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2001年9月の図書館長日誌

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  • 2001年09月29日23時00分36秒
    考古学会存亡の危機・再来

    ここ数日の間は、『君が望む永遠』レビュー執筆後の疲労で、
    図書館関連の記事を更新するだけの体力が残っていませんでした。
    で、今日になって復帰というわけなのですが、復帰早々とても嫌な感じのニュースが飛び込んできました。
    当図書館では日誌上にて扱ったことのある遺跡捏造疑惑の続報なんですが……


    関東など複数の遺跡でも発掘ねつ造=東北旧石器研の元副理事長が特別委に示唆/9月29日12時9分更新(読売)
    【抜粋】

    東北旧石器文化研究所の前副理事長による旧石器発掘ねつ造問題で、
    日本考古学協会の前・中期旧石器問題調査研究特別委員会(委員長・戸沢充則明治大教授)は9月29日までに、
    前副理事長から新たに「20数か所の遺跡で捏造行為を行った」との証言を得た。
    同委員会などによると、前副理事長が新たに捏造を認めたのは、北海道清水町の下美蔓西(しもびまんにし)遺跡や
    宮城県色麻(しかま)町の中島山遺跡など、北海道・東北を中心に20数か所。
    同委員会では新たに捏造を認めた遺跡に関係した研究者らに、発見時の状況や出土した石器の状態など、
    詳細な報告を求め、慎重に裏付け調査を進めている。
    なお、長年にわたった前期旧石器存否論争に決着をつけたとされる宮城県岩出山町の座散乱木(ざざらぎ)遺跡(国史跡)や
    同県古川市の馬場壇A遺跡についても、捏造だった可能性があるとの見解が出されている。



    このニュースの中で特に問題となるのが、座散乱木と馬場壇Aという2つの遺跡なんですが、
    そのことを理解する為には、日本の石器時代の歴史に軽く目を通しておく必要があります。

    1946年、群馬県の岩宿という場所から黒曜石の石器が発見され、
    後の研究によってこれが旧石器時代の物であることが判明してから、
    日本には「旧石器時代が存在した」というのが定説になりました。
    その後、日本各地で旧石器時代の遺構や石器などが発見されたのですが、
    「日本の旧石器時代はいつ頃始まったのか」という疑問は、どれだけ石器が見つかっても解決されませんでした。
    1960年代からは、日本の旧石器時代は「前期旧石器時代(3万年以上前)」後期旧石器時代の2つに分けられ、
    このうち「前期旧石器時代が日本に存在するか」という点について大きな論争が沸き起こっていたのです。

    そんな中、問題の研究者が1981年に座散乱木遺跡で約42000年前の地層から石器を「発見」し、
    その3年後には馬場壇A遺跡で約170000年前の地層から石器を「発掘」。
    これによって、「日本にも前期旧石器時代は存在する」という説が定説になりました。
    その後も、同氏はより古い年代の遺跡で様々な石器を「発見」、日本における先史時代の「歴史」を塗り替えていったのです。
    中には、「同じ石を2つに割って作られた石器が、宮城と山形という離れた場所の遺跡で見つかった」こともあるほど。
    こうして、氏の考古学者としての名声は高まり、「ゴッドハンド」という異名が付けられるほどまでになったのです。

    ところが、この2つの遺跡についても捏造疑惑が持ち上がったのですから、ただ事ではありません。
    ここ20年近くの旧石器時代の研究は、座散乱木遺跡や馬場壇A遺跡での「発見」が前提にあったと言っても良いでしょう。
    つまり、今回の捏造発覚によって、
    ここ20年間にわたる石器時代に関する論議・考察・研究の大半が水泡に帰す可能性もあるのです。
    この件に関し、北海道の総進不動坂遺跡の再発掘調査団長だった吉崎昌一・札幌国際大教授は
    「問題の研究者が関わった80年代以降の遺跡は皆疑わしいと言わざるを得ない。
    すべてご破算としたうえで新たな研究成果を積み上げていくしかない」
    と語っています。

    しかし、ニュースを聞いて唖然としたのが捏造疑惑の根拠となった検証結果。
    9月23日に多賀城市の東北歴史博物館で開かれた日本考古学協会と県考古学会の合同検証会で、
    参加者の中からこんな発言が飛び出したんです。

    「(馬場壇遺跡で発見された石器は)13万年前の地層から発見されているのに、
    縄文時代の技術とされる『加熱処理』(※)の形跡が見られる」


    ※石材に熱を加えると、成分の再結晶化を促し、石をはがれやすくする効果がある。
    加熱して作られた石器は、剥離面に光沢があるなどの特徴があり、
    国内では縄文、海外でも18000年前の石器などから見られる傾向という。


    1984年当時に加熱処理の事実が日本の考古学会で既知のものとなっていたのかどうか、
    考古学会のアウトサイダーである私には分かりません。
    しかし、もしも既に知られていたとしたら、この事実を見過ごし問題の遺跡に対して
    十分な検証を行わなかった石器時代を研究する考古学者達は17年間一体何をしていたというのでしょう?

