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2002年7月の図書館長日誌

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サロニア私立図書館・玄関へ戻る日誌収蔵室で過去の記録を閲覧する

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  • 2002年7月26日 00時28分29秒
    総務省に抗う人々

    最近、新聞やインターネットのニュースで
    「住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)」という単語を聞く機会が増えました。
    聞いたことが無い人々もいると思いますので、簡単に説明しておきますと──

    ●財団法人・地方自治情報センターのを設置する
    ●同センター内に本人確認票(氏名、生年月日、性別、住所、11桁の住民票コード)を記録・保存
    ●同センター内のコンピュータサーバと地方自治体のコンピュータサーバなどを電気通信回線で連絡
    →国民の本人確認情報を自治体や政府機関が自由に利用できるようになる


    ──といった感じ。
    簡単に言ってしまえば、「全国の住民票を巨大なデータベースにまとめてしまい、
    国や地方自治体の間で自由且つ有効に活用しようではないか」という話です。
    図式化するとこんな感じになるようです。

    このサービスは7月22日から仮運用が開始され、8月5日からは正式な運用が始まることになっています。
    ところが、正式運用を直前にして、あちこちの地方自治体から無数の抗議の声が上がっています。

    ●福島県矢祭町
    「将来、情報が漏えいする可能性は十分にある」
    「個人情報保護法案ができなければ、(参加を)見合わさざるを得ない」などと述べ、
    住基ネットに当面参加しない考えを表明。同町には全国の自治体などから多数の激励メールが届いたらしい。
    ※ちなみに、同町は総務省などが進める町村合併の流れに抗って「市町村合併をしない矢祭町宣言」を発表するなど、
    総務省の政策とは大きく隔たった独自の路線を突っ走っている。

    ●佐賀県佐賀市
    住民基本台帳ネットワークシステム正式運用開始の延期を求める要望書を総務相に提出。
    理由は「個人情報の保護態勢がきちんと出来ているか疑問が残る」など。

    ●東京都国分寺市
    先に住基ネット延期稼動の要望書を提出していたが受け入れられず、ネットからの離脱を検討していることが7月24日になって判明。
    翌25日になって正式に不参加を表明した。

    ●広島県三良坂町
    6月末、「現在の体制では個人情報が外部に漏れる危険性がある」として、住基ネット運用の延期を求める意見書を提出。
    議会関係者からは「複数の市町村が離脱に動けば、三良坂町も動く可能性がある」との声も。

    ●長野県長野市
    不正アクセスなどの原因で市のシステムからデータの漏れる可能性がある場合、
    市独自の判断で住基ネットとの接続を切り離すことを盛った計画書を作成。
    曰く「住民サービスの継続に優先して、データ保護のため必要な措置を取らなければならない」

    ●高知県
    県知事・橋本大二郎さんのコメント
    「相当危険をはらんだネットワークだ」「私が市町村長ならやらない」

    ●岡山県
    県知事・石井正弘さんのコメント
    「法を作り運用するのは国であり、総務省が責任を持って運用し、説明責任を果たすべきだ。
    (現状は)説明が足りず、大きな混乱を生じている」

    これらの地方自治体の声を総合すると──

    「(色々)危なっかしくて情報を出せやしねえ」

    ──ということになります。
    実際、この声を裏付けるかのように、こんなトラブルが早速発生しています。

    ●自治体への連絡用ホームページで、住基ネットの運用やセキュリティー管理など
    一部の重要情報が外部にも容易に閲覧できる状態になっていた。
    その上、「サイトへのアクセス用パスワードは、全自治体の職員に同一のパスワードを発行」
    「閲覧するのに必要なIDとパスワードは、いずれも組織名などから容易に推測可能」
    「パスワードの更新作業無し」

    など初歩的な安全管理のミスが複数判明。

    ●横浜市など複数の自治体で、仮運用時の更新業務に支障が出た模様。

    バガボンド調査による、地方自治体サーバのセキュリティーホールの数々。


    この記事中にある「おそらく最大の“セキュリティホール”は行政のIT意識の低さ」というのが、
    住基ネットにまつわる問題の「全て」を象徴しているのかもしれません。

