狂騒曲

白峰 渚

「え・あ〜ど君♪」
「な・・・なんだよ」
「今日は君の為に焼いてきたものがあるんだ♪」
後ろ手に何かを持ち、恥らうような表情でエアードを見つめる渚にエアードは命の危険さえ覚えた。
「俺忙しいから・・・また今度な」
少しずつ後ろに下がるエアードは、何時の間にか回りこんでいた渚にぶつかる。
「どわぁっ! いつの間に!」
即座に視界が塞がれる。
「エアード君のために焼いた壷だよ〜、うん、いい感じ♪」
慌てて壷を外そうとするエアード・・・しかし、時はすでに遅し。

「エアード君、この壷フルスイングで割ってもいいよね? 男の子なんだから、10針や20針縫う事になっても泣かないよね?」

「おい、ちょ・・ま・・!」
嬉々とした口調でまくしたてる渚を慌てて止めようとするが・・・

がしゃご〜ん・・・

エアードは風間先生の診療所で二箇月の入院を余儀なくされたのだった・・・

「はぁ、それは大変でしたね〜」
「…蛍、お前の姉はどうにかならんのか」
「どうにもなりませんよ〜」
「・・・そういえば、渚はどこ行った?まさかここに来てないだろーな?」
「お姉ちゃんなら、朝方に何か作って・・・
エアードはそれを聞くなりベットから這い出して逃げようとする。
「ちょ・・エアードさんどこ行くんですか!? 駄目ですよ!」
「離せ、今度こそ俺は殺される! 離せぇ!」
「駄目です! 寝ててください!」
そして、がちゃりと扉が開く。
「エアード君、お見舞いに壷持ってきたよ〜♪」
「来たぁぁ!」
「大丈夫だよ、ぶつけたりしないから〜」
渚の台詞を聞いて、やっとエアードの動きが停止する。
「・・・ほんとだろうな」
「アタシは嘘つかないよ」
「ほら、ね? 大丈夫なんですから、寝ててください。」
蛍がエアードに布団をかける。
「退院したらお祝いにぶつけるけどね♪」
「離せぇぇ! やっぱり俺は逃げる! どこか壷のない国にっ!」
「地の果てまで追いかけるけどね〜♪」
「お・・お姉ちゃん! お願いだからその壷持ってどこかに行ってて! 風間せんせー! エアードさんがぁ!」

―エアードに(いつか)幸の訪れる事を願いつつ終―

(2002.09.03)


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