    一連の騒動によって、日本の考古学会──特に前期石器時代の研究に対する信頼は致命的な打撃を受けるでしょう。
    次の教科書検定に向けて教科書を執筆している研究者にとっても気が気でないはずです。
    「見つけた者勝ち」だった日本の考古学会に、学術的な検証手段が導入された点が唯一の救いかもしれませんが、
    そんなものは本来、最初からちゃんと用意されていなければならないんです。

    一介の歴史マニアとしては、これほど不愉快なニュースはありません。
    (石器時代には興味が無かったとはいえ、これはあまりにひどすぎます)


    なお、問題の研究者が前副理事長を務めていた東北旧石器文化研究所は、
    前副理事長が発掘に関与した遺跡について日本考古学協会特別委員会の再調査の報告書がまとまり次第
    研究所を解散する運びとなっているようです。

  • 2001年09月15日23時00分18秒
    一方その頃、世界のどこかで

    今週のニュース番組は、アメリカで発生した同時多発テロで多数の時間が割かれていました。
    当然、この他にも、世界各地では様々な出来事が発生していたのですが、
    テロのニュースで殆ど全てが吹っ飛んでしまい、テロ以外に世界(そして日本)で何が起きていたのか
    殆ど分からなくなってしまったという、非常に困った事態に陥っています。
    そこで、今日はテロ発生後に「テロ以外で」発生したニュースをフォローしてみたいと思います。
    特に重要と思われるニュースが2件ありましたので、赤色でマークしておきました。

    ●国の債務超過、最大806兆円
    財務省は9月14日、2000年3月末時点における国の資産・負債の状況を示した貸借対照表(バランスシート)を発表。
    それによると、負債は公的年金の算出方法次第で最大806兆円に膨らむことが判明。
    最善のケースでも負債超過状態に陥っているとのこと。

    ●法務省、フーリガン対策で入管法改正へ
    法務省は9月14日、来年5月に日本と韓国で開催されるサッカー2002年ワールドカップのフーリガン対策として、
    出入国管理法を改正する方針を固めた。来春の施行を念頭に、9月27日に召集予定の臨時国会への法案提出を目指す。

    ●連合が路線変更? 「民主党基軸」の政治方針を見直しへ
    連合は9月13日の中央執行委員会で、10月の定期大会に「民主党基軸」との政治方針見直しを提案することを決定。
    今年度補正予算編成に向けて、雇用対策で自民、保守両党の与党とも協議すると見られる。

    ●マイカル、民事再生法申請
    経営再建中だった大手スーパー、マイカルは9月14日、自主再建を断念し東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
    主力取引銀行の第一勧業銀行が支援の打ち切りを決めたことによる措置と見られる。
    負債総額はグループ全体で1兆7428億円。
    マイカルの各店舗は、15日も通常通りの営業を行っている。


    民事再生法適用申請の直前にマイカル社長を解任された四方修氏(元警察官僚)が読売新聞と行った単独会見によると、
    当初は会社更生法を使った再建計画を進めており、9月15日にマスコミに発表する予定だったらしい。
    ところが、14日に行われた臨時取締役会の冒頭、取締役だった山下幸三氏(現社長)が
    「こうなったのは四方社長の責任だ」として、緊急に四方氏と第一勧業銀行出身の菅原敏行常務の解任動議を提出、
    賛成6、反対2、棄権1で動議が可決された。
    そのうえで、生え抜きの山下氏が新社長に就任、民事再生法の申請を決めたとのこと。
    生え抜き社員のクーデターによって、四方氏の再建計画は葬られた格好となった。
    (図書館長注:民事再生法による会社再建では、現経営陣が引き続き経営に当たることが可能。
    新社長らがクーデターを起こしたのもこの点を考慮したのではないかと言われています)


    ●海自練習機墜落、練習生1人が重傷、2人死亡
    9月14日、海上自衛隊小月教育航空群(山口県下関市)所属のT-5練習機(3人乗り)が連絡を断ち、
    翌15日午前7時半過ぎ、同市高畑の霊鷲山(りょうじゅせん)山中に墜落しているのを発見される。
    練習生1名が顔の骨を折るなど重傷。教官1名と練習生1名が死亡。

    ●千葉県で発見された狂牛病の続報/狂牛病疑惑の牛は肉骨粉になっていた
    千葉県白井市で狂牛病(牛海綿状脳症)の疑いのある牛が見つかった問題で、この牛が処理場で処分された後、
    加工場で肉骨粉にされていたことが9月14日に判明。
    問題の牛が発見されたことを発表した9月10日の会見では、農水省はこの牛は「焼却された」と発表していた。
    同省牛海綿状脳症対策本部によると、問題の牛は千葉県光町の処理場で処分された後、茨城県の業者の加工場に運ばれ、
    同加工場で牛の全身から油分を分離し、残りを肉骨粉にする「化製処理」が施された。
    なお、処理を行った業者によると、問題の牛から作られた肉骨粉は市場に出回っていないとのこと。
    農水省は14日夜、徳島県を通じ、茨城県の関連会社の保管分も含めて業者に焼却処分を指示した。
    (図書館長注:狂牛病が日本で発生する可能性については、EUなどが以前から繰り返し警告を発していました。
    牛骨粉の問題も含め、厚生労働省の対応と問題意識の低さが今後大きく問題になるでしょう)


    ●歌舞伎町ビル火災の続報/防災電源切れていた
    死者44人を出した東京都新宿区歌舞伎町の「明星56ビル」火災で、
    火災報知機や防火扉を作動させる電源のメーンスイッチが切られていたことが9月14日、関係者の話で判明。
    火災発生時にはいずれも作動せず、非常ベルも鳴らなかったことになる。

    ●鉄道総研が「乗り上がり脱線」実験施設を公開
    鉄道総合技術研究所は9月14日、鉄道車両が急カーブで低速走行した時に車輪が線路に乗り上がる
    「乗り上がり脱線」を調べる為の実験施設を報道陣に公開した。
    同施設は昨年3月の営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故を契機に造られたもの。