    行政が何か新しいことを始める際に批判の声を上げるのは、普通はNGOなんですが、
    今回は行政サービスを供給する側に立つはずの地方自治体から多数の批判が上がっています。
    これに対し、首相は「実施に向けてよく説明すれば理解してくれる思う。
    実施に向け努力していく」と平和なことを話していますが、
    住民基本台帳ネットワークの導入は法律で既に定められたことであり、
    「切断」を決断した矢祭町や国分寺市の行動は露骨な「違法行為」になってしまうんです。
    明確な罰則既定はありませんが、地方交付税交付金を差し止めてしまうなど
    間接的なペナルティーを食らうことなら当然あり得る話です。
    しかし、上出した2つの「巨大な」セキュリティーホールの話を聞く限り、
    これらの自治体が住基ネットから「逃げ出した」というのも納得できるところ。

    ……いや、正直言いますとね、私も怖いんですよ。
    巨大なセキュリティーホールが空いたまま、漏れると最もまずい個人情報が大量に飛び交うというのが。
    矢祭町や国分寺市に御住まいの方は、その意味では幸せかもしれません(爆死)
    離脱に伴う不利益も多そうですが……。

  • 2002年7月19日 23時02分17秒
    8年前の記憶

    まずは30000Hitの御礼から。
    ここ最近は日誌以外のコンテンツをあまりいじくっていないこのサイトですが、
    どうにかこうにか、ここまで続くことができました。
    当分は気長にマターリと更新を続ける日々が続きそうですが、何卒よろしくお願いします。


    さて、数日前のとくそんさんの日記中にあったコメントに関して、色々と考えるところがあったのでコメント。

    私と同じ高校のOBの方なら御存知かもしれませんが、
    以前、私はその高校の在校生・卒業生などが製作・執筆に携わる年刊誌の上で、
    日本のマスメディアを批評する記事を書き、掲載してもらったことがあります。
    受験対策に忙しかった1994年の秋頃、その年刊誌の編集者から
    「『怒り』というテーマで何か書いてくれ」という話が私のところへ伝わり、
    「どうして私が?」と少し首を捻りつつも書いたちょっとしたコラムみたいな雑文でした。
    正確な内容は忘れてしまったのですが、当時書いたテキストの中では、主として

    ●プライバシーを度外視した一部の無理な取材に対する批判
    ●マスメディアの持つ不自然なまで大きな影響力に対する懸念


    ……といったことを書いたと記憶しています。
    私があの文章を書いた当時は、一部ワイドショーの過熱する取材が問題になったことがあり、
    40年近く続いたいわゆる「55年体制」の崩壊にマスコミが一役どころか何役も買っていた時期のこと。
    結果として、パッと目に付いた問題点を取り上げることになりました。

    あのテキストを書いてから既に8年が経ちました。
    日本のマスコミの姿勢がどれだけ改善されたかについては、問題点によってまちまちという印象があります。
    私が主として取り上げた話題のうち、プライバシーの問題については少なからざる改善があったと思いますが、
    ニュースの報道において、マスコミが自らの持つ巨大な影響力に注意を払っているのかという点については、
    8年前と同様に問題視せざるを得ません。
    昨今の政治批判の中に、「日本の政治がワイドショー化している」というのがあり、
    その言葉がニュース番組などで取り上げられることは決して少なくありません。
    しかし、政治のワイドショー化に本人達──マスメディアの人間が多少なりとも関わっているのという問題点について、
    彼らの口からコメントが発せられることはあまり多くありません。

