紅が緑と重なる時
影人
それは古びた辛気くさい屋敷だった。
クレアムーン風、とでも言うのだろうか。赤を基調にした木造の広い屋敷は、ずいぶんと年月が経っている上に手入れも不十分で、痛みばかりが目立った。
まあ、無理も無い話ではある。30年もの長い間放置されていたこの屋敷に主が戻ってきたのは、ほんのひと月前なのだ。
案内役の女中に連れられ、慌ただしく手入れされどうにか人に見せられる程に整えられた中庭へと出た紅は、目を見張った。
そこにあったのは池だった。それもとてつもなく大きな。恐らく屋敷自体の敷地より大きいのではないか。
池には巨石が意味ありげにあちこちに配置されており、その間を縫って設置された細い橋を渡っていると、どこからか弦楽器の音が響いてきた。その音色はずいぶんゆっくりとしたテンポで、まるで母が赤子を寝付かせる子守歌のような、そんな優しい曲だ。
自然と演奏者の姿を求めて音を辿り、池の中央にある中島とでも言うべき中央の巨大な岩へ目を向けた紅は、大きく目を見開いた。
そこには、古ぼけた楽器を奏でる一人の娘の姿があった。だがあろうことか彼女のいる巨岩は、宙に浮いていたのだ。
(いや・・・・・・)
驚きを飲み込み、気持ちを落ち着けて再度中島を観察した紅は、からくりに気付いた。
水だ。
池のあちこちに配置された巨石の全てが、水面に映る姿と絶妙に繋がり、まるで天空に浮いている様に見せているのだ。
空中庭園。
恐らくそんなものを念頭してに、庭師はこの池を作ったに違いない。
「お舘様」
女中に呼びかけられて、お舘様と呼ばれた若い娘は手の動きを止め顔を上げた。
「あら、ご免なさい。もう見えられたのね」
娘が動きを止めたのを見て、それまで彼女の脇に控えていた付人らしい小さな男の子が楽器を受け取り、てきぱきと楽器を片付ける。その間に、娘は女中に何か飲み物をと言って下がらせた。
「どうぞこちらへ」
二人を送り出した娘は、紅を少し離れた場所にある卓まで導くと、席に付く様勧めた。その言葉に付き人は素早く反応し、椅子を紅の為に引いてくれたが、紅は直ぐには席に着こうとはせず、黙ったまま娘から視線を逸らすことなく、ゆっくりと古い木製の椅子に腰掛けた。
改めて目の前の娘を観察する。
つい数ヶ月前に当主名代に就いたばかりの彼女は、まだ16歳。
肉付きは少々痩せ気味だが、全体としての容姿は比較的整っており、帝国内での評判も良い。
だがその若々しい姿を綻ばせているの点が一つあった。
それは髪だ。
長く豊かな髪ではあるが、年の割にずいぶんと白いものが目立った。聞けば、彼女の髪に白が混じる様になったのは、帝都で暮らす様になってからだと言う。やはりこれまでの田舎暮らしとは異なり、ここ帝都ラグライナでの慣れぬ生活は、確実に彼女の神経をすり減らしているのだろう。
元々、彼女の一族は帝国内でもそれなりに名の通った一派であったが、今から三十年前、「鋼鉄参謀」と呼ばれる当主が何を思ったのか、突然一族を引き連れラグライナ帝国から下野し、田舎で隠棲生活など始めてしまったのだ。結果として、一族が誇っていた諜報能力は失われ、代わりに大陸随一と言われる馬術を会得する。それは彼らが隠棲した土地の原住民達との融和政策を進めた結果であり、影に生きるのが常であった彼らは、ここの30年の内にすっかり騎馬民族に変わっていた。
そしてそれに目を付けたのが、他ならぬ皇帝セルレディカだった。
ガルデス、クレアムーンの両国が、反帝国の意志を鮮明にし、状勢が風雲急を告げる中、彼は今だ族長の地位にあった鋼鉄参謀を再び帝国に招聘することで、騎兵戦力の増強を計ろうとしたのだ。
セルレディカが派遣した特使に、鋼鉄参謀は一族の有力者を集め、まる1日に及ぶ論議の末、招聘を受ける決定を下した。セルレディカが示した条件が、過去の経緯については一切触れず30年前と全く同じ待遇を与える、という好条件だった事もあるが、何よりここ数年の干ばつで彼らの生活にも危機が迫っており、それを回避する為に彼らは人口を「間引き」する必要に迫られていたのだ。