    ●東海から九州沿岸で潮位上昇
    東海から九州地方の太平洋沿岸の潮位が9月12日ごろから上昇し始め、
    14日には通常より15〜25cmほど上昇したことが気象庁の観測で分かった。今回の潮位上昇の原因は不明。
    15日から21日にかけては大潮にあたり、気象庁は警戒を呼びかけている。

    ●「よど号」容疑者の妻、18日帰国
    日航機「よど号」事件で、朝鮮民主主義人民共和国に渡った元赤軍派メンバーの妻(旅券法違反容疑で国際手配)に対し、
    北京の日本大使館は9月14日、日本への帰国に必要な渡航書を発給。

    ●5〜7月の豪雨を激甚災害に指定
    政府は9月10日の事務次官会議で、梅雨前線の影響で5月29日から7月18日までの間に、
    西日本を中心に大きな被害をもたらした豪雨を激甚災害に指定することを決めた。
    激甚指定により、農業施設などの災害復旧事業で国庫補助がかさ上げされる。

    ●迷走する台風16号
    今週、相次いで日本を襲来した台風15号と台風16号。
    このうち台風15号は本州を抜け温帯低気圧へと変化したが、台風16号は沖縄近海に留まったまま勢力を維持している。
    北・西・南を高気圧に挟まれていることと、海水温が高いことが台風16号の「長寿」の原因になっている。

    ●静岡空港建設の是非問う住民投票条例案を否決
    9月12日の静岡県議会臨時会で、静岡空港建設の是非を問う住民投票条例案が自民党などの反対多数で否決された。
    知事与党の公明党などが提案した修正案も否決されている。
    こりにより、同空港は2006年度開港に向け建設が継続される見通しとなった。

    ●児童殺傷事件で容疑者を起訴
    大阪教育大付属池田小学校で児童ら23人が殺傷された事件で、
    大阪地検は9月14日、宅間守容疑者(37)を殺人、殺人未遂罪などで起訴した。
    「事件時、善悪を判断して行動する能力はあった」とする精神鑑定医の報告を受け、
    同地検は完全責任能力があったと判断した。

    ●開高健賞、今年で打ち切り
    TBSブリタニカ(東京都)は9月14日、「開高健賞」を、今年限りで打ち切ると発表。
    この賞は新人、新鋭作家の優れた文学作品を対象に実施してきた。

    ●アニメ映画『千と千尋の神隠し』、興行収入記録を更新
    公開中のアニメーション映画『千と千尋の神隠し』の興行収入が公開56日目の13日までに
    193億5430万5630円に達し、過去最高だった『もののけ姫』の193億円を越え、日本記録を更新。
    『千と千尋…』は9月10日に観客動員数で『もののけ姫』の動員記録を更新したばかりだった。

    ●「ゲームキューブ」発売
    任天堂は9月14日午前、次世代の家庭用ゲーム機「ゲームキューブ」を全国一斉に発売した。
    同社としてはNINTENDO64以来約5年ぶりの新型機売り出し。価格は25000円。
    ところが、何千人ものファンが並んだこれまでのゲーム機発売に比べ行列は少なかった模様。
    新宿に同日オープンした某電器量販店では、午前中に山積み状態だったゲームキューブの姿が目撃されている。
    本格的に売れるのは人気タイトルが出そろうクリスマス以降と見られている。

    ●東ティモールで初の制憲議会が開会され、88人が新憲法を審議
    東ティモールで9月15日、初の制憲議会が開会。先月末に実施された同議会選で選出された議員88人が出席。
    来年の独立の為の新憲法を審議する。

    ●アフガンの反タリバン連合のマスード将軍が死亡
    死亡説・生存説が乱れ飛んでいた反タリバン連合のマスード将軍だが、
    パキスタンに拠点を置くアフガン・イスラミック・プレス(AIP)やフランスのベドリヌ外相などが
    「マスード将軍が死亡した」と発表。反タリバン連合側も死亡を認めた。
    マスード将軍は9月9日の自爆テロで重傷を負い、その容態に注目が集まっていた。

    ●中国の死刑方法が薬殺へ
    中国の最高人民法院(最高裁)は、死刑執行方法を従来の銃殺から薬物注射へ全面的に変更することを決定。

    ●中国山西省の炭鉱で爆発、少なくとも23人死亡
    中国北部山西省の大同にある炭鉱で9月13日、ガス爆発があり、少なくとも23人が死亡した。
    中国国内における炭鉱事故による死者は今年に入ってから既に約3000人を突破。

    ●日本の貨物船がリオデジャネイロ沖で沈没
    ブラジルのエスタド通信などによると、日本の鉱石運搬船「神川丸」が9月13日、リオデジャネイロ沖合で沈没。
    荷主の住友金属工業(東京)によると、乗組員23人は全員救助された。乗組員に日本人はいないという。

    ●英国保守党、新党首にダンカンスミス氏選出
    英国の保守党は9月13日、イアン・ダンカンスミス下院議員(47)を新党首に選出した。
    ダンカンスミス氏は党内右派で欧州統合に懐疑的。また、同氏のな大祖母は日本人。


    ここまでニュースを集めた末に気付いたこと。
    今週中に日記に書き込まれたデータ量……約30キロバイト。
    ぐは(T_T)
    来週は少し量を減らすつもりです。
    ただし、アメリカが軍事行動を起こした場合にはその限りではありません(我ながら嫌な注釈だな……)。

  • 2001年09月13日23時07分09秒
    戦争の「21世紀スタイル」

    どうやら、複数の個所で「テロの件はこちらでどうぞ」という御案内がされているらしいので、
    今日まではこのニュースを追っ掛けていきたいと思います。
    明日以降の話題がどうなるかは未定ですが……。


