ナギサとホタルと子煩悩

白峰 渚

「やっほ〜、ルーデル君!」
ルーデルの執務室の扉を足で開けて渚が入ってくる。
「……」
すでにいつもの事なので気にしてないルーデルは、何も言わずに顔を上げた。
「明日、一緒にお出かけしようね♪ 朝に噴水前だヨー」
返事を待たずに、渚が執務室から出て行く。
ルーデルはしばし考えた後、スケジュールの調整を始めた。

「あの…アームズさん」
じゃがいもと格闘していた蛍が、思い出したように顔を上げる。
「ん?」
「明日、お時間ありますか?」

−翌日−
「やっほ〜♪ 待った〜?」
「……(今来たところだ)」
「え〜? そうなの? ワザと遅れてきたのに…」
「…………(無言でグリグリする)」
「痛いぞ、ルーデル君…ん? あれって…」

「アームズさん、遅刻ですよ」
渚の指差した方角では、蛍が頬をふくらませてアームズを怒っていた。
「ごめんごめん」

「う〜ん…マズいな」
「…?」
「ルーデル君、逃げよう。『ヤツ』が来る」
渚に手をひっぱられてルーデルが公園を逃げ出した後、公園から凄まじい怒号が響き渡る。
「……(あの声は…)」
「蛍、カモフラージュとか下手だからな〜、ガレスに気づかれてたんだねぇ」
「…」
「何? その目。ガレスの事だ、きっと私達の事にも感づいたぞ。速く逃げよう」
ちなみに、その頃公園ではガレスのスーパーコンボが極まろうとしていた。
「飛べやぁぁ! 必殺! デビルパニッシャァァッ!」
何がどうデビルパニッシャ−なのか知らないが、豪快なアッパーがアームズを空高く吹き飛ばす。
「どっはぁぁぁ!」
「ガ…ガレスさん、やりすぎです!」
余談だが、アームズはこの時、顔すら知らないご先祖様と対面したという…

「ほら、ここだよ。新しく出来たお店」
「…(軽食店…か)」
「ルーデル君、ジジむさい。せめて【カフェ】っていいなよ」
胸を槍で刺し貫かれたかのような表情をするルーデルを引っ張り、中に入る。
「この窓際の席なんかいいよねぇ」
「いらっしゃいませ」
店員がメニューを渡す。
「ん?どしたのルーデル君」
凍り付いているルーデルのメニューを覗きこむ。

本日のメニュー

斬死
溺死
生き埋め

セットメニュー
市中引き回し+ギロチンのセット(鞭打ち or ヤキゴテつき)
水責め+サメの餌食のセット(【サメの餌食】は、生きたままか死んでからか選べます)

おそるおそる店員の顔を見上げると…
「さぁ、どれになさいます? クソヤロウ」
「ガ…ガレス…良くここ分かったね」
「まぁな…伊達に親子やってねぇぞ」
「あ、蛍がアームズ君と歩いてる!」
「何! あの野郎、まだ…」
振り向くガレスの顔に渚が素早くコショウをかける。
「ぶ…ぶあっくしゅっ!」
「ルーデル君、今だよ!」
「こ…こら待て…ぶあっくしゅ!」

「いやぁ、散々だったねぇ」
再び公園に戻ってきて渚が言った。
「……(死ぬかと思ったぞ…)」
「ありゃ? 蛍だ…」
渚の指差した先では、唸っているアームズを膝に乗せて看病している蛍の姿があった。
「青春してるねぇ」
「……(苦笑)」
「ねぇ、ルーデル君」
渚がルーデルの方を振り向くと、アイアンクローでルーデルの顔を鷲づかみにするガレスの姿があった。
「……早っ」
「俺のこの手が真っ赤に燃える! ゴミ虫殺せと轟き叫ぶ! 滅・殺! デストスパイラルッッ!」
ルーデルを放り投げると、容赦ない地獄のコンボ攻撃が始まる。
「ガレス…これ以上邪魔すると…嫌いになるぞ」
一瞬、ガレスの動きが硬直するが、何かを振り絞るかのように最後の一撃がルーデルを空高く舞い上げる。
「な…渚…なんであんなゴミ虫庇うんだ?」
「私がこうして正気を保っていられるのは彼のおかげだ。彼を傷つけるヤツは…ガレスでも許さないぞ」
「む…ぐ…」
「…ガレス、頼む」
「………………………………わぁったよ。今日は見逃してやる」

ガレスが大股で公園から出て行く。
「さて…と。ルーデル君、生きてるか?」


−翌日、ルーデルの執務室−
「……(なんだ、この仕事の量は…)」
「ルーデル将軍、追加の書類です! いやぁ凄いですね、あのガレスさんが『彼になら任せられる』って…」
「…!」
「あの堅物で有名なガレスさんにあそこまで信用してもらえるなんて、凄いですね!」
「……(絶対、イヤガラセだ…)」

−厨房−
「何故、何故いきなりパーティが4つも入るんだ…?」
アームズの悲痛な声が厨房に響く。予期せぬ仕事に厨房はてんやわんやである。
「はぁ、ガレス殿の進言らしいですよ。『私はアームズという男を良く知っている。彼なら出来る』って…」
「…あの人か…(溜息)」
「あそこまで信用されてるなんて、凄いですねぇ」
「……そうだな…(ぜっっったい、イヤガラセだ…)」


−チャットで小さな人気につき、おまけ 今日のトム君−
「鬼哭の里…帝国領土になったんだなぁ…上手く馬車とか拾えるかなぁ…」

「え? 馬車? 何分人手不足でねぇ。帝国領土を一周してくるんだが…次は一ヶ月後かな」
「…また歩けってのかよ…(涙)」

(2002.10.28)


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