最終夜
結城 紗耶
巫女の力は、その処女性に由来すると言うが、紗耶の神通力は現在も失われる事はなかった。
本来、巫女は俗世への縁や思念を断ち切り、一切の蟠りを捨て去る事によって神と1つになり、
その力を得ると言うのが正しい意味なのかもしれない。
俗世への強い想いや感情を捨て去る為に『禊』をするのである。
今まさに紗耶は、その禊を終えたところであった。
父「紗耶、準備は良いか」
紗耶「はい」
これが光明巫女の本来の正装なのであろう。
普段とは異なる、煌びやかな飾りと、白より白い真白の千早を纏い、
正装となる装束を着た紗耶は、力強く答えた。
父「何をすれば良いのか、判っているな」
紗耶「はい」
父「すまない。お前には何もしてやれなかったばかりか、
せめて普通に恋をし、好きな者の子をと思い、クレアに向わせたが、
かえってお前を辛い目に合わせる結果となってしまったようだ」
紗耶「私はクレアに行き、多くを学び多くの人と知り合う事が出来ました。
私は幸せでした。もう未練はありません…」
それが紗耶自身、本心なのか嘘なのか、もはや悩む余地はなかった。
悩みは巫女にとって最大の敵であるからである。
紗耶は全てを無心に、己が向うべき地へと進んだ。
『荒神』とは、それ自然の脅威。
『オロチ』とは、結城家が代々静めてきたシチルの大爆流のことである。
もしも、爆流がシチルの大河に流れ出る事があれば、
シチルの街は多大な災害に見舞われるだろう。
それを威力の弱い源流の内に、結城家は防いできた。
とは言え、数十日間にも及ぶ長雨が齎す激流は、人知を超える破壊力である。
光明巫女は、その命を糧として、神通力を最大限に発揮する事により、
命と引き換えに、その激流の威力を分散させるのである。
紗耶は、膝ほどの水かさのシチルの源流の中央に身を下ろすと、
目を閉じ、そっと時を待った…
PS:エアードさん、後はよろしくw
&皆様、長文失礼致しました(^_^;)紗耶の戦線離脱SSを兼ねています(笑)
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