夢の狭間

レナスティーナ

前線の猛将は既に包囲され、全身ハリネズミのように矢を受けて落命した。

左翼の女騎士は部隊崩壊後一騎討ちを仕掛けたが、相手にもされず重装歩兵に踏みつぶされていった。

右翼の戦士は動かない。何のこともない、最初から敵と内通していたのだ。

全軍の再編成をすると言い残して馬に乗った軍師が帰ってくることはなかった。

気付けば自分の回りには誰もいなかった。


「馬鹿な・・・こんな馬鹿な・・・」
悪夢を見るというのはこういうことなのか、そう実感させられたのはレヴァイア国王カルドスだった。
1247年ローグライスの戦い。
この戦いが終われば共和国と共に帝国領土へ攻め込もう、出陣前に諸将を並べてそう高笑いしたのがつい数日前だった筈だ。
しかし、現実という名の悪夢は辛辣であった。
レヴァイア王国が誇る軍勢は土に還り、そこを踏み荒らすのは帝国兵だった。
「怖い・・・帝国軍が怖い・・・」
何かに憑かれたかのように何度もそう呟きながらカルドスは本国まで逃げ戻ってきた。

こうしてレヴァイア王国はラグライナ帝国に降伏。自治こそ認められたものの完全に帝国の属国となった。
その調印式を苦々しく睨みつける一人の少女が居た。

「情けない父様・・・・いずれ・・私の手で・・・」

それは少女が見る幻夢なのか・・
それとも、再び訪れる悪夢なのか・・
この時点でそれを知る者はいない。

(2002.10.05)


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