ジェラシー

ネル&ルドルフ

「長かった戦いもそろそろおわりそうだな…」
 ワイングラスを片手にルドルフは女性の肖像画を見上げる。最近画家に描かせたものである。
「しかし、私たちの戦いはここから始まるのかもしれんな…」
 机に置かれている書類には多くの貴族の名前が書かれている。ルドルフはその書類を手に取り、一通り目を通した。
「ふむ、奴らが手を組んだか…こいつは明日にでも消すように手配しておくとして…」
 いつものようにぶつぶつと独り言を呟きながら部屋をウロウロと歩き回りながら。万年筆で上から順に貴族の名前に横線を入れていく…しかし、一つの名前に目が止まり手と足が止まる。
「…マドリガーレ家か…月の塔…カデンツァ…謎が多い上に皇帝との繋がりも深い…こいつは厄介だ…」
 ルドルフとて裏世界で終わりたくない、いつも皇帝に近づく機会をうかがっているのである。皇帝が自分の事を信頼してくれるようになれば、その時は全力で応える気持ちもある。しかし、表向きにはまだ小さな家柄なのだ、夢のような話である。
「仕方ないか、運が無かったのだから…しかし、もし私が大きな貴族に生まれていれば…もしマドリガーレ家に生まれていれば…」
 辛かった幼少期を思い出し、自分の運の無さを呪った。
「クク…私とした事が…自分の生まれを気にしているようでは一生掛かっても大貴族どもにかてんな…」
 手にしていた資料を真っ二つに引き裂き、そしてテーブルに置いたワイングラスを手にとり肖像画を睨みつける。
「貴様は帝国にとっては必要な人間だろう、認めなければなるまい…しかし…だからこそ許せんのだ!」
 そう言うと、ルドルフはワイングラスを肖像画に向かって思い切り投げつけた。血のように赤いワインが「仮面の女性」の肖像画に染み込んでゆく…そう…ただの嫉妬である。しかしルドルフには認める事が出来なかった…

(2002.12.06)


年表一覧を見る
キャラクター一覧を見る
●SS一覧を見る(最新帝国共和国クレア王国
設定情報一覧を見る
イラストを見る
扉ページへ戻る

『Elegy III』オフィシャルサイトへ移動する