(0)非常に長い前置き ゲーマーとして知られている私であるが、ゲームセンターに通うことは滅多に無い。高校時代は定期試験の後などにサークルの人間と一緒に通っていたことがあるが、それも2ヶ月に1回程度の話である。大学に進んでからは、1年以上1回も行ったことが無い時期すらあったのである。 ゲームセンターの雰囲気が特に嫌いだというわけではない。最も大きい理由は「大量のコインを使ってまでクリアしてみたい」と思ったゲームが少なかったからである。物凄く単純化して言えば「使用金額とプレー時間から割り出されるコストパフォーマンスが良くない」ということになってしまう。アーケードゲームというのは「客を回転させてなんぼのもんじゃ」という商売なので、大量の金が消えて行くのは別段不思議でもない。ただ、私の場合、まともにプレーできるジャンルが限られている(しかも台数が少ない)ので、足を踏み入れづらくなっている。それなりの長期戦(?)に持ちこめるゲームとしてはパズルゲームとクイズゲームの2つがあるが、これらもまともにクリアした例が無い。 往年の傑作落ち物パズルゲーム『TETRIS』(一番最初から置かれていたバージョン)では、近未来都市の背景を見た直後にゲームオーバーになっていたし、『ぷよぷよ』も6連鎖以上の巨大連鎖を自力で作ったことが無い。もっとも、このゲームでは、3〜5連鎖を多く作り相手の巨大連鎖を妨害する戦い方を得意としていたので、必ずしも「下手」というわけではないのだが……。 一方、クイズゲームではそこそこの戦いができるのだが、自分が苦手とするジャンルの問題に運悪く出くわしてしまうと、そこでゲームオーバーになってしまう。1回だけ、アーケードのクイズゲーム(名前は忘れた)のクリアに成功したのだが、その時も、1000円近くを使いギャラリー4人の力を借りてようやくクリアできたのである。 シューティングゲームは大体3面か4面でゲームオーバーとなるが、これはまだ良いほうである。2D格闘ゲームでは1面クリアすらおぼつかない。何しろ、【昇竜拳】や【波動拳】が今でも出せないのである。中学校時代にとある2D格闘ゲームをSFCでプレーした時、全くの初心者だった私が上級者にぼこぼこにされた(手加減しなかったのである)ため嫌気がさし、それ以来、格闘ゲーム(特にコマンド入力に依存したゲーム)には一種の「トラウマ」に近い感情を抱いている。 『DDR』とか『BEAT MANIA』とかは試しに数回プレーしただけ。どちらもノーマルモードで3面まで進んだが、所詮は初心者である。 そんな私がついふらっとゲームセンターに立ち寄ったのは、先週の金曜日(2000年8月11日)のことだった。 何故かって? 「時間もあることだし、せっかくだからゲームセンターに立ち寄ってみるか」と思ったのである。……要するに、これといった目当てのゲームも無くただ立ち寄っただけなのだが。 今回のコラムの舞台となったゲームセンターは、東急東横線元住吉駅のすぐ近くにあった、2階建てのあまり大きくないゲームセンターである。立ち寄ったのが午前中だったので客も少ない。私は閑散とした店内を進み、2階へと進んだ。ここには大型の台ではない「普通の」ゲーム──パズル、格闘、アクション、シューティング、クイズ、テーブルゲーム(一部18禁?)に属するゲーム台が置かれている。 昼間から放送コードに引っ掛かるような画像を公衆に晒すつもりは無かったし、得意でもないジャンルのゲームをして損した気分になるのも癪に障る。そういうわけで、とりあえず、今回はクイズゲームをプレーしてみることにした。で、店内を捜してみると、置かれていたクイズゲームの台は1つだけ。 というわけで、第1回目の『アーケードゲーム紀行』のはじまりである(あー長かった)。 |
(1)ゲーム説明 今回選ばれたのは、セガ・エンタープライゼズが作った(※)クイズゲーム『ああっ女神さまっ 〜闘う翼とともに〜』。説明するまでもないが、藤島康介氏のマンガ『ああっ女神さまっ』を原作としている。 今のうちに断っておくが、私はこのマンガの中身を全然覚えていない。大学の後輩の自宅で目を通したことはあるのだが、特に内容を覚えているわけではない。 ゲームとしての設定は以下の通りである。 主人公男性(名前……忘れた/)の近所にある大学で異常が発生した。その異常というのが魔法的なものであり、主人公と5人の女神達──ベルダンディー、ウルド、スクルド、ペイオース、リンド──が解決の為に現場へ乗り込む……という感じだったと思う(原作を知らないからこの程度しか書けない)。現場では、異常を取り除く為に魔法石を集めて中ボスを倒さねばならない。魔法石を回収する作業や中ボスとの対決が全てクイズゲームの形式になっているのである。この時、5人の女神達の中で誰の助力を借りるか(=誰のクイズを受けるか)をプレーヤーが比較的自由に決定できる。 とりあえず、難易度がどの程度なのか分からないので、1000円札を崩して100円玉に替え(この店は1クレジット100円)、長期戦への備えを整えた上でゲームを開始する。 ルールとしては普通のクイズゲームと一緒である。ただし、いくつか特殊なルールが用意されている。
