女を通じて出会った二人
  人の出会いなどというものはそんなものなのかもしれない
  いつしか生まれた一人の子供とともに平和で素朴な暮らしを続けていた二人にも
  乱世は無慈悲に襲い掛かる

軍役を離れてどれくらいになるだろうか
少女と別れてどれくらいになるだろうか
自分たちは軍役を離れ、少女は常に前へ進んでいった
時々戦場まで会いに行くたびに、初めて出会ったころからずっと成長した叢雲を見てきた
その叢雲が「引退」してしまったという報を受けた後、緋和も荻生も叢雲に出会うことはなかった
息子のカロンもすばしっこく走り回る年になり、三人の小さな幸せはひっそりと続くと誰も疑うことなく信じていた。

「よしっ、今日もいい牛乳が取れたぞ…っと」
褐色の肌にひときわ輝く白い歯。健康色に染まった姿で絞りたての牛乳の入った桶を持ち上げる荻生。
その姿から昔の変人振りをうかがうことはほぼ不可能といってもいいだろう。
足元をちょろちょろと駆け回っているカロンは、何が楽しいのかけらけらと笑いながら走り、時々転んでいた
「カロン〜、お母さん食事作って待ってくれてるだろうから家戻るぞ〜」
そう声をかけて10メートルほどの野原をはさんだ場所に建っている彼らの家へと仲良く向かう。

ぶぉおっ

と、突然妙な重低音が鳴り響いた。
「おと〜さんおなら〜」
不意な音にカロンが腹を抱えて笑い出す。しかしその直後…
彼らの目の前、ちょうど家の反対側に、突然天まで届く竜巻が姿を現した。
規模としてはそんなに大きいものではない。だが…
「緋和っ!!」
桶を投げ捨てて家へと疾走する荻生
荻生が家の中へ駆け込むとほぼ同時に竜巻が家を吹き飛ばした。

「…荻生…くん…?」
荻生の駆け込んだ家が竜巻にばらばらにされながら天へと舞い上がっていく。
たまたま畑に野菜を取りに行っていた緋和は幸運にも…そして不幸なことにそれから逃れた。
カロンが呆然とする緋和の元へと駆け寄ってくる。
「おか〜さ…」
きつくカロンの体を抱きしめた緋和の前に、荻生が帰ってくることは決してなかった。

(2003.02.05)


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