    さて、現地時間9月11日朝に発生したアメリカでの同時多発テロ──事実上の戦争ですが、
    テロの仕掛人が少しずつ明らかになりつつあります。
    アメリカがテロの黒幕として睨んでいる人間の名前は「オサマ・ビン・ラディン」。
    サウジアラビアの豪商に生まれ、アフガン内戦当時に反ソ連の義勇兵として加わり頭角を現しました。
    その後、湾岸戦争を機に反米主義者へ転向しテロ活動を開始(彼は金を出してテロリストを養成する人間ですが)、
    1993年に世界貿易センタービルの地下駐車場を爆破して6人を殺したり、
    1998年にケニアやタンザニアでアメリカ大使館を爆破して200人以上を殺したりした事件に
    深く関与していたと言われています。
    今ではアフガニスタンのイスラム原理主義勢力・タリバン政権の庇護下にあり、
    山奥でイスラム原理主義に陶酔し切った人間をテロリストに仕立て上げる毎日だとか。

    現時点ではラディン氏が犯人なのかどうか不明な点があります。
    実行犯やその支援者達は特定されつつあるようですが、彼らとラディン氏に繋がりがあったのかは明らかにされていません。
    また、ラディン氏とその一派だけで今回の犯行を成し遂げられたのかどうかも疑問でして、テロ問題の専門家などからは
    「他の過激派テロ組織や別の国家も今回の事件に関わっているのではないか」との指摘も上がっています。

    しかし、アメリカは今のところ、ラディン氏の一派を最有力容疑者として見なしているようでして、
    タリバンに対して強い影響力を持つ隣国のパキスタン政府と接触を図り始めています。
    必要とあらばタリバンとラディン一派に対して報復攻撃を行うつもりでいるのですから、
    隣国パキスタンの協力は是が非でも欲しいところというわけです。
    アメリカはこの他にも、ロシアや中国、更にはイスラム諸国などとも交渉を重ね、
    国連の安全保障理事会をも巻き込んで巨大な対テロ包囲網を築こうと動き始めています。
    パウエル米国務長官も9月12日の記者会見で
    「あらゆるテロリズムに対抗する世界規模の連合を構築することが米国の優先課題だ」と述べ、
    各国に呼びかけてテロ包囲網を作り上げる方針を明らかにしています。
    最も対応が素早かったのはNATOでして、9月12日の大使級理事会で、
    1949年に締結されたNATO設立条約第5条に基き、アメリカからの要請があれば「集団的自衛権」を発動し、
    NATO加盟国全てに報復攻撃の権利を与えることで合意に至りました。
    旧ソ連軍の戦車部隊相手には1回も使われなかった集団的自衛権が、
    条約締結後から52年経った今、テロリスト相手に発動されることになったのです。
    この条約を起草した人々は、こんなことになるとは思っていなかったのではないでしょうか。

    ※ちなみに、NATOは1991年に採択された「戦略概念」によって、
    「大量破壊兵器の拡散やテロなどもNATOが対応すべき脅威である」と考えるようになっています。
    対応が身軽だったのも、この「前準備」があったからこそと言えるかもしれません。


    もしも、パウエル国務長官らの努力が身を結び、巨大なテロ包囲網が成立したならば、
    これは1991年の湾岸戦争で実現した多国籍軍の再来と呼ぶことができるでしょう。
    そして、この「多国籍軍」は同時に、我々に対して、21世紀における新しい戦争の姿を見せることになるかもしれません。
    それは──

    (1)テロは「全人類に対する戦争」と見なされる
    (2)テロリストという不特定の敵に対して、あらゆる国家が共同戦線を張る
    (3)テロリストを支援・擁護する国家はテロリストと同類(即ち人類の敵)と認定され、
    テロリストと同じように諸国からの攻撃・殲滅のターゲットになり得る
    (4)この戦いにはできる限り多くの国が協力を求められる


    ──という、20世紀の戦争では見られなかった新しい対立構図に基いた戦いになるでしょう。
    この新しい対立構図が21世紀のトレンドになるかどうかは不透明ですが、
    「戦争は国と国がやるものだ」という価値観は多少なりとも修正を求められるのではないでしょうか。


    とある本の中に「テロリズムは歴史を変えられない」という言葉がありました。
    しかし、今回ばかりはテロによって歴史が変わってしまったようです。
    もっとも、テロリストが全く望んでいなかった方向に変わってしまったらしいのですが……。

  • 2001年09月12日14時33分07秒(本日2回目)
    ニューヨークの災厄

    開戦事件発生から18時間半が経過しましたが、現地の混乱が大体収まり、
    事態はおおよそ沈静化に向かいつつあります。
    とりあえず、現時点で判明している情報をここで再整理してみましょう。