ただ帝国側にとって以外だったのが、一族の長である鋼鉄参謀が高齢を理由に田舎に留まり、一人の娘を名代とした事だ。
そして今、その娘は与えられた務めを果たすべく、黒髪を真っ白にしながら紅の前に座っていた。
紅が椅子に腰掛けるのを見届けてから、席についた主は笑顔で言った。
「改めて、ご挨拶させて頂きます。一族の名代を務めております緑(りゅー)と申します。紅様。わざわざ当家に足を運んでいただき、ありがとうございます」
緑と名乗った娘の挨拶を、紅は白々しい思いで受け止めた。
元々鋼鉄参謀と言うのは、かつて帝国の謀略に携わるある機関の長に付けられた称号に過ぎない。その名は巷では一個人として、100年以上昔から暗躍する伝説的な人物、などと言われているが、実際はもう幾人も代替わりが行われている。それでも、鋼鉄参謀を一人の人物である様に見せかけているのは、神秘性を持たせる為の稚拙な演出に過ぎないのだ。だからその事実を知る紅にとって、緑の挨拶は馬鹿馬鹿しいものに他ならなかった。
ただ紅にもわからないのは、緑が慣例に通りに鋼鉄参謀を襲名せず、その名代を名乗っている点だが、これはお世辞にも体格に恵まれているとは言えない彼女では、鋼鉄参謀の象徴たるあの黒い全身鎧を身に付けて活動する事が出来ないからでは、と当たりを付けていた。
全くご苦労な事だ、と思いながらも、それをおくびにも出さず、紅はいつも通りの口調で緑に応じた。
「是非も無いこと」
紅がこの屋敷を訪問したのは、皇帝セルレディカから、緑ら一族を中心とした騎兵隊の編成に当たり、その副官に就任する様、直々に命じられたからだ。皇帝の忠実な臣下である紅が命を拒絶出来る訳も無く、紅はこの屋敷を訪れざるを得なかった。単に緑に招待されただけなら、決してここを訪れはしなかっただろう。つまる所、紅は緑とその一族をその程度の存在としか見なしていなかった。
「では、さっそく本題に入るとしましょう」
無駄話で時間を浪費する習慣の紅は、そう言って緑の背後に控える男の子を見つめた。邪魔だ、去れ。と言う意志表示だ。
並の人間であれば、紅の突き刺す様な視線に耐えられず、早々にその場を立ち去るか、視線を逸らそうとする。だが緑の後ろで控える子供は、紅の視線を浴びても微動だにしない。もっとも、それはこの子の肝が据わっている、と言う訳でも無さそうだった。何故なら男の子の目は虚ろで、紅を見返すその瞳には、感情はおろか生気さえ感じられない。まるで死んだ魚の目だ。何だかの原因で、精神を病んでいるに違い無かった。
「零、下がりなさい」
紅の意を読み取った緑が命じて、零と呼ばれた子供はようやく退席した。
「申し訳ありません。あの子、血縁者をみんな山賊に殺されて、以来あっちこっちの部族をたらい回しにされたものだから、あんな感じで・・・・・私の言うことはちゃんと聞いてくれるんですけど・・・・・・」
「謝罪は無用」
紅の意志に気付いていたか否かはわからないが、零とか言う子供は単に主に忠実であったのに過ぎない。だから紅は零の振舞など気にもとめず、緑に質問した。
「だが、家族を殺されたのは緑殿も同じではないか?」
今から約1年前、緑は対立していた部族の攻撃を受け、両親と弟を殺され、自身も深い傷を負った。だが、そんな中でも緑は配下の者達を指揮し、撃退に成功している。そして以後4度に渡る戦闘で、その部族を完膚なまでに叩きのめし、見事家族の仇を果たしている。彼女が若干16歳ながら、一族の長と認められたのは、この実績による所が大きい。
「私は零程幼くはありませんでしたから・・・・・・」
「あの子は死んだ弟の代わりか?」
事前に収集した情報によれば、緑の弟が生きていれば、先程の付き人と同じくらいの年齢になる筈だった。