    でも、上記の話は、現在私がマスメディアに対して抱いている不信感と問題意識のごく一部でしかありません。
    ワールドカップでの誤審騒動に対する大手マスコミ(東京新聞を除く)の対応に片手落ちの感があったこともその1つ。
    他にも、日本の民放テレビ各局(テレビ東京を除く)が見せる、「慢性的」な国際ニュース軽視の風潮や、
    番組を不自然な位置で区切りCMを挿入するという演出がバラエティ番組で横一線に使われている現状
    (ひどい番組になると、CM直後にCM直前の15秒前後の内容をそのまま放送したり、
    前半30分はCM無しで番組を一気に流し、後半に入ってCMを数分単位で挿入したりしている)、
    番組宣伝の為の番組・特番が放送されている事実(そこまでしないと視聴率が取れないのか?)など、
    マスコミの現状に対してはあれこれ不満を抱いています。
    最近、マスコミの間では、「『個人情報保護法案』という名目で政府がマスコミを規制しようとしている」との
    声があちこちで上がっていますが、
    私から見れば、マスコミが自分達のことを棚に上げているという印象が拭い去れません。
    マスコミの行動に政府が必要以上に口を出すことがまずいのは言うまでもないと理解はしているのですが……。


    夏休みに入って余裕ができたら、この辺りの話を1回まとめ、別稿で発表するかもしれません。

  • 2002年7月16日 01時57分40秒
    「クリスタル」は砕けたのか

    「なんとなくクリスタル」な知事が10日間悩んだ末の結論は「出直し選挙」。
    台風7号が無ければ、これが昨日のトップニュースになるはずでした。

    ニュースの中身は今更繰り返す必要もありませんが、改めて御紹介。
    7月5日に長野県議会から不信任を受けた田中康夫知事、
    悩んだ末に「私が知事にふさわしいかどうか、県民に直接問うことが望ましい状況」と述べ、
    県議会を解散せず、失職して出直し知事選に出馬することになりました。
    一昨年の当選以来、県庁職員との対立やら脱ダム宣言やら派手なパフォーマンスやら何かと話題の尽きない方でしたが、
    その極め付けとなるのが今回の不信任騒ぎ。
    ちなみに、このような形で知事が職を失うのは史上初だそうです。
    ただ、再選も確実視されている状況でもあり、長野県政にマスコミの注目が集まる日々は当分続きそうです。

    県議会関係者からは「議会を解散すべきだ」という声が多数上がっていたのですが、
    そこで議会を解散するカードを切らなかったのは、前県知事が巧みな判断を下したことの証左。
    (解散後の議会で再度不信任にされる可能性があるため。しかも、その時の不信任成立要件は今回よりも大幅に緩い)
    そもそも、今回の長野県議会が、前県知事の「挑発」に半ば乗せられる格好で
    不信任案を出すことになったということから見ても、
    県議会側は知事の掌の上で躍らされていただけなのではないかという気もしてきます。
    とはいえ、前県知事側も、議会がさんざん要求していたダム代替案で、具体策を提示していなかった
    (私が知る限りでは、「具体策」の名に値する計画は出ていなかった)ことなど「失策」も多々あります。
    かといって、ダム廃止宣言のみを取っ掛かりにして不信任提出に突っ走ってしまった長野県議会も、
    知事の「挑発」に乗った面があるとはいえあまりに性急な行動であり(結果的に議会側は不利な立場に立たされました)、
    不信任案提出の理由を聞いていると、政策論争とは全く関係無い感情論で動いてしまったとしか思えません。
    こうして冷静に見れば「どっちもどっちじゃないか」という印象が拭い去れません。

    筋論から言えば、「両者とも辞めてダブル選挙」が理想的なんでしょう。
    このままでしたら、いつまた知事の不信任案が提出されるとも限らないという危うい状態が続きますから。
    ですが、議会が自発的に解散するかどうかはかなり微妙(議会の自発的解散には5分の4の賛成が必要)。

    まあ、1つだけ確かなのは、副知事・阿部守一さんの苦労は当分続きそうだということだけです。


    本当はもう少し書きたかったのですが、PLのほうで色々ありましたのでこの辺で勘弁して下さい(汗)

  • 2002年7月12日 18時31分32秒
    企業会計は公明正大に(続編)

    最近、本当にゲームをプレーすることがなくなったなあ……。
    正確には、ゲームをプレーすることがあったとしても昔のゲームばかりだし……。
    未クリアのまま放置されている『ゼノサーガ』、どうしようかなあ……。
    ストーリーとエンディングは全て頭の中に入っているので、今からでもレビューを書こうと思えば書ける状態なんだけど……。