    ●攻撃を受けたのは世界貿易センタービルと国防総省の2ヵ所。
    この他にもキャンプデービッドや連邦議会議事堂も攻撃されたという情報が飛び交っていたが、誤報だったらしい。
    ●攻撃は航空機による自爆攻撃。航空機はハイジャックによって調達されたものであり、
    その大半が離陸直後にハイジャックされたものだったため燃料を満載した状態だった。
    機内からの連絡によると、犯人グループは3〜5人1組で行動し、ナイフで武装していた。
    ハイジャックされた後に墜落した航空機は合計4機。乗員・乗客250人余りは全員死亡。
    ●航空機による体当たりを食らった世界貿易センタービルは完全に倒壊。
    生存者の救出作業に当たっていた消防隊員と警察官(合計400人以上?)も倒壊に巻き込まれ行方不明。
    この他にも、同ビル内にある保険会社の1つからは「社員700人前後が消息不明」という情報も届いている。
    国防総省からは「死者800人」という報道が流れている。
    ●アメリカ軍は核戦争並みの高い警備態勢──事実上の戦時体制に突入。
    民間航空機の飛行禁止、国境や証券取引所の閉鎖などの対策を講じている。
    ●攻撃の直後、アメリカをはじめとする各国は次々とテロを非難する声明を発表。
    イスラエルは米国と連帯するとして12日を「追悼の日」とすることを宣言。
    また、各国大使館から大使館員などを引き上げると発表。
    ●パレスチナ解放民主戦線、タリバン、ハマスなど「犯人と名指しされている人々」は一斉に犯行を否定。
    タリバン政権のザイーフ駐パキスタン大使は11日夜イスラマバードで記者会見し、
    米政府に対し、いかなる報復手段を取る前にも適切な捜査を実施するよう求めた。
    ただし、パレスチナなど中東からは、今回の自爆テロの一報を聞き祝砲を撃っている人々の映像も届いている。
    ●パレスチナのイスラム原理主義組織・イスラム聖戦の幹部は11日、今回の攻撃について
    「中東問題での米国のイスラエル寄りの姿勢が、今回のテロ攻撃を招き寄せた」との考えを示した。
    ●今回の攻撃に伴い、ニューヨーク証券取引所は当面閉鎖されることが決定された。
    また、ニューヨーク市で予定されていた予備選も延期。
    現地時間11日に予定されていたメジャーリーグも全試合中止の措置が取られている。
    ディズニーランドも臨時休業だとか。
    ●英野党・保守党のヘイグ党首は11日、自らの後任を選ぶ党首選挙の結果発表を13日に延期すると発表。
    当初は12日夕に発表される予定だった。米国で起きた連続テロの犠牲者を追悼する為。
    ●ヨーロッパやアジアの株式市場は軒並み暴落。
    ロンドンFT100種総合株価指数は5.72%安、フランクフルト・クセトラDAXは8.49%安、パリCAC指数は7.39%安。
    特に下落率が大きかったのは欧州主要航空会社の株で、ブリティッシュ・エアウェイズが前日終値比26.9%安で取引終了、
    ルフトハンザ航空が一時24.9%安となった。また、エールフランス、アリタリア航空なども軒並み急落。
    ドイツでは証券取引所に対する爆破予告も行われ、日本時間の9月12日午前2時15分に取引を停止。
    ●ロンドンやヨハネスブルクではニューヨークで発生したテロ攻撃の報を受けてパニック買いが殺到、
    各非鉄金属相場が軒並み急騰している。
    ●東京証券取引所では午前の立会いを30分遅らせ、呼値の制限値幅を縮小させる臨時措置を講じた上で取引開始したが、
    平均株価は一気に10000円の大台を割れ込み、TOPIXも1000を下回った。
    台湾、タイ、マレーシアの株式市場は全日閉鎖。韓国の市場も午前中閉鎖の措置が取られている。
    ●石油輸出国機構(OPEC)のロドリゲス事務局長は、テロリズムとみられる米国への一連の攻撃を受け、
    「OPECは石油供給、および価格の安定を確かなものにする決意がある」と発言。
    ただし、原油相場の急騰を懸念する声は少なくない。ヨーロッパのアナリストの中からは、
    「1バレル60ドル」という悪夢のような言葉すら飛び出している。
    ●アフガニスタンの首都カブールでロケットによる大規模な攻撃が行われた。
    これはアメリカのテロとは直接関係は無く、反タリバン連合軍最高司令官のマスード将軍(49)が
    9月9日に爆弾テロによる攻撃を受けたことに対する報復攻撃と見られる。
    マスード将軍の安否だが、西側情報筋やタス通信などは「マスード将軍は10日に死亡した」と報道している。
    ●FBIがハイジャックに使われた航空機の乗客名簿から割り出した情報を元に、
    フロリダ州で家宅捜索を始めようとしている模様。
    ●日本時間で9月12日午後1時30分現在、現地で行方不明となっている日本人は18人。
    このうち1人は自爆テロに使われた航空機の乗客。
    観光旅行客は全員無事。ただし、外国企業に勤務している日本人がどれだけいたかがまだ分からず、
    日本人の犠牲者は更に増える可能性あり。

    事前に「テロが行われるらしい」という情報が情報機関に伝わっていたらしいという未確認情報もあります。
    ただ、航空機による自爆テロの予告を知っていたとしても、実際に防げていたかどうかは微妙。
    ビルの屋上にロケット砲のようなものを設置して飛行機を撃ち落すわけは行きませんし、
    撃ち落した場合には飛行機の破片をマンハッタン全体に撒き散らすことになります。
    先手を打ってテロリストのアジトを襲撃することぐらいしか対応策が無いのですが、
    今回はそこまで詳しい情報を掴めていなかったようです(まさか「泳がせていた最中」ってことは無いよなあ)。

    新たなるテロの発生というニュースが届いていない現在、目下の関心は、

    ●瓦礫となった世界貿易センタービルの下にどれだけの生存者がいるのか
    ●犯人は誰だったのか
    ●アメリカは報復で核兵器を使うのか


    ……といった事柄に移りつつあるようです。
    また、日本国内では、今回のテロ──というか奇襲攻撃を受け、有事法制の検討を促す声も上がりつつあります。
    やっとと言うかようやくと言うか……いつものことながら、日本の腰の重さには溜息をつくばかりです。
    本当ならば、地下鉄サリン事件や不審船事件の後にやっておくべきことだったんですけどねえ。