以上のような特殊なルールがあるが、基本的にはクイズゲームの王道を踏まえた内容となっている。問題難易度はやや難しめであるが、システム上は「良くできたクイズゲーム」として楽しめるはずである。ただし、かなり大きい難点もある(これは次の節で詳しく述べたい)。 それから、クイズゲーム部分では女神達はフルボイスで喋るようである。……あ、問題文までは喋らないよ。 |
(2)実際のプレー記録 では、私が実際に1000円を使った時の記録を紹介したい。 原作のことをあまり知らず、とりあえず「クイズゲームの台」という程度の認識でゲームを開始。プロローグの問題はお手付き無しでクリアし、早速大学内部へと舞台が移動する。 第1ステージとなった建物内で、早速魔法石回収を開始する。とりあえず、問題難易度を確認する為、全ての女神達に1回ずつ話し掛け全員から魔法石を1個ずつ回収する。「そういえば、この声、Tri-Aceのゲームで聞いたことがあるような気がするな」と考えつつ、私は出題される問題に次々と答えていった。そして、気が付いた時には第1ステージは既に突破されていた。この時点で正答率は90%を超えており、使用したコインは合計2クレジット。「魔法石は12個全て回収する必要が無い」ことを知り愕然とした(間違って12個全部集めていた)が、それはおいといて。この調子ならば1000円で半分はクリアできるのではないかと思い、私は俄然調子に乗り出した……かに見えた。一応、私は秋葉原のとあるゲームショップの前で、NAMCOの作った子育てをテーマにしたクイズゲームで、1クレジットだけで1時間ゲームを続けたという記録を持っている(実話。ブランド物クイズで轟沈)。だから、クイズゲームにはそれなりの自信があったのである。 だが、この希望的観測は砂上の楼閣のように簡単に崩れ去ってしまう。 次のステージに進んで、ベルダンディーを相手に選んだ時、彼女から出された問題に私は絶句してしまった。
原作を知らないと答えられない問題である。無論、不正解であった。 「これは悪い冗談か?」と思って次の問題を見たのだが──
……「墨東署」? 何それ? そんな警察署って実在するのか? 自宅に帰ってからインターネットで調べてようやく分かったことであるが、この問題は藤島氏が作った『逮捕しちゃうぞ』という別のマンガから出されているようである。こちらのマンガも見たことが無いしアニメも観ていないので、当然のように不正解となる。 結局、この後にも似たような問題が出され、ベルダンディー1人を突破するのに2コインを使う羽目に陥ったのである。 ゲームの進行に伴って問題の難易度が上がること自体は別に不思議でもない。しかし、アニメやコミックに限って考えると、どうも藤島作品からの出題が多かったような気がしてならない(単なる偶然かもしれないが)。しかも、他のジャンルと違って、ここだけ「単に難しい」のではなく「重箱の隅をつつくような」問題が出されているような気がしたのである。もっとも、難しい問題といえば、理科系の問題で簡単な計算問題も出されていたが、これは他のクイズゲームでも平気でやっていたことなので、特に気にはならなかった。 その後もゲームは続いたが、気が付いた時には10枚のクレジットを全て使ってしまい、あと1問不正解でゲームオーバーという状態に陥った。しかし、「奇跡」はここで起きた。 誰だったか忘れたが、ノルマをクリアして魔法石をもらった際、一緒に「ジャンルセレクト」のカードを獲得したのである。これによって突如として事態は好転する。慎重に女神とジャンルを選択することによって、自分に得意なジャンルの問題だけを出題させることが可能になったのである。その後、10問以上連続して正解し、「これならまだまだいけるか!?」と希望的観測が胸の中で蘇った。 しかし、今度の希望的観測も簡単に打ち砕かれてしまう。 「社会科2」というジャンルを選択していたはずなのに、こんな問題が出題されたのである。
……本当に社会科なのか? 「ジャンルセレクト」ですら、他ジャンルからの出題を「防げない」ということなのか、それとも、出題者にとってはこれが「社会科」だったのか、はたまた「社会科2」が元からそんなジャンルの問題だらけだったのか──真相は闇の中である。 何にせよ、この問題が不正解だったので、めでたくゲームオーバーとなった。 とりあえずスコアランキングで9位に入っていたらしいので、名前を入れて台から離れる。そして、1階へ下りる直前にふと台のほうへ目を向けてみて、私は全てを悟ったような気がした。 デモ画面の途中に講談社のマークが表示されたのである。 これじゃアニメやコミックの出題内容が偏ってしまうわけだ……(嘆息+苦笑)。 |
(3)最後に 結局は講談社に「悪い意味で」やられてしまった感のあるゲームだった。 とりあえず、このゲームを安い金額でクリアしたければ、藤島作品のファンか講談社系のコミックの愛読者を必ず同伴させること。というか、そういった人じゃないと低金額クリアは絶対に無理である。その意味では、原作物ゲームとしての側面もしっかりと出ているようである。「元から原作のファンだけを狙って作ったのではないか」という指摘もあるが、それを受け入れてしまうと、ふらっと立ち寄って1000円を使ってしまった私の立場がなくなってしまうので、これ以上の論議は避けたいのが本音である。 それにしても、このテーマのコラムって続きはあるのだろうか……? |