時の流れの中

御剣 叢雲

戦乱の中に一人の将軍がいた。
それ以上でもなければそれ以下でもない。常に世に存在する戦乱の中で取り立てて目立った存在でもなかった。
確かに彼女はごく一般の将のそれとはかけ離れた将軍であったと言われている。
しかし彼女自身、そしてその周りで彼女と共に存在した者たちも、時代の流れの中であっという間に忘れ去られていく。

彼女自身は突然死を迎えた。その娘は父親と共に暮らし始める。
彼女の副官をやっていた者たちは災害によって命を落としたりしたが誰も知るものはいない。
彼女に関わった厨房長や情報屋などは親族に見守られて平凡に人生を終えた。
彼女が飼っていた猫のようにいつの間にか姿を消しても、人々の営みはほとんど変化しない。

時は、その流れの中で立ち止まったものを無慈悲に置き去って過ぎてゆく。
しかし何十回、何百回と時が流れていったとしても……

「いい天気ねぇ〜」
時の流れの中で忘れ去られていったものがあったとしてもそれを示すものは後に残って行く。
生まれ育った村の井戸端でこずえは何も知ることも無く、ただただ無邪気で平和で幸せな時をすごしていた。



--終--

(2003.03.03)


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