予兆

ユーディス・ロンド

 再び因縁の地、モンレッドへ舞い戻ってきたユーディス。
 前線には既にミーシャを含んだ帝国軍が展開し、共和国との戦闘を繰り広げている。
 共和国側には、第7部隊と第4部隊もいる…。

「心配ですか?」

 厳しい顔をしているユーディスに、あえてやんわりと声をかけるアマナ。
 ここ最近、ユーディスの表情にはハッキリと分かるほど影が落ちていた。

「いや…うん。やっぱり心配だな。またあんな事になったらと思うと」
「それだけですか?」
「…何で?」

 ギクリ、と身を震わせるユーディス。
 思わず振り向くと、じっと自分を見つめるアマナの視線にぶつかる。

「最近、酷くうなされてらっしゃるようですが」
「そんな事ないよ。少し寝苦しいだけで…」
「それは、うなされているからですよね?」

 つ…と視線を外すユーディス。

 (誰が、あんな夢の話を出来るかって…!)

 あからさまに聞かれたくないという態度に、却ってアマナは追及できなくなる。

「はぁ…分かりました。では、本当にどうしようもなくなったら、私に相談して下さいね? これでも、精神医学だって少しは修めているんですから」
「分かった。頼りにしてるよ」

 いささか心もとない返事だったが、アマナは気にする事なくにっこりと笑顔を返す。
 そして、少しの間席を外すと、不思議な香りのする紅茶を用意してきた。

「ではユーディス様。せめてこの紅茶を飲んで心を落ち着けて下さいね」
「へぇ…初めての匂いだな。何てお茶?」
「銘柄はないです。ウチの自家製なんですよ」
「ふぅ…あ、ちょっと甘いね?」
「ええ、疲れた時になんか最適なんですよ」

 なるほど、と頷きながら紅茶を口に運ぶユーディス。
 その口元を、アマナは満面の笑みを浮かべて見つめていた。

(2002.11.12)


年表一覧を見る
キャラクター一覧を見る
●SS一覧を見る(最新帝国共和国クレア王国
設定情報一覧を見る
イラストを見る
扉ページへ戻る

『Elegy III』オフィシャルサイトへ移動する