    以前の日誌で紹介したアメリカ企業の粉飾会計疑惑ですが、その後、注目すべき新しい動きがあったので御紹介。

    まず、毎日新聞社の記事に、ここ最近粉飾決算を行っていた大手アメリカ企業のリストがありました。
    それによると──

    ●エンロン(エネルギー):簿外取引で10億ドル利益水増し
    ●Kマート(小売):社内告発により、会計操作の疑いが浮上
    ●グローバル・クロッシング(通信):売上高水増し

    ●タイコ・インターナショナル(金融など):幹部の会社資金流用疑惑、前会長の脱税容疑
    ●イムクローン・システムズ(医薬):前CEOらによるインサイダー取引
    ●ワールドコム(通信):通信網整備の経費を「資産」に付け替え
    ●ゼロックス(事務機器):64億ドルの売上高水増し
    ●クエスト・コミュニケーションズ(通信):売上高10億ドル超水増
    ●メルク(医薬):124億ドル売上高水増し


    ※上出リスト中、赤字は破綻

    「これでもか」「これでもか」と次々に出てくる企業の不正。
    その姿は、モラルハザードが続出した90年代の日本企業の姿を鏡に映しているかのようなものです。
    (今日の日本企業もモラルハザードばっかし……という突っ込みはおいといて)

    で、こんな状況にキレたブッシュ大統領、
    詐欺で有罪判決を受けた企業幹部の禁固刑の期間を最長10年に拡大することや、
    省庁横断的な対企業不正タスクフォースの設置や米証券取引委員会の予算増額などを中心とした対策を発表。
    日本の政府が企業のモラルハザードに対して及び腰の姿勢である
    (実際の施策はともかく、国民から見れば政府が断固たる姿勢を示したようには見えなかった)のに比べれば、
    対応策を打ち出し「不正には厳罰を以って臨む」ことを明瞭にした大統領の姿勢は実に健康(?)的。
    民主党からは対策の実効性に疑問の声が上がっていますが、個人的には対応策を出せたことだけでも評価したいところ。
    でも、市場からの評価は芳しくなかったようでして、ニューヨークの株式市場は低迷中。
    昨晩はヨーロッパ市場も軒並み急落するなど、6月末の世界同時株安危機を思い出させるような展開が繰り広げられていました。


    続いて、不正会計問題の記事を書く契機となったワールドコム社のその後。
    7月1日破綻説など危険な憶測が飛び交っていましたが、当面の命拾いには成功したようです。
    ただ、同社が「破綻するか、財務を立て直すか」という二者択一を迫られている状況は変わっておらず、
    当面は危うい経営を余儀なくされそうです。
    破産時の資産総額は1000億ドル超になると見られ、これはまさに「史上最大」の倒産劇。
    7月8日にはこの問題に関する公聴会が行われましたが、証言拒否に遭うなど成果は芳しくなかったようです。
    なお、ワールドコム・ジャパンからの声明文が出ていますので、興味のある方は御覧下さい。

    ただ困ったことに、今回の不正会計疑惑は政治スキャンダル化しそうな気配にもなっています。
    その中で最もメディアの扱いが大きいのは、
    チェイニー副大統領が石油関連会社のCEOを務めていた1996年に、
    同社の会計監査を担当した大手会計事務所アンダーセンの宣伝用ビデオに出演、
    同事務所を称賛していたことが明らかになったというもの。
    この中で、チェイニー氏が
    「(アンダーセンからは)型通りの監査にと留まらない良いアドバイスを得ている」
    と述べて同社の姿勢を評価していたというのは実に皮肉な話です。
    (まさに、この「型通りの監査に留まらない」部分で大きな問題が起きてしまったのですから)
    他にも、同副大統領が不正会計処理の疑惑で非営利団体から損害賠償請求の訴訟を起こされたり、
    ブッシュ大統領が1990年に行った株取引にインサイダー疑惑が持たれたりするなど、疑惑の種は尽きない様子。
    ニューヨークの株安も、経済関連のスキャンダルが続出する現政権に対する嫌気売りが混ざっているはずだと邪推したくなります。


    他にも、昨年電力危機に見舞われたカリフォルニア州で再び電力不足を示す警報が発令されるなど、
    アメリカの産業と経済に関する暗い話は続くばかり。
    先行き不安な状態は更に続きそうです。