    続報が入りましたら、また続けて日誌上にてお知らせします。

  • 2001年09月12日02時38分50秒
    小説で予見された神風特攻

    世界貿易センタービルという建物がニューヨークにありました。
    この建物はアメリカ経済の象徴であり、ニューヨークの企業活動の中心地でした。
    地下駐車場に爆弾を仕掛けられ死者を出したこともありました。
    そして、またもやテロ攻撃を受けたのですが、今回の攻撃は並大抵のものではありませんでした。
    今回のテロ攻撃は主として「航空機による特攻」
    世界貿易センタービルは「ツインタワー」として知られていたのですが、
    時間差をおいて2本とも倒壊してしまいました。また、同時に国防総省などにも攻撃が加えられました。
    現在、アメリカは全面核戦争並みの防衛体制を敷き、
    全ての空港を閉鎖するなどあらゆる手段を講じて事件の対処に当たっています。
    ひょっとしたら戒厳令を敷くことになるかもしれません。

    同ビル内に支店を構えている日本企業も当然事故に巻き込まれてしまったわけでして、
    各社は全力を挙げて社員・行員の安否の確認を急いでいるところです。

    もしも、事件の発生が2時間以上後にずれていたとしたら、観光客が事件に巻き込まれて
    死者の数が倍以上に膨れ上がっていた可能性もあるわけです。
    ニューヨーカーにとっては悪夢の再来になってしまいました。
    事件の詳細は後日改めてお伝えしますが、
    突っ込んだ飛行機がボーイング767・747(777・757?)など
    大型の航空機ばかりだったため死者4桁は間違い無いようで、
    下手すると死者総数が10000人以上という大惨事になりそうです。

    事件の犯人ですが、アラブ首長国連邦のアブダビテレビによると、
    パレスチナ解放民主戦線が犯行声明を出したとのこと。
    この団体はパレスチナ解放機構の非主流派で、当初からイスラエルとの和平に反対していました。
    動機という点では十分に「犯人」の要件を満たしている団体なのですが、当のパレスチナ解放民主戦線は犯行を否定。
    犯人が判明するにはもう少し時間が掛かりそうですが、犯人が判明した時には、
    ありとあらゆる手段を講じた報復攻撃が行われることでしょう。
    どこかの国がバックアップしていた場合には、即座に戦線布告という展開になりそうです。
    下手したら中性子爆弾や小型の核分裂爆弾も使いかねないので、この先どうなるか全く分からなくなりました。
    7月頃から「8月危機」や「9月危機」という単語は飛び交っていたのですが、
    危機が政治的・軍事的なものだったことを予見できた人間は殆どいなかったでしょう。


    さて、今回のテロ攻撃ですが、私の知る限り元ネタがあったような気がします。
    私が知っている「原典」はトム・クランシーの『日米開戦』(原題“DEBT OF HONOR”)という小説なんですが、
    この小説では両院議員総会が行われていた最中の議事堂に、
    パイロット1人だけを乗せた日本航空の旅客機が突っ込み、たまたま現場に居合わせていなかったごく少数の議員と、
    時の副大統領・商務長官・内務長官を除き、政府高官がほぼ全員死亡するという事件が発生しています
    (この時の副大統領が同氏の小説における主人公ジャック・ライアンだったりしますが)。

    ワシントンから100マイル以内に、アンドルース空軍基地、ラングレー空軍基地、
    パタクセント・リバー海軍航空隊テスト・センター、オシアナ海軍航空隊基地があり、
    そこには多数の戦闘機が配置されているが、戦闘機に首都上空を守らせるというアイディアは
    誰の頭にも思い浮かばなかったらしい。

    ──トム・クランシー著、田村源二訳『日米開戦』(原題“DEBT OF HONOR”より)


    そりゃ誰でも考えませんわな(ぉ

    ちなみに、この作品が発表されたのは事件から7年も前のことである1994年。
    アメリカの保守派論客の1人として、同国の安全保障やテロ問題に警鐘を鳴らし続けていたクランシー氏の
    「先見の明」が最悪の形で証明されてしまったことになりました。
    おそらく、同氏もこのニュースを苦々しく眺めていることでしょう。


    いずれにせよ、2001年9月11日という日付は
    「アメリカとどこかの国が本格的な戦争を始めることになった日」
    として世界史に刻まれることになってしまったようです。
    テロとは犯罪であると同時に戦争であるのですから。


    あと、日本もそれなりの心構えが必要になりますよ。
    米軍基地が国内に山ほどありますし、犯人がイスラム過激派だと確定されたわけではありませんから。
    それに上でも書きましたがテロは犯罪であると同時に戦争の一部。
    犯人が確定したら当然アメリカによる全面戦争が行われることでしょうから、
    その時に備え軍事物資や補給基地などの準備も必要になります。
    日本の皆さん、準備は大丈夫ですか?

  • 2001年09月11日00時01分12秒
    追加されたプロフィールの追加

    以前、プロフィール欄に追加した100の質問ですが、別の場所から追加で14の質問が届きました。
    というわけで、早速回答を。

    Q1A.今までやった中で、いろいろあるけどやっぱりこれが一番好きだ、というゲームは?
    ●『FINAL FANTASY TACTICS』
    (BGM視聴を含めると700時間は使っているはず)

    Q2A.今までやった中で、一番魅力的だったゲームキャラクターは?
    ●ランスロット・タルタロス、アーロン、ジェーン・マックスウェル、ブラッド・エヴァンス
    (出典は順に『Tactics Ogre』『FINAL FANTASY X』『WILD ARMS(1)』『WILD ARMS 2nd IGNITION』。
    その他、『FFVII』に登場したジュノン要塞の神羅兵御一行様と『Tales of Phantasia』のアーチェ・クラインも捨て難い。
    PCゲームのキャラでここに名前を載せられそうな人物は現在のところ皆無)

