-

2004年10月の図書館長日誌

-

サロニア私立図書館・玄関へ戻る日誌収蔵室で過去の記録を閲覧する

-

  • 2004年10月24日 10時07分28秒
    後編の無い前編

    図書館長が残業続きで悲鳴を上げている今日この頃、世間では天災がニューの一面を占める日々が続いています。
    台風23号の襲来を受けた今週の水曜日(10月20日)には、図書館長が抱えているシステム開発が翌日リリースとなっていたため、
    台風情報と都内の交通情報をチェックしながら、「今日は家に帰れるのか」と不安を覚えつつ仕事に励んでいました。
    昨日(10月23日)には、新潟県中部で震度6の地震が立て続けに発生し、
    その影響で上越新幹線が脱線し、新幹線の無事故記録の更新が止まるということもありました。

    地震と天候の関係に関する俗説としては、「猛暑の直後には大地震が起こりやすい」というものがあります。
    最近では、1995年の阪神大震災と前年の猛暑(1994年の夏は記録的な猛暑でして、
    福岡では12時間の給水制限が行われていました)を例に挙げ、
    「今年の夏は猛暑だったから、近いうちに大地震が起こるに違いない」と主張する一部マスコミの姿が目につきます。
    猛暑と地震の間に因果関係があるのかどうかという点については、学術研究の題材としては興味深いものがあるのですが、
    最近の一部マスコミが煽る地震「予知」の報道には、正直言って色々と考えさせられます。
    (むやみやたらと危機感を煽ればいいというものではないですし)


    さて、本日の更新で新たに公開されますのは、バル様から頂いた『それは舞い散る桜のように』のレビューです。
    レビューでも触れられていることですが、この作品の最大の特徴は「前後編二部作における『前編』である」ということ。
    当初は後編の製作予定がありましたが、製作元の主力スタッフがまとめて退社してしまったため、
    続編の計画どころか会社自体が無くなってしまい、
    この『それは舞い散る桜のように』の続編は宙に浮いたまま消えてしまっている……という状態です。
    インターネットの中では、続編を作ってみようという企画も動いていたようです(現在停止中)。
    続編があってこそ完成するという作品のようですから、後編がどんな作品になるのかは興味があるところですが……。

    ここからは、10月24日付でいただいたバル様のレビューでは触れられていない部分の補足になります。
    インターネットで18禁ゲームのレビュー情報を統計的に集計しているErogameSpaceのデータによると、
    この作品のPOV(Point Of View …… 簡単に言ってしまうと「注目点・特徴」)として指摘された諸項目の中で、
    2004年10月24日午前0時の時点で会員登録者からの指摘が最も多かったのが「笑い死ぬゲーム」という項目。
    他にも「歌がいい」「脇役が光る」といった評価が並んでいます。
    脚本や世界設定に関する評価は人によって様々ですが、これは本作品が「後編の無い前編」という特殊な位置にあることも影響しているでしょう。

    なお、致命的なバグはありませんが、修正パッチが出ていますので、プレー時には是非ダウンロードを。


    最後に、事務連絡。
    夏季休暇の代わりとして、11月第1週に丸々4日間の有休(これで実際には9連休)を取得できました。
    図書館長本人に用事のある方は、この時期に用事を用意していただけると助かります。

  • 2004年10月9日 11時25分14秒
    全国画一サービス

    今回の更新は、SROM様から頂いた郵政民営化に関するコラムです。
    これまではゲームを中心としたコラムを頂いてきましたが、今回は少々毛色が違う記事となっています。
    内閣改造直後ということもあり、この問題はマスコミでは色々と騒がれているようです。

    私自身のほうは、CIA当局者が出したイラクでの大量破壊兵器に関する報告書
    ──大量破壊兵器の現物とその計画は無かったが、開発の意図はあった──の提出に伴う
    政治的な余波のほうが気になっています。
    報告書の中身そのものは政治的に中立であり、信頼を置くことができる内容と思われるのですが、
    提出・公開された時期がアメリカの大統領選挙のクライマックスという、政治的に微妙な時期と重なったため、
    アメリカの民主党や世界各国のリベラル系マスコミなどが、一斉にブッシュ政権を叩くという光景が広がっています。
    去年の日記でも触れたことですが、同じ戦争をするにしても、湾岸戦争の停戦決議違反を口実にしていれば
    事後処理でここまでこじれることは無かったと思います。

    ただ、イラク戦争に対する価値判断は脇に除けた上で冷静に考えると、
    一時は優勢が伝えられていたブッシュ大統領も非常に苦しい立場に立たされるようになっています。
    こうなりますと、ケリー氏が大統領になった時の日本の外交政策も今から考えておく必要があります。
    アメリカの政権党の別に関係無く、日本が目指すものとしては……

    (1)安全保障理事会で拒否権を有する常任理事国の席を保有する
    (2)朝鮮半島からNBC兵器を完全に排除する


    ……という2点になることは間違い無さそうですが、
    ケリー氏が政権の座に着いた場合に、上記2点が無事に達成されるという保障は全くありません。
    沖縄の基地移転問題にしろ国連の安全保障理事国拡大の問題にしろ、
    日本の対話相手が共和党から民主党に変わっても、アメリカが同じ立場を取り続けてくれるとは限りません。
    北朝鮮問題に限れば、ケリー氏は「大統領就任後すぐにアメリカと北朝鮮の二国間協議を行う」と公言し、
    「日本の立場を無視する可能性があるのではないか」と勘ぐりたくなるような言動を見せています。