「代わり、と問われれば確かにそういった感情が自分の中にあるのを否定しません。でも、それだけと言う訳でも・・・・・・」
「いざとなれば捨てられるか?」
紅の容赦ない問いに、緑は絶句し、返答の代わりに弱々しい声で紅に尋ねた。
「そこまで覚悟しなければいけないんですか?」
「必要とあらば」
素っ気ない紅の言葉に、緑は黙り込む。
(反応は極めて一般的か)
今までの質問で、緑のおおよその人成りを把握した紅は、そう彼女を評した。実は事前調査を行ったものの、緑が若く経歴も乏しい事から、入手出来る情報は限られおり、紅は彼女の人物像を確かめるには、この会話での質問以外に手がなかったのである。
「では、質問を続けさせて頂く」
完全にこちらのペースに飲み込まれた緑を見据えながら、紅は詰問調で問うた。
「何故、私なのだ?」
「それは・・・」
緑の言葉がまた詰まる。先程の様な返答に窮する質問を警戒しているのだろう。
時間を無駄に使うつもりの無い紅は、このまま黙ってしまわれてはたまらないと、更に緑を追い込む発言を行った。
「返答次第では副官の件、辞退させて頂く」
これで緑は逃げられなくなった。
もう黙っている訳にはいかない。そう覚悟を決めた様だ。紅の前で緑は大きく深呼吸して呼吸を整えると、精一杯の気力を込めて相手を見据えると、静かに語り始めた。
「今回のセルレディカ様の命に応える為、我が一族は大変多くの者達をこの帝都に送り込みました。私はその長として、彼らの命を預かる身です」
帝都に移り住んだ鋼鉄参謀一族は、戦力化される騎馬兵だけでも千騎を軽く越え、更に彼らに同行した家族を含めれば、その数は数倍に膨れあがる。そしてその全ての者について、長たる緑はあらゆる責任を負っているのだ。
「私は彼らに死ねと命じる事が出来ます。でも、私は出来る限り・・・いえ、可能であるなら、九死に一生すら出来ない、必死の命令など出したくありません」
紅の相手を見下ろす冷たい視線を、緑は明らかに怖がっていた。だかその恐怖を涙ぐましい努力で押さえ込みながら、必死に口を動かし続けてた。
「これを避ける為には、長たる者が的確な判断を下さねばなりません。しかし、我々は辺境の田舎者の集まりに過ぎません。これから戦場となる土地土地の地形や気候、そして敵将について、あまりにも無知です。それを補う為に、我々は事情に通じた人物を陣営に招く必要がありました。そして選ばれたのが紅様です」
ここで一息。だが紅は相変わらずの無表情で、何も読み取らせない。しかし緑も開き直ったらしく、言葉に勢いが感じられる様になった。
「紅様は軍政共に秀で、敵味方についても大変お詳しい。そして何より神懸かった武術をお持ちです」
「武芸に優れた者など、緑殿の一族にも幾人もいよう」
「いいえ」
緑は断言した。
「我が一族の兵の中で、命も無く敵に背中を見せて逃げ失せる様な弱者は一人もいないとは請け合いますが、ミーシャ様や水薙様といった、まるで魔人のごとき力を有するものはおりません」
「・・・・・・」
水薙もミーシャも帝国内で1、2を争う武芸者である。そんな者達の存在は希有と言えるだろうが、敵として戦場で対峙する運命にあるガルデス、クレアムーンにも、二人に匹敵する超人的な力を持った将が多数控えている以上、それに対抗出来るだけの人材を何としても自軍に確保しておきたいのだろう。
「紅様は、我々に欠けているものを補う力を持つ、唯一の方です。どうか そのお力をお貸し下さいませ」
緑は深々と頭を下げた。
「・・・・・・緑殿。お前は優しい。その優しさは美徳と言える。だが戦場では無用の情けは自らの首を絞めることに繋がりかねない。それでもなお、自らの意志を貫くつもりか?」
損害を恐れる余り、好機を逃すと言うのはよくある話だ。だが紅は性分からそんな事態は絶対に受け入れられない。もしそんな失態を起こしたとしたら、緑の首を撥ねかねない。
それでもなお、自らの意志を貫く覚悟がお前にあるのか?
