注意 サブタイトルにあるように、本文章はSROM様から御投稿を頂いた『SNOW』(Windows98以降)レビューです。 ですので、背景が黄緑色となっている部分(レビュー本体)の著作権はSROM様にあります。ただし、当図書館長のほうで、一部記号文字の置き換えなど、文の意味を損ねない範囲で必要最低限の編集を行っております。 |
スタジオメビウスの発表した『SNOW』のレビューである。ネタばれ要素はあまり無いが、未プレイの方はご注意頂きたい。 スタジオメビウスと言えば、『悪夢』『絶望』などの、陵辱系ゲームで名が売れており、純愛系ゲームである『SNOW』は、間違い無く異端児である。それが理由からか、他社ソフトに比べ発売前から非常に注目されており、前人気だけならkeyのゲームにも匹敵する程のものであった。 あらすじ(アールエスケイでの『SNOW』ストーリー紹介より): 老舗旅館を経営している従姉のつぐみにバイトを頼まれ、万年雪に囲まれた村に行くことになった主人公。 しかし村について早々、落石事故に巻き込まれ瀕死の重傷を負う。 目を覚ましたとき、何故か傷も殆ど治って無事に生きていた。 その村には昔から一つの伝説があった。「天を司る龍神と恋に落ちた人間。 決してあってはならぬ神と人間の恋に怒った天は、天罰としてこの地に雪を降らし続ける」という伝説が。 その日から、主人公は見えない運命に翻弄されることになる。 主人公が過去に一度だけ訪れたことのあるこの村に伝わる、悲しい伝説が今、動き出す。 解説: 主人公「出雲彼方」の視点でストーリーを進めていくごく普通のADVで、攻略対象キャラは4人である。 攻略する順番がある程度決まっており、 1. 雪月澄乃シナリオ OR 日和川旭シナリオ 2. LEGENDシナリオ 3. 北里しぐれシナリオ 4. 若生桜花シナリオ となっている。 本作のヒロイン達には、どこかで見たような設定が多く見受けられる。特に分かりやすいのが雪月澄乃と日和川旭で、それぞれ、澄乃は『KANON』の水瀬名雪と『AIR』の神尾観鈴、旭は『KANON』の沢渡真琴を参考しているのは間違いないだろう。 ストーリーも、構成、基本設定共に、keyの2作品をかなり意識して作られているのは確実である。正直、そのまんまじゃないかと思われる部分も見受けられる。これはもはや、パクリとしか言いようがない。 ここで断っておきたいのだが、私は何も『SNOW』をパクリだから駄目な作品と言っている訳では無い。確かに、モラルという面で『SNOW』のスタッフに対して疑念は拭えないとは言え、結果としての作品が、オリジナルを超えて面白いのであれば、それなり好意的な評価を下したいと考えているのである。 ところが『SNOW』をプレイした限り、少なくともkeyの2作品を超えたと思えた部分は全く無かった。はっきり言って、比べ物にならない程にクオリティが低いと言わざるを得ない。文章、表現力、演出などADVにおいて重要な部分は、ことごとくkeyの2作品に劣っている。何の説明もされない安易な超常現象の連発(※)や、展開や設定に矛盾の多いストーリー。冗長な上大して面白くもなく、不快感すらもよおすような日常会話。ついでに、嫌いを通り越して殺意が沸くほどの電波なメインヒロイン。こんな出来の作品を、好意的に評価しろと言うのは無理である。 パクった事自体が問題なのでは無く、パクった結果の作品がオリジナル作品に遠く及んでいない事が問題なのである。 ※『KANON』では、ヒロインに降りかかった悲劇を、ろくな伏線も張らずに「奇跡」などという超常現象を用いて強引に取り除くと言った展開が見受けられる為、「安直」「陳腐」と批判される向きがあった。使いどころは微妙に違うが、簡単に言えば『SNOW』も随所でこれをやっているという事である。ただし、『SNOW』の場合は、『KANON』よりも更に露骨でかつ悪質である。 この『SNOW』という作品、ネット上での評価は実に高い。パクリ元であるkeyの2作品をプレイしていないのならともかく、それらをプレイした上で、『KANON』『AIR』を超えた作品という評価までしている方がいるのである。 いくつか挙げてみたい。 1. 『KANON』『AIR』に比べてストーリーが分かりやすい。 確かに、SNOWのストーリーに難解な部分はあまりない。『AIR』のように謎を残したような終わり方をしているのでは無く、明確なハッピーエンドとして完結させているのも確かである。 しかし、その分物語に全く深みが無い。実に薄っぺらいストーリーと言っても良い。「仏像造って魂入れず」とはまさにこの事では無いだろうか? 『AIR』から難解さと共に、ストーリーの深層部分までをも取り除いてしまった結果のようにも思える。 いずれにせよ、分かりやすいという点は否定しないが、必ずしも好意的な評価の根拠になるのかは疑問である。問題点も見事に露呈しているからだ。 2. 『KANON』『AIR』に表面上は似ているが、それらとは別の可能性、方向性を示した作品。 似ているのが表面だけというのは的を射ている。より正確に言えば、その表面部分が、『SNOW』の全てと言っても良いのだが。 