    (こんなケリー氏の対日政策を不安視している日本の保守勢力の意見を反映しているのか、
    読売新聞と産経新聞は遠回しな表現を使いながらもブッシュ大統領の再選を期待する持論を展開しています。
    読売新聞は10月8日付の社説「世界中が、イラクは大量破壊兵器を保有している、と考えたのも当然」と書き
    開戦を決断したブッシュ大統領の決断を間接的に容認・評価していますし、
    産経新聞は10月9日の社説「攻撃によってフセイン元大統領の野望が阻止されたことは揺るがない」と記述。
    考えようによっては、こういうのを「開き直り」と言うのでしょうけどね)



    さて、話を本日頂いた投稿のテーマである「郵政民営化」に戻しますが、
    先日の日本経済新聞の社説には、こんなことが書かれていました。

    (前略)

    全国一律サービスの維持論に象徴されるように「便利な今の仕組みを残すべきだ」という議論には落とし穴がある。
    便利で身近な郵政事業はその裏で、官業ゆえの非効率を抱え、民間への資金の流れを阻み財政規律を働かなくさせるなど、
    将来の国民負担を膨らます元凶である。

    素朴な議論の形をとりながら、その実、自民党の政治家が特定郵便局長とその関係者の票に期待して、
    また民主党の政治家が同党を支持する郵政公社職員の組合に配慮して民営化に反対するのは論外だ。
    しかし、これらの政治家の議論に比べて一見、積極的な改革案に見える政府の基本方針も、
    国民の利益にかなう真の改革案とは言い難い。

    問題が多い基本方針の中でも、とりわけ懸念されるのは、
    民営化会社の中核に位置する「窓口ネットワーク会社」が政治の要請に沿って郵便局網や職員を温存する役割を果たす点だ。
    物販から各種サービスの提供まで幅広く扱う窓口会社は現常勤職員の6割超の「約18万人を擁し」(政府高官)、
    郵便、貯金、保険3社の窓口業務や集金業務を受託するという。
    もし3社が窓口会社を使わざるを得ない状態が続くと、3社は事業の手足を縛られ独立した経営ができない恐れが強まる。
    そうなれば、貯金や保険の新会社は、今後とも実質的な国債引受機関にとどまり、経営効率の改善も期待できない。

    政府が3分の1超の株式を保有する持ち株会社の完全子会社となる郵便と窓口会社には政府の関与が残る。
    貯金と保険会社が持ち株会社から完全に独立するのかどうか基本方針ではなおあいまいだが、
    もし持ち株会社の傘下からきれいに抜け出せなければ郵政3事業の一体経営が続くことになる。
    実質的に郵政公社が窓口会社に変わるのにとどまらず、
    これを民営化といって業務範囲の拡大を認めれば、官業の民業圧迫以外の何ものでもない。
    民業圧迫は郵便小包でのコンビニエンスストアとの提携で現実の問題になっている。

    形だけの民営化は国民の利益にならない。
    真の改革のため政府は郵便局網や雇用の維持にこだわらず、完全民営化にかじを切り直すべきだ。

    2004年10月7日付日本経済新聞社『社説1 郵政民営化を真の改革にするために』より

    他にも日本経済新聞社の社説で郵政民営化問題を取り上げたものはいくつかあるのですが、
    この社説が同社の立場を最も端的に示しているのではないかと思いましたので、この社説を引用してみました。
    雇用の維持はともかく、現在の郵便局網の維持には拘らないと言い切る辺りが最大の特徴でしょうか。

    ただ、日本が締結している万国郵便条約では、郵便の全国均一サービスの提供が義務付けられているため、
    「郵便局網の維持に拘らない」といって過疎地を中心に郵便局を減らし過ぎるとこの条約に違反することになりかねません。
    また、郵便局に付随して全国に展開されている郵便貯金のネットワークも、
    全国規模で展開される金融システムの1つとして重要であり、全国画一サービスによる利便性は大きいものがあります。

    (1)郵便事業が民営化された上で、
    (2)民営化後の事業体が郵便と郵便貯金の全国画一サービスを維持できれば

    それがベストということになると思いますし、私も民営化には反対しません。
    民営化に伴って現行の郵便サービスの質が低下するとなると、民営化に賛成すべきか迷わざるを得なくなります。
    おそらく、低下するサービスの内容が私の許容範囲かどうかで態度が決まるでしょう。


    参考までに、日本よりもいち早く郵政の民営化を成し遂げたドイツの場合、
    紆余曲折を経た後、結局郵便・郵便貯金の全国サービスが生き残っています
    民営化を進めた場合でも、公益事業の合理化とサービスの切り詰めには限界があるということの好例となるでしょう。

    郵政民営化先進例とされるドイツで、ユニバーサルサービスの提供が義務づけられているのは郵便会社ドイツポストのみ。
    ただ、ドイツポストは、郵貯会社のポストバンクを完全子会社にしているため、全国の郵便局で郵貯が扱われ、
    実質的に全国均一サービスが担保されている。

    ドイツでは、1990年に国から郵便会社と郵貯会社が分離・公社化され、
    95年に株式会社化の後、99年にドイツポストがポストバンクを買収した。
    その間、ポストバンクが不採算郵便局から撤退しようとして郵便会社と対立したが、
    政府の仲介によって郵便局での郵貯提供が維持された経緯などがあった。

    2004年5月19日付読売新聞社『なるほど経済 郵政民営化後の全国均一サービス 』より



    この問題により深く興味を抱かれた方は、「郵政民営化論議 リンク集」という
    良いでき映えのリンク集がありましたので、暇がありましたらこちらを是非御一読下さい。

-

-玄関(トップページ)