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2002年3月26日 23時31分17秒
政界ドラマ『再編』・第5話感想文
社民党の皆さんにとっては胃に穴が空くような1週間だったと思います。 特に、党首の土井さんは「飼い犬に手を噛まれた」ような気分を味わっていたかもしれません。
とある週刊誌が辻元清美氏の政策秘書に関連する疑惑を報じてから約1週間。
最初「疑惑は嘘を書いたものだ」と社民党は発表していたのですが、
内部調査を行ったところ、週刊誌の記事がほぼ正鵠を射ていたことが判明して事態が急変。
その後数日のゴタゴタ騒ぎを経た後、辻元氏が衆議院議員を辞職することによって、
どうやら事態が鎮静化に向かい始めたようです。
過去これまで、野党の急先鋒として鈴木宗雄氏などに対して容赦無い追及を続けていた彼女ですが、
一転して追及される側に回ることになるとは、誰も考えなかったのではないでしょうか。 私だって驚きましたよ……マジで。 氏の発言には気に入らない部分も多々ありましたが、 氏の政治家としての清廉さについては全く疑いを持っていませんでしたから。
事態がここまでこじれてしまった原因ですが、元を正せば、週刊誌の記事が公表された直後に行った記者会見で辻元氏が 「政策秘書の通帳は秘書自身が管理している」などと嘘をついてしまったことに求められます。 しかし、この嘘が発覚してから、辻元氏が議員辞職の道連れを捜そうとして 「国会で辞職勧告決議案を出して欲しい」「自分を証人喚問しろ」などと発言したため話がややこしくなりました。 更に社民党と辻元氏の連絡が上手く行かなくなったこと(これは辻元氏の側近の行動が原因らしい)や、 辻元氏が無断で3月25日の「News 23」に出演したことなどが重なり、 とうとう社民党の側がキレてしまったというわけです。
更に、「議員辞職という先例を作ると、鈴木氏や加藤紘一氏の議員辞職も不可避になる」と考えた自民党が、 遠回しながらも辻元氏に対する議員辞職に関して慎重なコメントに終始したことなども加わり、 話が一層ややこしくなってしまったのです。
私は「中途半端な保身に走ろうとしたせいで傷口を広げてしまった」という印象を受けました。 もっと早く「辞職する」と言っていれば良かったものを……。
とりあえず、辻元氏は議員を辞職したのですが、これで全部片付いたわけではありません。
今回の件に関し、複数の専門家の間から「この行為は立派な詐欺罪に相当する」という声が上がっているのです。 「政策秘書の給料を本来の目的以外に流用したのだがら、その時点で詐欺が成立するの」というのがその根拠。 こちらについては、警察・検察の反応を待つしかありません。
それにしても、今回の一件で「ワークシェアリング」という単語に
負のイメージが植え付けられることが無いといいのですが……これって考え過ぎですかね?(ぉ
その裏では、東京都を巡る大きな裁判に判決が出ています。
東京都が2000年度から導入した大手金融機関に対する外形標準課税(いわゆる「銀行税」)を巡り、
銀行18行が都と石原慎太郎知事を相手に、外形標準課税条例の無効確認や課税取り消しなどを求めた訴訟がありました。 その判決が今日出たのですが、裁判長は 「法人所得に課税すべきだったのに、業務粗利益を外形標準として課税したのは地方税法に違反する」と述べ、 都に対し、事実上の課税取り消しと初年度納付分と賠償の総額約743億円の返還支払いを命じました。 条例の無効確認の訴えは訴訟の対象にならないとして退けられています。しかし、判決では
「都はバブル崩壊という一時的な景気状況による税収減を理由に、銀行の業務粗利益へ課税したが、 銀行業の事業を適切に反映するのは法人所得であり、新たな外形標準課税をすることは許されない」 「都の主税局長は業務粗利益への課税が相当であるような誤った説明をし、 都議会の判断を誤らせるなど、重過失に近い過失があった」 「知事も(専門家の意見を無視するなど)誤った説明を看過した過失がある」 「地方自治体は法律で定める範囲内で行使できるに過ぎない」 「銀行税が法の下の平等を定めた憲法に違反するかどうかは判断するまでもない」
……といった感じで、容赦無く都の姿勢を切りまくっています。
都は判決を不服として控訴する方針です。
一般的には、石原都政に打撃を与え、 地方自治体による独自の地方税導入に「待った」を掛けることになるだろうと考えられるこの判決ですが、 少しだけ考えなければならない追加の事情があります。 今回の判決を出したのは藤山雅行さんという東京地裁の裁判官の方なんですが、
この方は、今回の外形標準課税の問題に限らず、国や地方公共団体が関わる裁判の多くで、 国に対して不利になるような判決を数多く出すことで、「その筋の関係者」では名前の知られた方。
私の知人で法務省にいる方が「藤山さんが担当判事になったら苦戦は確定」という言葉を漏らしているほど。
※良く知られた判決ですと、2001年10月3日に、東京都世田谷区内の小田急線高架化工事に関する訴訟で、 「環境影響評価の点だけ検討しても著しい過誤があった」などとして、都の事業認可申請を国が認めたことを違法と判断、 工事中の公共事業だったにもかかわらず、認可の取り消しを命じる判決を下しています(こちらも控訴中だったと思います)。
そんなわけで、早い時期から「東京都が負けるんじゃないか」という声がちらほら上がっている裁判でもありました。
ちなみに、銀行に対する外形標準課税については、大阪府に対しても東京都と同じような訴訟が提起されています。 ここでも東京都の場合と全く同じ判決が出るかどうか、 そして東京高裁がどのような判断を下すかが次の焦点に問題になるでしょう。
都の方は、高裁での勝訴に自信満々だそうです。 その自信が、地裁での担当裁判官が藤山さんだったことと無関係であるとはとても思えません(ぉ
そういうわけで、今日はニュースが騒々しい1日となりました。
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