安らぎの場所

ネル&ルドルフ

 帝国皇帝陛下直属の近衛兵士…皇族や要人の警護や王宮などの警備を任される重要な役目を持つ兵士達である。帝国士官学校を卒業したネル・ハミルトンは将軍や隊長など兵を率いる事に関しての適正が全く認められる事がなかったのだが、類まれなる武術の腕前を認められ、近衛兵士の役に就くことになったのである。

 ここは近衛兵士達が集まる詰め所、女性の近衛兵士達が集まって世間話や自己紹介をしている。

「初めまして、今年帝国士官学校を卒業して近衛騎士団に配属になりましたネル・ハミルトンと申します。よろしくお願いします」

 ネルもにこやかに会釈をしながら挨拶を交わす。

「聞いてるわよー、帝国の武術大会でも好成績を残しているって?」
「わからないことがあれば何でもおねーさんに聞きなさい、手取り足取り教えてあ・げ・る・から♪」
「よろしくおねがいします。貴女とは同期に卒業した……」

 女性は周りと打ち解けるのが早い、部屋中が活気に満ち溢れてまるで現代で言う女子大生の集まりのようである。内気なネルも笑顔で周りとの会話に溶け込んでいく事ができた。

「最近の貴族ってヤツはクズが多いよねー! 人が我慢しながら警護してやってるのにスケベな視線でみてきたりー! ったく息苦しいけど皇族の護衛の方がまだましよねー!」
「そうかなぁ…カッコいい貴族様も居るわよー、逆タマしたいわっ!」

 任務につけばプロフェッショナルな顔になる彼女達も日常生活では普通の女性なのである。楽しそうに笑い悲しそうに泣く…この日常生活こそ全ての兵士達にとってのやすらぎの場所なのである。

 そして数年の月日が過ぎる…

「ネル! アンタ第三騎士団に転属を希望したってホントなの!?」
「うっそー、あの将軍の下で戦ったら寿命が10分の1になるって聞いたわよ!?」
「しかもあそこの将軍ってネルより若いんでしょ? 年下に命令されるのよっ!?」

 ルディ暗殺未遂事件で自分が持ち場を離れた為にルーデルが片腕を失った事に対して責任を感じ、自ら第三騎士団への転属を希望したことに騎士団の皆から驚きと説得の声が部屋中に飛び交う。

「私の責任でルーデル将軍の片腕が無くなってしまった事は事実なのです。失われた片腕の代わりになれるように将軍に尽くすのが当然だと思いますから…」

 にこやかに返答するネルに近衛兵の仲間達からは何も言葉が帰ってこなかった。

「…そっか、んじゃ今夜は送別会でもしよっか」
「そうだね…ネルの無事と私たちの永遠の友情に乾杯ってね!」
「うぅ…ありがとうございます。私は必ず帰ってきますから!」

 生きて必ず帰る…

「第三騎士団副官に任命されましたネル・ハミルトンです。ルーデル将軍、これからよろしくお願いします!」

 仲間達の居る安らぎの場所へ…(終)

(2002.09.08)


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