また、『SNOW』にオリジナリティが全く無いとは言わないが、別の可能性や方向性を示したのかは疑問である。実際スタッフが『SNOW』を「key作品のアンチテーゼとして創ろうとした」のかは知らないが、別の可能性を示すにしても、まずは作品自体をkeyの作品と同レベルのクオリティに仕上げる必要がある。しかし『SNOW』をプレイする限り、とてもkeyの作品と比較するに値する作品に仕上がっているとは言えない。作品としてのクオリティが違い過ぎて、別の可能性や方向性など示すに至らないのである。こんな出来で、「『AIR』のアンチテーゼ」などと主張しても、負け犬の遠吠えにしかならない。 第一、そのような高い志があるのなら、表面だけとは言え、他社のゲームのパクリなどやろうとは思わないのではないだろうか? 繰り返しになるが、私はパクリという行為を完全に否定する訳では無い。 ロボットアニメの業界で、『機動戦士ガンダム』がそうであるように、感動系ADVを製作する上で、あまりにも有名なkeyの作品の影響を排するのは困難である。『KANON』『AIR』はこの系統のゲームでは、圧倒的な存在感と影響力を持っている。何らかの形で、それらの作品から引用する動きが見られても、仕方が無い事なのだろう。ただし、引用する場合でも、ユーザーにそれを気づかれないように工夫する必要がある。どんなに取り繕っても、パクリ行為が判明した時点で説得力を失うからだ。そして私が知る限りでは、『KANON』『AIR』発表以降に発売された感動系・恋愛系ADVで、それらのパクリ作品だという意見が出たのは、『SNOW』だけである。『SNOW』は、『KANON』『AIR』をプレイした人間なら、必ず気付く程に露骨な引用を行なっている。細かいディティールは言うに及ばず、作品の基本構造までもが、ことごとく似ているのである。せめてもう少し、根本的にアレンジした方が良かったのでは無いかと思うのだが。 よく、『KANON』『AIR』と比較される為、不当な評価を受けているという趣旨の意見をサイトで見かけるのだが、そもそもkeyの作品の先入観を排してプレイしようとする行為を阻害しているのは、他ならぬ『SNOW』の製作スタッフである。仮に『SNOW』が上記の理由で不当な評価を受けたとしても、その責任は間違い無くスタッフにあるのだ。一部で『KANON』と比較されて不当な評価な受けている『AIR』とはまるで意味合いが違うのである。 そろそろ私の意見をまとめたい。 結論: keyの作品のストーリー、設定をろくに加工もせずに垂れ流し、 しかもそれらの作品と比肩しうるだけのクオリティに高めるまでにも至らず、 単なる劣化コピーと成り果てた問題作。 完全な批判レビューになってしまったが、全て私の主観評価である事をご理解頂きたい。 また、『KANON』『AIR』をプレイしていない方が『SNOW』をプレイすれば、恐らくかなり高い評価を付ける事が可能である事は言うまでもないだろう(とはいえ、その条件に該当する方がどのくらいいるのかは定かでは無い。サイトでのレビューを検索する限りでは、ごくわずかの様に思えた)。keyの2作品には遠く及ばないとは言え、1作品として、『SNOW』がある程度の水準のクオリティを持っている事は私も認めている。どちらにせよ、本作を客観的に良作か駄作かを判断するのは非常に難しい。単純な好き嫌いだけで無く、プレイヤー側の条件によって大分評価が左右されるからである。 補足1:「橘 芽依子」 攻略対象キャラでは無いが、『SNOW』における一番の人気キャラクターと言って良いだろう。あまりにも人気が出た為、彼女をメインヒロインにした続編が発売されている。確かに、彼女は『KANON』『AIR』の両作品に、元となったキャラクターが見当たらない事から、『SNOW』スタッフオリジナルと言っても良いし、彼女のおかげで少し日常会話に面白みが出てきているようにも思える。『SNOW』が全体的に好意的に評価されている大きな理由の1つなのではないだろうか? 補足2:「雪月 澄乃」 『SNOW』のメインヒロインである。彼女は、その性格、言動など、かなりの部分をkey作品のヒロイン達からの引用によって形成されているように思える。keyのヒロインに良く見られる「純真無垢な性格」を、本格的な精神障害者の域まで達する程に徹底された感がある。 彼女で印象に残った点を挙げてみると、 1. 人を疑う事を知らない、純真無垢な性格。 2. あんまんが好物(というより主食)。 なおOPでの彼女の台詞に、「あんまんは命の源だよ」とある。 3. 口癖として「えうー」「〜だよ」が頻繁に使われる。 4. 運動神経ゼロで、無意味に良く転ぶ。 5. やたらと泣く。 6. 幼年時期の、ウサギ(だと思われる)の気ぐるみを着た姿。おまけに、幼年期の彼女は言語不明瞭のようである。 これまで嫌いになったキャラクターはいくらでもいたが、殺意が湧いたのは初めてである。サイト上で『SNOW』のレビューを眺める限りでも、さすがに彼女については「狙いすぎ」という評価を下していたものが多かったように思う。ある意味、『SNOW』という作品の本質を良く表したキャラクターではないだろうか? |