密月(後編)

カオス・コントン

「………ふぅ」

 ベッドに静かにエヴェリーナの身体を下ろして一つ息をつく。そんなカオスの様子に、心配そうにエヴェリーナが声をかけてきた。

「カオスさん…傷、痛むんですか? それともまだ治ったばかりでキツイとか…」
「ハハ、ダイジョブすよ(^^; ただ、まぁ……ちょと一休みさせてもらえると嬉しいかも」

 そう、ここまでエヴェリーナを抱えてきただけでカオスは少し息があがってしまっていた。
(いつもなら片腕だって楽勝なのに……まさかこんなに弱っちゃうなんてなぁ)

「そう、ですか……まぁムリをさせる訳には行きませんから。仕方ありませんね…」


 カオスの身を気遣いつつ、明らかにガッカリした様子のエヴェリーナ。 そのあまりに素直な反応に苦笑しつつ、カオスが抱き寄せる。

「だいじょーぶ。ちゃんと楽しませてあげますって♪」
「え…? …ぁむッ……ふぅ、ン……」

 口付け、そっと押し倒す。そのまま口内で深く結ばれながら、エヴェリーナの腰当てを外そうと手をのばす。

「んんッ!? ……ちょ、カオスさん。そんなイキナリ…」

 唐突な流れに面くらい身じろぎして逃れようとするが、その前にアッサリと腰当てを脱がされてしまった。そしてさらけ出された秘所をカオスの指が蹂躪してゆく。

「まま、おちついて…。 ここからはゆ〜〜〜っくり味わってもらいますからw」
「え…? そ、それってどういう…」

 犯すというよりは軽くほぐすかのような指の動きに戸惑いながら聞き返すと、ニンマリと笑いながらカオスが懐から縄を取り出した。

「ちょうどね、いいものが手元にあるんすよ。 随喜縄ってゆーんですけど、こいつをぜひ楽しんでもらおうと思って♪ 」
「ずい、き? どこか普通の縄とは違うんですか…?」

 しかしカオスの言うそれは、エヴェリーナさんにはどう見てもただの縄にしか見えなかった。

「ま、やってみれば分かりますから。て訳で…てりゃあっ♪(しゅるるッ…ぎゅいっ)」
「は、ぐっ……んああっ!」

 まだそれほど慣れていない上に股縄をかまされたのは始めてである。その強烈な刺激に思わず悲鳴をあげるが、その間にも両腕も後ろ手に縛られ自由を奪われてしまう。が、カオスの責めはここまでだった。

「さぁって、おったのっしみ〜♪」

 そう言うとカオスは身を起こし、じっと様子を窺っている。訳も分からないまま取りあえず息を整えるエヴェリーナだが、そのうち少しずつ異変に気付き始めた。始めに縄をかまされた時はジンと痺れるような痛みだけしかなかった秘所が、落ち着くにつれてチクチクと痛痒い感覚に苛まれ始めたのだ。
 それほど快感が得られる訳ではない、しかし無視する事もできないほどの刺激――それが絶え間なく襲ってくる。気をまぎらわせるためか、より強い快感を求めてなのか……自分でも判然としないまま太股を擦り合わせ始めた耳に、クスクスと含み笑いが聞こえてきた。

「ふふふ……もう、我慢できなくなってきました?」

 その声でハッと我に返り、真っ赤になって脚を止める。が、こうなると秘所への刺激をより強く意識してしまう。何とか堪えようとするも、知らず知らずのうちに再び太股を擦り合わせるように脚が動き始めた。
(ダメ……ダメっ、抑えないと…。 これ以上は、もうッ………)
 フルフルと細腰を震わせながら必死に抑えつけるエヴェリーナ。それでも堪えきれず、時折ピクンッと小さく跳ねるさまが何とも言えず艶めかしい。
 そして興奮と羞恥にまみれて身をくねらせるエヴェリーナの様子に目を楽しませていたカオスが、その耳元へ囁きかけた。

「どうしてそんなに頑張るんです? 久しぶりに…素直な声、聞かせて欲しいな」

 耳元に熱い吐息を感じ、エヴェリーナの身体がピクピクッと震える。その震えが秘所で新しい快感を生み、さらに大きな震えを…そして快感を呼ぶ。しかしそれは決してエヴェリーナの情念を満たすほどにはならないまま燻り続け、その理性を責め立てる。
(もう……言ってしまおうかしら。ただ一言…。 それだけで…そうすれば、きっと……)
 そこまで考えて、慌ててその思いを振り払う。言えない、そんな事は……言える訳がない。でも目の前の人が、言うまで許してくれないだろう事も知っている。
(どうしよう……どうすればいいの、どうすれば…。早く、何とか……でないと本当に、どうにかなってしまいそう………)
 必死に考えをまとめようとするが恥辱と焦燥によって白く霞んだ頭ではそれもうまくいかない。 そこに、エヴェリーナの意思が揺らいでいるのを見て取ったカオスが追いつめにかかる。

「ホントに強情すねぇ。それじゃまあ……素直になれるオマジナイをかけてみましょうか」

 言うなりカオスの手がエヴェリーナの秘所に伸びる。その手が、充血しきった肉芽をピィンッと軽くはじいた。

「ひぅッ……あぁーーーーっ!」

 抑えようなどと考える暇もなかった。目も眩むような快感がエヴェリーナを貫き、はしたない声をあげながらビクッビクゥッと弓なりに仰け反る。さらに遅れて襲い来る満たされぬ思いに耐える彼女の目に、覗きこんできたカオスの顔が映った。
 その瞳――追いつめているのを確信して濡れた期待に満ちた瞳に、エヴェリーナの心の天秤がある方向へと傾斜を深めてゆく。
(本当に、言うまで許してくれないの…? それまで私…ずっと……)
 ピクンッ…小さく身体が反応する。あらぬ想像がそら恐ろしい思いと共に妖しい期待を呼び、わずかに残った理性を押し流してゆく。もはやそれを押し留める気力もなく、ゆっくりと甘い誘惑に蝕まれ始めた耳に再びのカオスの囁きが忍び込む。