そう紅は問うた。
「私は・・・・・・」
紅の言葉を黙って聞いた緑は、堅くこわばった頬を必死に動かし、言葉を紡ぎ出す。
「いかなる事態に直面しようと、私は部下の死を望みません」
紅が沈黙していのは、ほんの僅かな時間に過ぎない。しかし、緑にとっては永遠とも思える時間だったに違いなかった。
「いいだろう」
「それでは!」
期待のこもる緑の視線を強く感じながら、紅は意識して口調を柔らかいものに変えた。
「是非も無い、と最初に言った筈。皇帝陛下は私に緑殿達への助力を命じた。そうである以上、緑殿に手を貸すより他私が取るべき道は無い」
緑の表情が、ぱっと明るくなる。しかしこれこそ、紅が待っていた瞬間だった。
「だが私はあえて問いたい。我が助力に対し、緑殿は何を示す?」
紅の問い掛けに、緑は絶句した。紅を自陣営に招くと言う目的を達成して気を抜いた所に、予期しない質問を食らったのだ。当然と言えば当然の反応だった。
(さて、どう答える?)
戦場において予測不能の奇襲を受ける可能性は必ず存在し、不意打ちを受けたからと言っていちがいには将を責められない。大切なのは、危急の事態に対してどれだけ素早く冷静に的確な対応が出来るかだった。
紅の視線の中で、緑は大きく息を吐くと、以外にも笑みを見せた。
「紅様って、本当に油断出来ない方なんですね」
「それは私にとって、最高の誉め言葉だ」
で、お前は何を示してくれるのだ?
紅の問い掛けは、将としての素質の確認だけで無く、同時に緑という「人」への問い掛けでもあった。人に力を借りる以上、どんな形であれ「借り」は返す。それが紅にとっての道義であった。何も返せぬと答えるなら、目の前の女は只の小娘に過ぎない。返答次第では将たる器では無いと判断し、新設騎兵隊の実質的な指揮は自分自身が取るつもりでさえ、紅はいたのだ。
だが催促の意図が多分に含まれた紅のぶっきらな返答にも、緑は笑みを崩さなかった。
「そうですね。助力の代償と言われましても、ご存じの通り、我々は田舎者で、都の方が喜ぶ様な贈り物などは何一つありません。ですから私が紅様に示せるものは・・・・・・」
細い針の様に鋭い紅の視線の中、緑は言った。
「ご友誼を」
「ゆうぎ、だと?」
「はい」
いぶかしる紅に、緑はとびきりの笑顔を見せた。
「兵に無益な死を招かない為にも、我々が交友を深めくのは当然でしょう。何より私達はこれから戦場に出向き、寝食を共にするのです。お友達になっておいた方が何かと便利ですし・・・・・・何より楽しいです」
お友達か。この私が。
鉄面皮の下で、紅は苦笑するしかない。
だが、悪い気分では無かった。
「わかった。そのご友誼、確かに頂こう」
「ええ、良いお友達になりましょう」
一体自分は今、どんな表情をしているのだろう? 胸元で手を合わせ、無邪気に笑う緑を見ながら、紅はそんな事を思った。
「あ、そうだ」
突然、緑は胸元でぽんと手を叩いた。
「私達の隊名を決めませんと」
「私達では無く、緑殿の隊だ」
部隊の名称など特に決めなくてもいいものだ。だが大まじめに言う緑に、特に反対する理由もないと、紅は最小限の指摘に留めた。
「でも、お互いの名前を組み合わせれば、きっと素敵な名前になりますよ」
