過去と現在と……
バーネット=L・クルサード
「……来たか」 開口一番、バーネットはそう呟いた。 だが、その言葉は誰かに向けられたものではなく、ただの独り言である。 先刻、カルスケート北方に共和国の援軍が現れたとの報が入った。 部隊を率いるのはキロール・シャルンホスト。共和国随一の将だ。
帝国軍はその合間を縫うようにして、ジョシュア・ロシェル隊が進軍。 ガイ・アヴェリへの侵入を果たした。 だが、その援護をしたナギサ・シラミネの部隊はそのキロール隊によって壊滅。 状況的には思わしくない。 「全員、攻撃開始。その後に迎撃準備を取れ」 静かに命令を発すると、バーネットは意識を別のところへと集中させる。 僅かに離れた空の下……かつて、自分の右目を奪った男へと。
「……いつぞやの借り、返させてもらうぞ」
|