激突

ユーディス・ロンド

 <キロール・シャルンホストの姿を戦線に確認!>

 その方が最前線で剣を振るうユーディスの元に届けられた時、居合わせた者達の
脳裏を掠めたのは「まさか」と「やはり」という相反するものだった。

「やはり戻ってきたか・・・」
「しかし早過ぎる! まさかこんな短時間で戻ってくるとは」

 目前の敵を退け、つかの間の時間を得たラピス・ローズ隊首脳は対応を迫られていた。
 指揮官が前線に戻ってきた敵軍は士気も盛んに攻勢をかけてくるだろう。
 こちらもここまでの攻勢でやや陣が乱れている。
 ここは一時軍を引き、体勢を立て直すべきでは?

「・・・いや、ダメだ。ここは引かずに攻勢を強めよう」

 だが、ユーディスは静かにそれらの進言を退ける。

「なぜですか!?」
「キロール将軍が戻ってきた途端にこちらが引いたら、『こちらはそちらを恐れています』って言ってるようなもんじゃないか。それじゃますます相手の士気を高めて、逆にこちらの士気を下げてしまう。そのまま勢いに押し潰されちゃうよ」
「ですが、このまま戦っていてはこちらの損害も馬鹿になりませんっ」
「大丈夫! このままいけば勝てそうな気がするんだ」
「こ、根拠は!?」
「だから、気がするんだってば」
「全然ダメじゃないですかっ!」

 絶叫する副官。
 今回初めてユーディスが全面的に指揮を取って分かった事だが、この将軍の言う事はあまりに理論が欠落している。
 感性や直感といった類のものに頼った指揮があまりに多いのだ。
 それでもここまで共和国最強の部隊と戦えているという事実は副官の理解を超えていた。

「とにかく! ここが頑張りどころだ! いくぞぉ!」
「ああ、将軍、待ってください!」
「えーい! 将軍だけ行かせて逃げられるかよ!」
「伝令! 各小隊にも伝えとけよ!」

 副官の混乱など知る由もなくユーディスが再び前線に飛び出すと、不承不承ながらも直衛部隊も動き出す。
 結果的に、上に立つものが臆する事なく最前線で指揮を取る姿は全軍の意思を強固に纏め上げる効果を見せた。
 キロール復帰後の共和国との戦闘は劣勢ながらも粘り強く耐えてみせ、戦いはいよいよ最終局面へと突入する。
 そして、再び両者は戦場で合間見える。

「いくぞ! 帝国の小僧!」
「小僧じゃない! ユーディス・ロンドだっ!」

(2002.10.06)


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