回想  ―病院にて―

空 翔三郎

ふと、空翔三郎は目を覚ました。辺りを見回すがまだ暗い。
病院の天井を見つめたまま、先程まで見ていた夢をぼんやりと思い返す。
シチルでの壊滅から今までのことを順に巡りよった・・・
そういえば負傷で帝都送りになるのはシチル以来か。
あの時も確か神城隊からの攻撃で壊滅したんやったな。
そのせいか?あげな夢を見たんは・・・




「あら、何騒いどんのん?」
その言葉と共に、久しぶりに叢雲嬢ちゃんに会うた。
顔を合わせるのは天幕での一件以来、初めてやったの。
レヴァイア行ったが部隊は壊滅、今は月の塔さ居るっち聞いて行ってみると
今から送り返すとこやったけえちょいと同行させてもろうた。

何されたかは大体分かっとったけえ特に聞かんかった。
シチルでのことで恨み言の一つでもあるかと思うとったがそれも無し、しばらくは
馬車の走るガラガラという音だけが耳に響いとった。
ややあって、叢雲嬢ちゃんから少し話を聞いた。
最後の言葉は今でも耳に残っとる・・・
あの時、外を見ていたが何も覚えちゃおらん。ただ頭ん中で色んな言葉が巡りよった。
が、どれも欺瞞に満ちとる気がしたけえ何も口にゃあせんかった。
帝都で、そして戦場で会って、オレは叢雲嬢ちゃんを捕らえ、犯した。それだけが事実。

やけえ王都に着いた時の言葉はちょう意外やった、ありがとう言われるとはの。
オレが憎うは無いんかな? まあ、とりあえず元気しとったんは分かったけえ・・・
いや、元気しとったんが分かった、ただそんだけのことよな。
それからまた、記憶に残らない景色を目にしながら馬車に揺られて帝都に戻ったっけ・・・

(2002.11.23)


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