GOD SAVE THE 俺

ヴィシャス

 女性仕官がヴィシャスの私室の扉をノックして開けるとそこに指揮官は寝ていた。
「いてえよー。いてえよー・・・ん?」
 ヴィシャスはわざとらしく騒ぎ立ている。カルスケートでちょっとした怪我を負ってからこの調子でナンパをしているようである。
「お前か。外はどうだった?」
 女性仕官は部屋に引きこもっているヴィシャスの代わりに街に広がる情報を収集させていた。
「変な噂が流れていました。

 帝国には スパイが いる
  帝国には 将の身ならずして 指揮を取るものがいる
 誰だ 誰だ そいつは誰だ?
  誰だ 誰だ いったい誰だ?


 というものが・・・。」
 報告を聞いたヴィシャスの顔が一瞬曇るが、女性仕官は見落としていた。
「俺は将軍じゃなくてもスパイじゃねえぞ。ひゃっひゃひゃひゃひゃ」
「あの・・」
 相変わらずの上官を見て部下は何かを切り出そうとしたが、すんでのところで言葉をのんだ。
「とにかく、軽傷ですし冗談を言える気力もおありですから、心配はしてませんが女性だけは部屋に連れ込まないで下さいね。」
 仕官は話を切り上げると部屋を辞した。
「ふう」 
 長い回廊を歩きつつ溜息をつき。色々な問題について真剣に考えるのだった。
 窓の外には低く曇天が降りてきていた。

(2002.10.18)


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