    Q3A.ゲームにのめりこむキッカケになったゲームは?
    ●FC版『信長の野望』

    Q4A.持っているゲーム機を教えてください
    ●FC、SFC、PS、PC(PS2、DCは一部のソフトのみ所持)

    Q5A.現在、一番稼働率が高いゲーム機は?
    ●PS

    Q6A.一番好きなゲーム機は?
    ●SFC

    Q7A.好きなゲームジャンルは?(例:シューティング)
    ●RPG及びSLG

    Q8A.一番好きなゲーム音楽は、なんと云うゲームのどんな曲?
    ●Sacrifice Part Three ←『聖剣伝説3』/ラストバトル後半
    ●KING OF KINGS ←SFC版『魔装機神』/闘技場?
    ●トイレに行けない夜 ←『Tactics Ogre』/死者の宮殿
    ●The Castle ←『FINAL FANTASY VIII』/ラストダンジョン
    ●時の見る夢 ←『CHRONO CROSS』/オープニングデモ
    ●天空の扉 ←『VALKYRIE PROFILE』/フィールド
    ●Todsengel ←『SaGa Frontier 2』/ラストバトル後半
    (1つに絞れなんて無理ですがな。聞いたことのある曲の数が2000超えているのに)

    Q9A.好きなRPGの呪文は?(例:ロクトフェイト)
    ●【ルーラ】

    Q10A.これだけはどうしても許せない!というゲームソフトがあれば教えてください
    ●『新スーパーロボット大戦』とDC版『こみっくパーティー』
    (前者は操作性の悪さ、後者は事実上のデバッグ放棄という致命的な問題点があった)

    Q11A.一番最近買ったゲームソフトは何ですか
    ●秘密(ぉ

    Q12A.このゲームで勝負をすれば絶対負けねぇ!という自信のあるソフトがあれば教えてください
    ●無し
    (私の兄は『FFVII』のスノーボードを限界まで極めていたのだが……)

    Q13A.色々な意味で、今までで一番カネをつぎ込んだゲームは?
    ●『FINAL FANTASY VII』
    (このソフトと同時にPSを購入。ハードに対する投資を抜いても18000円弱を消費)

    Q14A.エンディングが美しくて思わず何度も見てしまったゲームがあれば教えてください
    ●『FINAL FANTASY VI』
    (繰り返してプレーした回数はこのゲームが最多。ラスボスが弱いからエンディングも楽に見れるし)

    こうやって見ると、私の中に占めるパソコンゲームの割合ってかなり小さいんだなあ。
    別の意味では、これが「普通」なのかもしれないけど。


    ちなみに、今日は台風対策の為に徹夜となります(TT_TT)

  • 2001年09月10日05時46分27秒
    清算はこれで終わらず?

    先月31日から昨日まで、南アフリカ共和国のダーバンという港町(というよりも工業都市)で、
    「人種差別撤廃会議」というイベントが行われていました。
    イベントの中身は、タイトル通り世界各地に存在する人種差別問題を論議し撤廃を求めていくというものでした。

    この会議では、イスラエルの扱いを巡って冒頭からかなり深刻な対立が発生していました。
    アラブ諸国の代表らが「パレスチナ問題は人種差別問題の1つでもある」と発言し、
    イスラエルを人種差別主義国家として非難する文言を最終宣言に盛り込むよう要求、
    9月3日にアメリカとイスラエルの代表団が引き上げてしまうという異常事態へと発展してしまったのです。
    引き上げに際し、イスラエルのペレス外相はイスラエルで(イスラエルは事務方の人間を数人派遣しただけ)
    「ダーバンで奇怪なショーが演じられていることはきわめて遺憾」とのコメントを残しています。
    ナチス政権下で露骨な人種差別と弾圧を受けたユダヤ人(の作った国)が、
    その人種差別を論議する国際会議の席を蹴ってしまうとは何とも皮肉な話です。
    また、アメリカは国際会議での発言力を少なからず失ってしまうことになりそうです(少なくとも人権問題の国際会議では)。
    もっとも、今回の場合、イスラエルに対して過激な決め付けを行ったアラブ諸国のほうもどうかとは思いますが。

    なお、会議ではパレスチナ住民の窮境を紹介する文言を盛り込むことで決着が図られています。

    ……とまあ、こんな感じで先行きが非常に不安定であったこの会議ですが、
    これからの歴史にも残りそうな重大な決議がいくつかなされています。以下にリストアップしますと……

    (1)先進国側が過去の奴隷貿易や植民地支配について深い遺憾の意を表明
    (2)特に奴隷貿易については「人道に対する罪」と認定
    (3)先進国などがアフリカへの経済支援策を検討
    (4)金銭的な補償までは決議されていない

    先進国側が過去の植民地支配についてここまで踏み込んだ謝罪に踏み切ったのは前例が無いこと。
    アフリカ諸国は金銭的補償を求めていましたので、この決議には満足しているわけではないのですが、
    「満足ではないが、(歴史上)初めて黒人の尊厳が認められた」(ケニア代表団関係者)と一定の評価を与えています。

    ただ、問題はここから。
    いくら先進国が「ごめんなさい」と頭を下げたところで、
    発展途上国を覆う現在の窮状──飢餓とかエイズとかマラリアとかモノカルチャー経済とか政情不安など──が
    解消されるわけでははありません。
    また、これらの地域では初等教育が不十分である国が非常に多く、このことがエイズなどの蔓延の一因にもなっています
    (某国の大統領がエイズに関する根拠の無い迷信を公言していたこともあったらしい)。
    これらの問題を解決する為には、当然金と法整備が必要になるわけですが、
    このステップに来ると、先進国の態度が今までとは異なり冷淡なものへと変化してしまいます。
    エイズ治療薬の特許問題はその最たる例ですし。