    最後に、一連のニュースの中で個人的に最も興味深かったマレーシアの反応を御紹介。
    記事の詳細はここに載っているのですが、
    「自国では大丈夫だ」という強気の発言をしているマレーシアの財界の方々も、
    問題の核心は制度ではなく個々の経営者のモラルにあること、
    そして正確な情報を掴むことが最善の防止策であることはしっかりと理解していらっしゃるようです。
    日本の経営者の方々に、彼らのような問題意識がしっかり備わっていることを期待したいところです。

  • 2002年7月4日 21時49分50秒
    狂熱の骸

    少し前の日誌を御覧になった方や、
    日本人フーリガンに苦言を呈した時に私へメールを差し上げた方なら御存知でしょうが、
    私はサッカーに関しては「ど素人」とまではいかないまでも、あまり明るくない人間です。
    無論、サッカーのルールを全く知らないわけではありませんし、ワールドカップの予選リーグのルールは知ってます。
    それに、ワールドカップやオリンピックなど近年の大型国際スポーツ大会に、
    ナショナリズムを不必要に高揚させる側面がある
    (ナショナリズムそのものは否定しないけど、スポーツをその道具にすることには強い抵抗を感じている)ことや、
    サッカーという競技に付き物の熱狂的なサポーターの存在や、人々を熱狂させる「何か」があることも
    「知識として」は頭に入っています。
    しかし、ワールドカップがどういうものであるかを、この目ではっきりと見届けるのは今回が初めてとなります
    (前回大会当時はまるで関心がありませんでした)し、
    ヨーロッパなどで活躍している一流の外国人選手の名前も5人か6人くらいしか挙げることができません。

    で、そんな人間が、落ち付いた精神状態で今回のワールドカップを振り返ってみると、
    良い意味でも悪い意味でも、様々なものを考えさせられる大会だったように感じられます。
    そして、もしも「成功か失敗か」の二者択一で判定を求められたら、多分「失敗」に票を入れざるを得ないでしょう。

    無論、良かった点は山ほどありました。
    ワールドカップによって、日本人は世界の一流と言われる人々のサッカーをこの目で楽しむことができましたし、
    各国サポーター・選手とホストである日本人の交流も盛んに行われました。
    海外のメディアからは、日本人の歓待ぶりに数多くの賛辞が寄せられています。
    で、予選免除となった日本と韓国の選手団は1次リーグの突破に成功、
    ホスト国としての面子を守るだけでなく、4年後のドイツ大会に向けて幸先の良い結果を残すことができました。
    開催前には最大の懸念要因とされていた外国人フーリガン問題は、
    「フーリガンは水際で強制退去」「フーリガンにはパスポートとビザを出さない」という強行手段に訴えたことが効を奏し、
    「外国人フーリガンの問題ってあったっけ?」と思いたくなるくらい、目立ったトラブルは起こりませんでした。

    しかし、問題点も色々とありました。

    最初に問題となったのは、共催時の呼称。
    1996年に「決勝は日本、国名は韓国が先」との合意が為された一方で、
    日本国内だけではなくイングランドでも「日本が先」の呼称が使われていたことがあったため、
    韓国側が抗議したという騒ぎもありました。
    結局、日本国内のマスコミは「KOREA JAPAN」の部分を「呼称として使わない」という方法を使っていました。

    次に問題になったのはバイロム社が引き起こしたチケット騒動。
    バイロム社がチケットを外国で捌くことに失敗しただけでなく、
    チケットが余っているという事実の報告が日本や韓国に対して遅れてしまったため、
    外国人向けチケットが大量に余り、1次リーグの試合などで空席が目立つ結果となってしまいました。
    ところが、空席が生じる状況は決勝トーナメントでも続き、
    チェジュ島で行われた試合では、空席が全体の半分近くに達するという異様な光景が現出されていました。
    もっとも、韓国国内で行われた試合において空席が大量に発生した理由は、
    単にバイロム社やFIFAのチケット販売がまずかったからという理由だけではなく、
    韓国人サポーターが韓国以外同士のカードにあまり興味を示さなかったらしいという裏事情もあるようですが……。
    他にも、決勝戦のチケットが大量に「偽造」されたという決して看破し得ない問題があります。
    この問題が最も恐ろしいのは、事件の事実関係がどうも奇妙である点。
    上出リンクが事実を伝えているとすれば、バイロム社の狙いって一体……?

