無銘
結城 紗耶
女性は静かに机に向かって、椅子に腰を降ろしていた。
正面にいるのは、軍服を着た30代後半の男である。
男「思ったより早い動きですな」
?「・・・そうですね、もう少し、ゆっくり出来ると思っていたのですけれども」
男「司令は、どうお考えですか?」
?「何がでしょう?」
男「今回の件です。もしや我らに矛が向けられる事にもなり兼ねません」
?「それは私の決める所ではありません。全ては主が決める事でしょう?」
男「そうですが、私は司令の考えをお聞きしたい」
?「考えなどありません。私は私の職務を遂行するだけです。」
男「・・・相変わらず読めぬ方です」
女性は一息つくと、綺麗な線で描かれた唇を開いた。
?「ただ、矛を向ける者には矛をもって返す・・・それだけです」
|