吹雪
水薙 雷夏
雪が降っていた―――
いや、そう表すよりも吹雪き始めてきた―――そう表現する方が適切かも知れない。
ラグライナ帝国とクレアムーンの決戦―――聖都クレア攻略戦の最中の事であった。
自身の吐息が白くなるのを見て聖都クレアへと通じる橋の上で男は思考する。 この吹雪は男にとって―――その男に限らず、聖都攻略戦に参戦している全ての者達にも 言えるが―――は不都合な事態を引き起こしかねないと危惧されるものであった。
男は暗殺者だ。それも単独での暗殺という行動においてのみでは超一流の暗殺者だ。 だが、男の後方には2000もの忍び装束の者達が控えている。 男が身につけている業は、あくまで単独、若しくは少数の人員での暗殺を前提としたものだ それ故に、2000人―――1つの部隊を率いて戦うものではなかった。 にも関わらず、男が部隊を率いているのは男の依頼主の意向であった。 何の因果かと呪いたくもなったが、男としても依頼主の要請を断る事はできなかった。
―――だから、男は2000名もの忍びを率いて聖都にいる。
この吹雪は男にとって厄介なものだと思った。 戦闘ないし戦争、それに関連する行動でもなければ、それこそ気に留める程のものでもなかった。 しかし、戦場であり、戦争行動をとっている身としては疎ましいものである。 まず、自身の吐息が白くなる程の寒気ともなれば、それによって自身の肉体の精度が下がりかねない事。 次に、この白銀の世界においては男が身に纏っている漆黒の黒装束は逆に男の存在を際立たせる事。 そして、吹雪によって自身の視界が狭まるという事。 逆に男にとって益となるであろう事もある。
男は暗殺者であると同時に隠密であるが故に忍術と呼称される術をも使う事ができる。 所謂「法術使い」と呼ばれても違和感を感じない程の能力を保有しているという事だ。 それによって、自身が習得している「水」「氷」系統の術が通常以上の効果を期待できるという事。 また、この吹雪によって視界が制限されるが故に此方の行動が捕捉される事はほぼ皆無であるという事。 そして、降り積もる雪は馬の脚が取られるという事。 だが、これらの男にとっての利害は、男に限った話ではない。 無論、聖都で戦争行動をとっているのは男だけではないのだ、これらの利害は 聖都で戦闘行動をとっている全ての者達にも該当する、要は条件は皆同じという事である。
それ故に―――男はこの吹雪を厄介なものだと思った。
見れば、男の味方の部隊は―――一騎討ちにおいて負傷し、一時待機を余儀なくされた部隊を除けば 全て橋を渡り一時撤退ないし復帰補給後の合流前という状態である。 要は男の部隊が橋を塞いでいる形となっている。
敵側の部隊は中々に手強い―――「戦争」は素人ともいえる生粋の暗殺者でもそう思わせる 将が多いという事であろう。尤も、中には戦争遂行能力が極めて欠如してる者も存在するであろうが・・・。
男―――水薙雷夏は思う。 元より彼が依頼主―――ラグライナ帝国皇帝セルレディカからの要請は暁の守人の暗部を 率いて法術による牽制・援護を主としたものであった。 それ故に、楽な仕事かと思っていたが、存外に割の合わない仕事だと思っていた・・・。
雪が降っていた―――
いや、そう表すよりも吹雪き始めてきた―――そう表現する方が適切かも知れない。
ラグライナ帝国とクレアムーンの決戦―――聖都クレア攻略戦の最中の事であった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ◇PL 聖都クレアの戦術MAPに雪が降っていたのでなんとなく書いてみました(笑) しかし、久しぶりに書いただけあって無駄に長い・・・しかも全くしゃべってないし、雷夏(爆) ・・・というか、このSSを含めたELEGY3SS4作合わせても台詞が6行の雷夏って・・・(爆死) 今更ながら、無口系のキャラって書きにくいです(笑)【←それは違うと思います(爆)】
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