退路
セグトラ
カルスケートからガイ・アヴェリへ続く道…セグトラは馬車でその道を運ばれていた…。
つい先ほど、彼の指揮していた部隊が帝国軍の集中攻撃に遭い壊滅…セグトラ自身も傷を負い、首都へと搬送されていた…。
(全滅です…か…。だけど役目は果たせましたかね…。)
彼の部隊の役目…それはただ一つ、命を武器に敵を足止めすること…。
元々、一介の評議委員…武将でもなければ軍人ですらないセグトラの指揮する部隊。
一度前線に出れば壊滅は免れない事は分かっていた…だが前線へと赴いた…それが役目だったから…。
最後まで逃げ出す者はおらず、唯一彼を守っていた数名を残して全員が戦死を遂げた。
その数名も重症を負い彼と共に首都へと搬送されている。
「すみませんねポアル…私の為に…」
セグトラは身体を起こし隣に横たわっている者に声をかけた。
彼の副官として部隊を指揮していた人物である…生きてはいるが、手足を損傷し、普通に生活することすらままならないだろう…。
「いえ…これが私の任務ですから。それに、戦地で散ったものも本望でしょう…我々は共和国の為に死ぬ事を望んでこの部隊に志願したのですから…。」
「そうですか…本心でなくとも、そう言ってくれると助かりますよ…。」
そう言いながら壁にもたれかかり、外を見る。
既に遠くなった戦場が見える…今もあそこでは戦闘が続き…多くの命が散っているのだろう…。
(これが戦争ですか…いつまで…いつまで続けねばならないのでしょうね…)
声には出さず心の中で呟く…。
もう見えない…だが、いまだにそこにある彼の部隊の者達の屍…目に焼きついた光景を心に刻みつけながらセグトラは戦場から離れていった…。
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