開戦前の一幕
空 翔三郎
聖都侵攻を開始した帝国軍、その軍議の席に一通の書状が届けられたのは
朝霧水菜が敵将コマとの一騎討ちのために先行を開始したすぐ後であった。
「ふん・・・」
コの字形に組まれたテーブル、その中心に座す空翔三郎は書状に目を通すと
隣に立つミル=クレープに興味無さげに手渡した。
「鴉将軍はともかくリヴァイアサンというのは初耳ですね、空さまはご存知ですか?」
「いんや、そもそもオレは男の名前なんぞに興味は無えかんの」
そうですかと溜息をつきながらミルは左側に座る法術部隊の将軍に書状を渡す。
「グの字、雷の字、聞いたことあんけ?」
「リヴァイアサン? 俺も長い事傭兵をしていたが聞いた事の無い名だな」
「・・・・・・リヴァイアサン・・・・・・・・・・・我も知らぬな」
グレイアス、水薙雷夏の両名は書状に目を通すと対面して座る前衛部隊の将軍へ
ぴっと書状を投げてよこす。
「フォの字、フィの字、そっちはどない?」
「特に知らんが知ろうとも思わないな」
「んー? リヴァイアサン? そんな奴おったかいな……まぁ、どうでもええわ」
フォルクス、フィアーテ・V・S・Bの二人が書状に対する感想を述べる。
そしてぴっと空のやや上方へと書状を飛ばした。
「それで、どうされるんですか? 空さま」
「は、そげなん決まっとんやろ」
ぱぁん
ひらひらと下りてくる書状を拳で打ち抜くと空は静かに立ち上がった。
「無慈悲な死神? 上等やんけ。
伝令、後から来るアリサ嬢ちゃんとフレア嬢ちゃんにも伝えとけや。
全軍前進、どいつもこいつも叩き潰すってな」
クルス歴1255年3周期、聖都での決戦が今まさに始まろうとしていた。
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