    国際会議という、ある意味「口先」だけの清算だけではなく、資金援助など「実際の行動」を
    どこまで起こせるかが今後本当に重要になります。
    「過去の清算」はまだ完了していないのです。少なくとも、旧植民地の人々はそう考えているようです。
    先進国にとっては、「これでもう十分」というのが本音かもしれませんがね。大不況も間近ですし。

  • 2001年09月05日02時54分27秒
    44人の犠牲によって分かったこと

    最初に事務連絡。
    9月5日から7日までの間、私用によりインターネットから離れます。
    そのため、メールなどに対するレスが遅れてしまいますが、予め御了承下さい。


    さて、本日のテーマはビル火災。
    9月1日に発生した新宿歌舞伎町の雑居ビル火災では、一酸化炭素中毒などにより44人の方が命を落としました。
    現在のところ、3階に設置されているガスメーターとその周辺が火元と考えられていますが、
    果たしてこれが失火だったのか放火だったのかという点については未だに不明です。
    話を聞く限りでは、放火の可能性が若干高そうですが……。

    しかし、今回の火災で最大の問題点だったのは防火態勢の杜撰さ。
    どこが問題になっているのか、耳にした範囲でリストアップしてみますが……

    (1)屋内の階段は1ヵ所だけであり、幅が狭かった。
    その上、階段にはロッカーやタオルなどが置かれており、これが消防隊の活動を妨害することになった。
    実は、麻雀店は違法営業の店だったらしく、警察や暴力団関係者などの立ち入りを恐れ、
    普段から階段を塞ぐという「防御措置」を講じていたらしい。
    (2)3階及び4階の防火扉が開放されたままになっていた。
    荷物が置かれていたため、防火扉が閉まらなかった可能性がある。
    (3)3階及び4階の窓の一部が外装によって塞がれていた。
    3階には開くことができる窓も存在していたが、その存在を知っていたのは麻雀店の店員のみだった。
    (4)ゲーム麻雀店の天井が二重になっており、煙感知器などが作動しなかった。
    (5)消防局の査察が過去に行われた際に複数の問題点が指摘され、
    改善指示が出されていたのにもかかわらず、それに従っていなかった。

    このビルについてはこの他にも建築基準法違反の疑いが取り沙汰されているし、
    4階に設置されていたキャバクラも無許可営業だったらしい。

    結果として、3階エレベーターホールで火災が発生した時、3・4階にいた人々は「完全に」逃げ場を失ってしまったのです。
    その先に待ち受けている物が何かは説明不要。警視庁第8機動隊別館に並んだ44の遺体が全てを物語っています。

    今回の雑居ビル火災で被害が大きくなった最大の原因である防火態勢の杜撰さ。
    この問題は、今回火災の被害に遭ったビルに限った話ではないそうでして、
    火災が起きた時のことなどを考えずに、狭い廊下に大量の荷物(タオルなど)や公衆電話を置く店は珍しくありません。
    タバコの煙によって火災報知器(煙感知器)が鳴るのを恐れ、
    電源を切ったり板を被せたりする店も存在します(3階の麻雀店がまさにそうだった)。
    火災報知器が鳴ってから駆け付ける警察が恐い(非合法営業の店も少なくないようですし)からなんだそうですが……。

    また、以上のような違反を取り締まる為に実施されている消防局の査察ですが、これは事前に通告が行われます
    つまり、査察当日だけ閉店したり辺りを片付けたりすれば、何事も無かったかのように査察をやり過ごせてしまうのです
    (この種の検査が最大の効果を得る為には、事前通告を一切行わず抜き打ちで検査をしなければならないのですが……)。
    それに、現在行われている緊急の査察も効果をあげているとは言い難いです。
    査察がおこなれる日とその前後を臨時休業にした風俗店も決して少なくないそうですし。
    また、査察を受け指導も受けて問題点を改善した後、しばらく経ったら元の状態に戻ってしまうという店もあります。
    しかも、査察を行う側の人手は足りず、現場からは 「(消防法違反の店を)営業停止にするのは難しい」
    「消防法違反で警察に告発することもできるが、それで効果が上がると思えない」
    などと悲観的なコメントも聞こえてきます。

    今のところ、今回のビル火災のような災害に遭わない為の最上の策とは、
    「危険なビルや危険そうなビルには絶対に立ち入らない」ことぐらいしか無さそうです。


    最後になりましたが、亡くなられた44人の方々の御冥福をお祈り申し上げます。

  • 2001年09月04日00時23分55秒
    疲労

    日記のネタがないわけではないのですが、
    作者が疲れ気味なので、予告だけ打って今日はお休みします。

    次回は新宿で発生したビル火災に関する記事か、
    10000円割れ目前に迫った日本の株価に関する話になる予定。
    しかし、社会に関するニュースを集めようとすると暗いニュースしか集まらなかった今年の夏。
    疲れが溜まっているのは夏ばてだけが原因ではないようです。


    あと、おまけで聞いたニュース。
    イスラエルの現外相が自民党の中山太郎氏と会談して曰く
    「イスラエルで首相公選制の導入は失敗だった」。
    議会選挙では小政党のほうに票が流れやすくなり、その結果として
    首相の力が弱まり小政党の力が強まってしまう……ということらしいです。
    イスラエル議会内の宗教右派に対するあてつけかもしれませんが、
    首相公選制導入を検討中の日本にとっては、かなり気になる御意見です。



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