思い出・4
アメージュ・ラズリ
あの日……『忍』が壊滅して早1年が過ぎた…
12歳だったあたしはそれなりに成長した。
旅をしているお陰で心は着々と取り戻し始めた。
あの冷酷な仮面も取り外した。
だから、自由人のような毎日を過し始めていた……けど
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日差しが照りつく……。
熱い……あたしはもう少し森の奥へと進んだ。
何故、あたしが此処にいるかは数時間前に遡る。
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旅をしていて久しぶりに雨が降ったので雨露を凌ぐ場所で休もうと周りを見ると小屋があった。
中に入ると1組の家族が居た。
その家族達は泣いていた。
あたしは尋ねた「どうして泣いているのですか?」と…。
母親だろうと思う人物が答えた。
「私達は山に住んでいたのですが、近頃、龍が出てきて……村の人達を……」
それ以上は何も言わなくても分かった。
「でも…でも、おかしいんです、その龍は龍塚に封印されていたんです?!」
困った顔をしていたので、あたしはつい言ってしまった。
「えっと、理由は分かりませんが…あたしが倒しましょうか?」
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と、まあ、どこぞの3文小説のように事は進んで行きあたしはその村に向かっていた。
「えっと、たしかこの間を通り抜けて…」
そう呟きながら山の渓谷の上手く見えない隙間を通り抜けて村の裏手に出た。
「……う……凄い死臭……」
そこには数週間は過ぎたのにまだまだ強い死臭が残っていた。
中央に出るとそこには…
真っ二つに切り裂かれた恐怖に歪んだ頭。
血の染み込んだ地面の土。
目のくり貫かれ…顎を外され無造作に棄てられた所々千切れた子供達の死体。
そしてその中央に龍がいた…。
……クチャ……クッチャ………ピッチャ……プチュ……
肉を貪る音が……血の滴る音が……死臭の香りが……。
今の状況を前にも見たことがある……そうだ…あの燃える修道院でだ…。
そして、次の瞬間……あたしは跳んだ……龍のいる方向に……。
「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁあぁあぁ!!!」
あたしは叫んだ……魂の奥から叫んだ。
龍はあたしの存在に気づき捕食を止め飛び掛ってきた。
グオオオオオォォオオオオヲヲヲヲヲヲヲオオオオオオォォォォォォォ!!!!!
「ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
…ブシャ……ゴキ……ゴリ………ピチュ………
あたしの刀が龍の眉間に突き刺さった。
龍の牙があたしの足を噛み千切った。
鮮血が零れた ……熱い……紅い……。
だけど、あたしは諦めずもう1本の刀を龍の脳天に突き刺した。
だが龍はまだ諦めずに角を使いあたしの胸を突き刺した。
痛い……イタイ……熱い……赤い…紅い…口の中に鉄の味がする……
グルォォォオォォォォオオォォォォォオ!!!………
あたしを突き刺しながら龍は叫んだ、そして倒れた…。
そして、龍は死んだ……が、あたしももう直ぐ死ぬだろう…。
「内蔵も…骨もぐちゃぐちゃ…か……でも、初めて人の役に立てたな…」
そう言いながらあたしは目を閉じて思い出にふけ始めた。
(神父様……あたしに話しかけていた人たち…あの男……)
色々な人物を思い出していたが1人の男の前で止まった。
(あの男………キロール……キロール・シャルンホスト……そうだ…コイツを殺すまであたしは死ねない……いや…死んで……死んでたまるか?!」
何時しかあたしは叫んでいた……血を…吐きながら……臓腑を出すような勢いで…。
突然、龍の死体が光を放ち始めた……まるで、あたしに呼応するかのように…。
そして、龍の体から紅い光と蒼い光が出てきた。
あたしにはそれが何なのかは知らない……だけど、本能は知っていた……あれは危険なものだ…。
何時しかあたしは体が動かず…いや、動けなくてそれ等を見ていることしかできなかった…。
そして、光はあたしの腕に潜り込む様に入っていった。
燃える………焼ける………
冷たい………凍える………
半身ずつに別々の痛みが体を貫いた。
まるで、右側の体が溶岩に落されたかの様に熱く…左側は氷の中に閉じ込められたように冷たく……地獄だった。
やがて徐々に痛みが取れていくとまたも体が熱くなった…。
燃える……焼ける………体が灰に………。
そして、あたしの意識は途絶えた…。
夢を見た……。
あたしと同じ顔をした少女が腕から炎を…氷を出してなんとも残虐な笑みを浮べて人を殺す夢だ…。
そして、死体の中にはあたしに助けを求めた親子がいた…。
母親は氷漬けにされていて…。
父親と息子はしわしわになった80過ぎの老人の様になっていた。
あたしは叫んだ…… やめて!? お願いもうやめてと…。
だけど、それは夢だ…目覚めれば直ぐに元通りになる…。
目が覚めた…。
何か嫌な夢を見た気がする…。
おかしい…痛みが…ない?
そう思い体を見た…縮んでる……何故?
足も元通りに戻ってる…。
体の骨は……正常だ……でも何故……?
そう思い服を見た……紅かった……自分の血だけでは此処まで紅くはならない………。
周りを見た……。
紅かった…。
赤い池が出来ていた…。
池の中には眼球が……首が……バラバラになった胴体が……。
「………あ……あ……ぁ……あ………」
(夢じゃ……無かった……もう……殺さないと思ったのに……人を……幼い子供を……家族を……)
あたしは何も考えられなかった…。
あたしは壊れた……だけど……そう甘くは無かった……。
「あたしは人形……心のある人形……だけど、仮面は外さない……笑いの仮面は外さない……だから、素顔は見せはしない…」
そう呟くにつれ、あたしは段々と笑い始めた…。
そして、何も言わず立ち上がり……村を出て行った……。
その後、あたしはまた旅を再開した…。
気になったことはあたしの行く先々で人が神隠しにあうという事だ……。
それから、1年と半年が経過してあたしは奴がいる共和国の首都である 城塞都市 ガイ・アヴェリに来た。
そして、あたしはこの年の闘技大会に出た……結果、優勝だった♪
それから、1人の将軍の勧めで軍隊に入り……
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「……ラ……きてよ……もう……」
「ん……あ…ラスケ……ふぁぁ〜あ、おはよぅ〜」
「駄目…ですよ…仕事中に…寝たら…」
「あ〜、ごめんごめん♪ 久しぶりに夢を見ちゃって」
「夢…ですか…どんな夢でした…?」
「う〜ん、ラスケは友達だけどこれだけは話せないよゴメン」
「………分かり…ました…私にも言いたくないものもありますから」
ラスケは笑った…それにつられてあたしも笑った…
こんな毎日がずっと続けばいいのに……そう思いながら……。
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