紅の指摘にも関わらず、緑は新設部隊は紅との協同のものだと言う認識を変えていない様だ。唇に指を当て、あれこれと考えを巡らせている。太陽の光がその真白な髪を輝かさせ、眩しい。
その姿に、紅は席を立った。
「いや、緑も紅も似合わない」
「え?」
否定されるとは思ってもいなかったのだろう。戸惑いを見せる緑の脇に立った紅は、彼女の長髪を掻き上げた。
「白こそ相応しい」
何を意味するかは明白だった。緑の白化した髪。
「でも・・・」
緑は顔を下向け、恥ずかしがる。決して望んで髪を白くした訳では無いのだ。年頃の娘が、老婆の様になってしまった髪を誇ってみせることに抵抗があるのだろう。
「これは緑殿の努力の証だ」
紅は白髪を唇に触てみせる。するとまるで神経が繋がっている様に、緑は体をぴくぴく震わせる。
「隠す事など無い。むしろ誇るべきものだろう」
それでもまだ決心を尽きかねている緑に、紅はしゃがみ込み、唇を彼女の耳元に寄せ、小さな声囁く。
「それに、白髪でも、緑殿は十分に美しい」
「・・・・・・はい」
耳まで真っ赤に染めながら頷いた緑の姿に、紅はあまりに初すぎると感じる。
戦場では、他人の手柄を横取りするくらいの図太さが必要なのだ。そういった狡賢さが、緑には全く欠けている。恐らく、紅が新部隊で務めねばならぬ役割は、居並ぶ闘将達との死闘では無い。阿鼻叫喚の戦場で生き残る為、常人が聞けばたじろぐ様な献策を行う、そんな汚れ役だ。もっとも、緑は自分にそんな役を押し付けることになるとは、夢にも思っていないだろうが。
(とにかく、人が良すぎる・・・・・・)
そんな少女の背中を押して、紅は血みどろの戦の真っ直中に飛び込まねばならないのだ。
果たして勝利を掴む事が出来るか?
その自らへの問い掛けを紅は瞬時に打ち消す。勝つか負けるか、では無い。自分は何としても勝たねばならないのだ。幼いセリーナの為にも。
微かに、笑みがこぼれた。汚れ役? お似合いではないか。日陰者の自分にしてみれば。
「やっと笑ってくれましたね」
紅の笑みの意味を取り違えた緑が、無邪気に微笑む。
その笑みは、戦場にはあまりに不似合いなものだ。だが、まぶしい。自分には決して浮かべる事が出来ない、いい顔だ。羨ましい。
(羨ましい?)
反射的に、紅は胸中に浮かんだ淡い羨望の感情をうち消す。そしてこれで話は終わりだ、とばかり紅は立ち上がった。
「全ては決した」
紅は宣言した。
「我が持つ全ての才を持って、共に戦う事をここに誓おう」
「ええ、戦いましょう。敵の屍を肥に不毛の地を富地に変える程に」
「勇ましいお言葉だ」
緑の微笑みを、紅はもう正眼する事が出来ない。短い言葉を最後に、きびすを返し、緑の前から去る。
自分は生粋の戦士なのだ。緑とは違う。
自分は戦う。戦って、戦って、戦い続けて。それでも勝利を掴めなかった時は・・・。
(その時は、朽ち果てるだけだ・・・)
それも悪くは無いと思う。何故なら、命は砕け散る瞬間こそ、もっとも美しく光り輝くものだから。
(例えそれが自らの命だとしても)
自虐に満ちた笑みを浮かべて、紅は鋼鉄参謀の屋敷を後にした。
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