    また、変則的な審判起用のシステム
    ──地域の平等性におもねるばかり、必ずしも質が良いとは言えない審判が起用された──
    が無数の誤審を生み出し、ヨーロッパなどで大きな騒ぎとなっています。
    特にまずかったことに、誤審が韓国とヨーロッパチームとの試合で連続して発生したため、
    敗戦国やその他の欧州メディアからは「あれは誤審じゃなくて故意じゃないのか」という疑念の声が上がったほど。
    今のところ、誤審問題に対する批判は韓国とFIFAに対して集まっているようですが、
    対処を間違えれば日本も非難の対象になるというちょっとまずい状況。

    他にも、興奮のあまり都会のど真中で騒ぎ回ってしまったごく一部の過激な日本人「フーリガン」や、
    どれだけ贔屓目に見ても礼儀正しいとは言えない地元韓国人サポーターの応援(選手の遺影を試合会場に持ち込む、
    相手チームがボールを持っただけでブーイング、深夜に外国チームの宿泊施設で騒音を立てた、
    自国のゲームではないのに試合中「大韓民国」の呼称を連呼したetc.)など、
    気になった点は色々ありました。

    大会関連グッズの1つである、3体のマスコットキャラの人形の売れ行きが日本国内で悪い
    (売れ行きが悪いのは多分白い歯が原因じゃないかな)という問題や、
    ライセンス料や放映権料が高いという問題(ライセンス料のせいで倒産した会社もあります)も見受けられました。
    その金権体質には、NHK会長の海老沢さんが「ライセンス料がこれ以上上がるのなら、
    試合放映の中止も考慮せざるを得ない」という趣旨の発言をしてしまうほど。


    誤審騒動を中心に、今回のワールドカップにおける「恥部」の多くはインターネットと
    サッカーファンの内輪の間で論議されています。
    そして、匿名性を隠れ蓑にして過激な意見を言い放つ人間が後を絶たないインターネットの世界で、
    ワールドカップ問題がヒートアップするのに大した時間は掛かりませんでした。
    2ちゃんねるなどに設置されているサッカー関連の話題を論じる為の掲示板では、
    どう考えても「冷静で客観的な分析・批判」とは言えないような、韓国(及び韓国国民)を誹謗中傷する書き込みが続出。
    私が頻繁に出入しているチャットでも、ここで書くことができないような過激な発言が飛び出したという有様。
    現在では、インターネットが日本における嫌韓論の中軸的存在と化してしまった感すらあります。

    誤解の無いように釘を刺しておきますが、
    インターネット上で多数登場した人種差別的発言は厳に慎まなければなりません。
    たとえ、それが匿名掲示板の上での発言だったとしても
    (むしろ逆に、匿名だからこそ一層注意するべきなんですけど)。



    でも、以上に掲げた諸項目は、実は今日の日本(主としてインターネット)で広がっている
    ワールドカップ失敗論や、今回のワールドカップに対する批判の一部に過ぎません。
    それに、韓国人サポーターの皆さんも3位決定戦(トルコ戦)では以前よりも礼儀正しくなり、
    ホスト国の名に恥じない応援ぶりを見せていました。
    じゃあ、誰が叩かれているのか?

