WINGS、再びシチルへ……
フィアーテ・V・S・B
帝国領『バライの街』からクレア領『シチルの街』へと伸びている街道を通って、帝国軍・第14部隊『WINGS』は再びシチルの街の大地に足を踏み下ろした。
『WINGS』が到着すると同時に、空 翔三郎率いる第4部隊とフォルクス率いる第5部隊がバライの街へと退却。
現在、シチルの街に残っている帝国軍は第7部隊『紅月夜』、第8部隊『ファルタス騎兵師団』、第10部隊『月詠』そして第14部隊『WINGS』である。
そして、朝霧 水菜率いる『紅月夜』は再び因縁の相手であるクレア第2部隊『蒼風』と交戦していた。
もっとも、帝国の将軍である朝霧 水菜とクレアの将軍であるエアード・ブルーマスターにある因縁がある事は、本人達以外誰も知るよしはないのだが。
――帝国軍・第14部隊『WINGS』駐屯地
「にしても、えらいまたはようにクレアの第10部隊を壊滅させたもんやね」
ペラッと『WINGS』、つまりフィアーテがバライの街に退却している間に起こった戦線の報告書を捲りながらフィアーテは呟く。
クレアの法術部隊である第10部隊『幻影の夢』は、フィアーテが予想するよりも早くに壊滅した事を、バライの街にいる時に耳に入った。
「ええ、その報告書にも書かれてますが、何でも『幻影の夢』の指揮官である御剣 叢雲将軍を捕獲したって話ですね」
デスクにかけて、報告書に目を通しているフィアーテの横に佇んでいる一人の若い男が口を開く。
『WINGS』のもう一人の副将である『アーディス・フォールト』……カレンと同時期に『WINGS』に就任した若き帝国の将である。
もっとも、フィアーテ自身も書類上は23歳なのだが……。
「その後、雷夏君とグレイアス君の法術部隊で止めを刺したっと……その際に、クレアの将軍である彩音ちゃんを捕獲か」
「そして、その後、再びシチル戦線に現れた『蒼風』が突出をして、そのまま『紅月夜』と交戦を開始した……ですね」
アディスがフィアーテの言葉を引き継いで続きを言う。
そして、フィアーテは読み終えた報告書をデスクの上に放り投げて、椅子の背もたれに体重をかける。
腕を胸の前で組んで、顔をアディスの方に向けて――
「作戦会議始めっからカレンちゃん達を呼んできてぇな」
「今からっすか?」
「そうや……頼んだで」
――帝国将軍『フィアーテ』及び帝国軍・第14部隊『WINGS』シチル戦線に復帰
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