解き放たれしもの

フォルクス

与えられた任務は偵察だった、
「いくら使い捨ての戦奴とはいえまだ子供には戦闘は荷が重過ぎる」
それがその部隊の指揮官の言葉だった。
その言のまま、五人小隊の偵察隊に組み込まれた。
そしてあまり危険でない方面に回された。
普通に考えると安全な方だったろう、こちらの倍はいる敵偵察部隊に遭遇する
までは・・・・。

朦朧とする意識の中悲鳴が聞こえる。
見れば二人の男性兵士は切り倒され、敵兵たちが二人の女性兵士に襲いかかろ
うとしていた、そして目の前には留めをさそうと拳を不振りかぶる兵士の姿。
 それを朦朧とする意識の中、無意識のまま体を半身にずらしかわすとそのま
まその隙だらけの胴へ掌を突き出す、その兵士が悶絶しながら倒れるのを見つ
つこちらを呆然と見る兵士たちに向かい歩き出した。
(すべては呼吸から始まる。)
どこで聞いたのだろう、漠然とその言葉が心に浮かんできた。
その言葉に従い呼吸を整える、その独特の呼吸法を・・・体に力がみなぎって
いくような感覚、そして何かが解き放たれたような開放感・・・自然と笑みが
こぼれる。
 はっと我に返りこちらに向かってくる兵士たちの一人の剣を力を集中させた
掌で受け止め、そのままへし折った、兵士の顔が驚愕に歪むのがわかった。
 そのまま力を込めた拳を叩き込む、周りの兵士たちの顔に恐怖が浮かぶ、目
の前にいる兵士の背中からはえた拳を見て。
 可笑しかった、だから笑った、そしてみなぎる力のままに残った兵士を叩き
潰し、貫き、引き裂いた。
 最後の兵士を絶命させ二人の女性兵士を見る、恐怖に引きつったその顔を見
つつ思った。
 まだ足りない、そのまま声に出して笑いつつ二人へ近づいていった。

 夜が明け別の偵察部隊が彼らを発見したとき見たものは、敵味方の偵察部隊
の惨殺死体と血まみれで立ち尽くす彼の姿だった。
 それから数年後、帝都軍司令部に一人の戦奴の噂が伝わった、素手での戦
闘術で敵を叩きのめす一人の少年の噂が…その少年の名前はフォルクスという。

(2002.09.21)


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