    定期的にインターネットで情報を集めている方なら既に御存知でしょうが、
    インターネット上で沸き起こっている批判・非難の声の矛先は、主に日本のマスコミに向けられているのです。
    彼らの「罪」──非難される理由は「ワールドカップ報道における公平性・中立性の欠落」
    日本のマスメディアのワールドカップ報道は、予選リーグでは「まとも」と呼べる穏当なものでした。
    しかし、どういうわけか、決勝トーナメントが始まってから、その報道姿勢が悪い方向へ変質していきます。
    その際たるものが、テレビや大新聞(主要5社)が示した韓国戦における誤審問題に対する報道姿勢。
    海外マスコミやインターネットでは大問題となっていたにもかかわらず、
    新聞をはじめとする日本の主要マスコミは誤審問題に殆ど触れることなく、
    ただ手放しに韓国選手の活躍ぶりとヒディング監督の采配を称賛するばかり。
    韓国選手団が力を振り絞って努力したことは事実ですし、そのことは正当に評価・称賛されるべきですが、
    だからといって誤審問題を見逃しても良いということにはなりません。
    また、韓国戦における一部韓国人フーリガンの悪質な行動(相手国を露骨に侮辱したプラカードなど)は批判せず、
    戎橋で交通規制を無視して道頓堀に飛び込む人々や六本木や渋谷で往来を妨害した日本人「フーリガン」や
    モスクワで暴動を起こしたロシア人フーリガン達だけを批判するという、
    片手落ちとしか思えない報道姿勢を示す会社も散見されました。
    しかし、単に触れないだけならまだましなほう。
    ニュースやワイドショーなどの報道番組では、
    コメンテーターがこの誤審問題を取り上げると、すぐにCMを入れたり別の話題を強引に始めたりして、
    誤審問題などがテレビで一切取り上げられないようにスタッフが汗を流してしまうという有様。
    それはもはや「自主規制」などではなく「自発的な検閲」とも呼ぶべき状態でした。
    誘拐事件など「報道しないことによる利益が大きい」とは言えない問題で、マスコミはこんなことをやってしまったのです。
    他にも、韓国対トルコ戦の直後、韓国の4位表彰式のみを放送してトルコの3位表彰式を放送しなかった問題など、
    日本のワールドカップ報道には、冷静に見るとどこか変としか言い様の無い問題点が多数存在しました。
    それはまるで、マスコミが「日本人は韓国を応援しなければならない」との強迫観念に囚われているようでした。

    そんなわけで、インターネット上では、日本のマスコミに対する厳しい糾弾の声が相次いで上がっています。
    「韓国偏重の報道が続いた」と名指しで非難されたテレビ局の看板ワイドショーに関し
    「番組のスポンサーとなっている各メーカーに対する非買運動を起こしてはどうか」という意見も飛び出しているほど。
    インターネットのとある掲示板に書き込まれていた
    「どんな新聞も、東スポと同じ信憑性しかないと思って読まなきゃいけない」
    という発言が、日本の大手マスコミがインターネットの住人から信頼を失ったという残酷な事実を示しています。
    また、マスコミが韓国称賛一辺倒の報道を取り続けたせいで、
    インターネットの住人達の嫌韓感情を逆に掻き立ててしまった側面もあります。
    雑誌や一部の大手紙で、ワールドカップ中の誤審問題や偏向報道に対する批判が報じられるようになったことや、
    韓国に派遣された新聞記者の多くは公正で中立的な取材を心掛けていたにもかかわらず
    日本のデスクが彼らの「公正な取材の成果」を「握り潰した」
    という事実が知られるようになったこと、
    トルコの3位表彰式を放送しなかった件で番組司会者が謝罪したことなど、
    偏向報道に是正の動きが見られるようになったことが救いと言えますが……。


    日韓両国の関係を改善することが目的の1つとして掲げられていた今回のワールドカップが
    (一部の人間に限るとはいえ)結果的に両国の溝を広げてしまったということ──
    そして、両国の溝を広げる原因の1つが、両国の親善を殊更に謳っていたマスコミにあったというのは皮肉な話です。


    それにしても、ピッチの中で全力を出し切った韓国選手団が哀れでなりません。
    考えようによっては、彼らが「最大の被害者」であると言えるのですから。

  • 2002年7月1日 00時00分32秒
    企業会計は公明正大に

    つい先頃の日誌で「就職先が決まった」と書きました。
    まあ、不況続きの日本で就職先を探すというのはなかなか大変だったのですが、
    就職先を決める際、私が最も重視したことが1つありました。それは「経営の透明性」
    非情に曖昧な言葉なんですが、その中には当然「会計で嘘を付かない」という事柄も含まれています。
    自社の情報を外部に対して偽っていたとしたら、その会社は投資家を欺くという犯罪行為を為したわけでして、
    株式市場から総スカンを食らってしまうことは想像に難くないと思います。

