予兆
ユーディス・ロンド
再び因縁の地、モンレッドへ舞い戻ってきたユーディス。
前線には既にミーシャを含んだ帝国軍が展開し、共和国との戦闘を繰り広げている。
共和国側には、第7部隊と第4部隊もいる…。
「心配ですか?」
厳しい顔をしているユーディスに、あえてやんわりと声をかけるアマナ。
ここ最近、ユーディスの表情にはハッキリと分かるほど影が落ちていた。
「いや…うん。やっぱり心配だな。またあんな事になったらと思うと」
「それだけですか?」
「…何で?」
ギクリ、と身を震わせるユーディス。
思わず振り向くと、じっと自分を見つめるアマナの視線にぶつかる。
「最近、酷くうなされてらっしゃるようですが」
「そんな事ないよ。少し寝苦しいだけで…」
「それは、うなされているからですよね?」
つ…と視線を外すユーディス。
(誰が、あんな夢の話を出来るかって…!)
あからさまに聞かれたくないという態度に、却ってアマナは追及できなくなる。
「はぁ…分かりました。では、本当にどうしようもなくなったら、私に相談して下さいね? これでも、精神医学だって少しは修めているんですから」
「分かった。頼りにしてるよ」
いささか心もとない返事だったが、アマナは気にする事なくにっこりと笑顔を返す。
そして、少しの間席を外すと、不思議な香りのする紅茶を用意してきた。
「ではユーディス様。せめてこの紅茶を飲んで心を落ち着けて下さいね」
「へぇ…初めての匂いだな。何てお茶?」
「銘柄はないです。ウチの自家製なんですよ」
「ふぅ…あ、ちょっと甘いね?」
「ええ、疲れた時になんか最適なんですよ」
なるほど、と頷きながら紅茶を口に運ぶユーディス。
その口元を、アマナは満面の笑みを浮かべて見つめていた。
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