    で、つい先頃、アメリカのワールドコム社という大企業が企業情報を外部に対して偽っていたことが分かり大問題となりました。
    事態が発覚したのは先週に入ってからのこと。
    ニュースなどが報じたところによると、同社は30億ドルにのぼる費用を不正に設備投資費として計上、
    この他にもキャッシュフローと利益を水増し計上していたとのこと。
    この事実は今年4月までは外部はおろかCEO(最高経営責任者)の耳にも伝わっていなかったのですが、
    新しくCEOに就任したジョン・シジモア氏に対して従業員らが内情を明らかにしたことにより調査が始まり、
    ようやく不正経理の事実が表面化し、時の最高財務責任者は解任されてしまい、
    米証券取引委員会(SEC)の調査や司法省による刑事事件としての捜査も始まっているようです。
    だが、ワールドコムにとって運(?)が悪いのは、現在の同社が不正会計発覚以前からの通信不況で
    債務300億ドルを抱えるというとっても危機的な状況にあること。
    同社は債権者との交渉を行ったり、返済に向けて人員を17000人減らすなど合理化策を公表したりして生き残りを図っています。
    しかし、今回の不正経理発覚が債権者との交渉に悪影響を及ぼすことは必至と見られ、
    「7月1日に『チャプター11』(連邦破産法第11条)が適用されるのではないか」との観測がまことしやかに流れいています。
    ちなみに、300億ドルを超える債務を抱えたままの倒産は、アメリカ通信業界での倒産では過去最大規模になりそうです。

    実を言いますと、今度の土日の間に入ったアメリカ企業の不正会計のニュースは他にもありました。
    現在経営危機に陥っている(とされる)事務機器大手のゼロックス社が1997年から2000年に報告した収入にも、
    今回のワールドコム社と同様、不正処理が行われたというのです。
    ニュースが報じるところによると、不正経理によって水増しされた収入は最低で30億ドル。
    最悪の場合、60億ドルを上回るかもしれないとか。

    こうして立て続けに発覚した企業の不正会計が、市場に対して良い印象を与えないことは言うまでもありません。
    先週は一時、世界同時で株式相場が急落、「アメリカ発の世界同時不況到来か」と大騒ぎになっていました。
    週末になって株価は持ち直したようですが、予断を許さない情勢は当分続きます。
    ワールドカップの余韻に浸っている時間は残されていないと言っても良いでしょう。


    さて、昨年のエンロン社に続き、アメリカでは企業会計に関する大企業の不祥事が相次いでいます。
    このような不祥事を回避する為には、経営者が健全な経営意識を持たなければならないのは言うまでもありません。
    しかし、アメリカの場合、経営者が意識を改めればそれで良いかというと、それではすまない追加事情があるようです。
    アメリカの会計監査会社は、ただの会計監査業務以外にも一種のコンサルタント業務に手を出していることが多く、
    そのコンサルティング業務の「一環」として、不正経理の指南や不正経理隠蔽の幇助を行う不届き者もいるようです。
    昨年に破綻したエンロン社の場合も、同社の会計監査を請け負っていたアンダーセン社に対して
    「不正経理の片棒を担いでいた」との激しい非難が寄せられました。
    日本では、企業の自己査定に対して株主などから「甘い」などと批判が集まったのを機に
    アメリカなどの会計監査会社に会計監査を外部に委託することが一時期流行りました。
    その時は「アメリカの会計監査会社だから大丈夫だろう」という判断があったのだと思います……が、
    会計監査絡みの不祥事が続発する今日のアメリカを見ると、
    当時の日本企業の判断が正しかったのかどうか、考え直してみる余地はありそうです。
    (会計監査に専念することの多い日本の会計監査会社にとっては、今回の混乱は躍進のチャンスかもしれませんよ)

    それにしても、どこの国でも、不正を働く人間のすることは大して変わらないようでして……。



    え? ワールドカップの記事?
    ……ああ、書くの忘れてた(爆)

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