「ね、エヴェリーナさん……どうして欲しいです…?」

 優しく響くその声に惹かれ、思わず顔を上げたところで二人の視線が絡み合う。慈しむような、それでいて有無を言わせぬ光を宿した瞳――その視線に促され、ゆっくりとエヴェリーナの唇が開く。開きかけて閉じ、閉じてはまた開き、激しい葛藤を表すかのように何度も繰り返される。
 やがて最後に一度、大きく喉を鳴らし……ゆっくりと、その言葉をつむぎ出した。


「もう……………焦らさ、ないで…」

 はぁァッ……熱く濡れた吐息を漏らし、エヴェリーナの全身から力が抜ける。ガックリとベッドに沈みこんだところへ満面の笑みを浮かべたカオスが覆い被さり、今日何度目かの口付けが交わされた。



「んッ…ふあ、ァ………」

 ヌチャリ……濡れた感触がカオスの手に伝わり、解かれた股縄と秘所との間に銀の糸を引く。両腕は後ろ手に縛られたままなので隠す事もできず、その部分はまともにカオスの視線に晒されてしまっている。

「んふふ♪ もう十分すぎるくらい準備できちゃってますねぇ…そぉんなに良かったんすか?」

 その言葉に、エヴェリーナが真っ赤に頬を染めながらもカオスの目を見返してくる。怒ったような…というよりは、少しだけスネたような瞳で。

「っとと…ゴメン、もうイジメないから……それじゃ、行きますよ」

 己のモノを濡れそぼった秘所にあてがい、すりつけて愛液をまとわせる。しかしそれだけの準備でさえ待ちきれないかのように、エヴェリーナの腰が震え潤んだ瞳が無言で訴えかけてくる――カオス自身、自分も限界まで張り詰めているのを感じながら、そのいきり立ったモノを一気に突き入れた。

「ひあ゛ぁっ!? ぁ、はッ……あああぁぁぁぁぁっ!!」

 ビクゥンッ…その細い身体が、折れてしまいそうなほど弓なりに仰け反る。仰け反ったままフルフルと震え膣内も激しく痙攣してカオスのモノを締めつけてくる、それは……

「エヴェリーナさん……挿れただけでイッちゃったんすか?」

 思わず聞いてしまったカオスだが、エヴェリーナの方は半開きの口でかすれたように喉を鳴らすばかりでまともに答える事もできない。その様子に一旦動くのを止めて、優しくその髪を撫でる。しばらくそうして落ちつくのを待ち、やがて息も整ってきたところで静かに声をかけた。

「そろそろ、動きますよ…」

 コクン、小さくうなずき返してきたのを確認して、ゆっくりと律動を開始する。

「んッ……ぁ、はっ…あァッ……はッ、あッ…あッ…あッ………はあぁぁッ…」

 始めはゆっくり確かめるように…そして本当に平気そうなのが分かると、徐々に速く、大きく突き上げる動きへと変わっていく。内襞をこすり立て、かき回し、時に子宮口まで届くほどに突き立てる。激しい水音と熱く乱れた吐息の中で酔いしれるカオスの耳に、エヴェリーナの嬌声だけがやけにハッキリと響いてくる。

「ふぁッ…ぁ……カオ…ス、さん…。カオスさん…っ! あっ…あぁァッ」

 もはや漏れ出る声を抑えようともせず、身も世も無くすがりついてくる。そのしなやかな身体を抱き締め、互いの動きを、呼吸を合わせて更に深く愛し合う。
 お互いがお互いを貪欲に求め合い、絡み合いながら一つに溶け、そして………

「ぅ……くッ…」
「はッ……ぁ…、ふああぁぁぁぁぁっ!!」

 最後にキツく抱き締めると、大きなストロークでその最奥までも貫く。自分の膣内が熱いものに満たされてゆくのを感じながら、エヴェリーナの意識は歓喜と快感の渦の中へと溶けていった。



「はぁ……はっ……はぁぁ…………」

 荒い息をつきながら自らのモノを引き抜き、エヴェリーナの隣で横になるカオス。その額にも汗が浮かび、かなりの疲労を感じさせる。その上から縄を解いたエヴェリーナが、体重をかけないよう気遣いながら覗きこむ。

「カオスさん……本当に、大丈夫ですか…?」
「いや、まぁ…ちょっと休めばOKすから。 てゆーか、むしろこの体勢の方がマズイとゆーか〜(^^;」

 意味が分からず、軽く目をしばたかせるエヴェリーナ。しかしすぐにあるものを感じ、その頬がサッと朱に染まる。それはカオスの中心……そこにエヴェリーナの身体に触れる固いものがある。

「もぅ………体の方はそんななのに、こっちは相変わらず疲れ知らずなんですね…」


 苦笑しながら身を起こし、ゆっくりとカオスの下半身の方へ移動するエヴェリーナ。そこへカオスが口を開こうとするが、エヴェリーナの指が置かれて遮られる。

「アナタはそのまま。今度は、私から………ね?」

 クスリ、少し照れたような微笑みを浮かべながら、エヴェリーナの手がカオスのモノに添えられる。そのまま自らの秘所にあてがうと、ゆっくり腰を沈めてゆく。

「くッ、ぅん……ふあぁぁぁ…」

 ヒクッ……ヒクンッ…エヴェリーナの白い裸身が震え己のモノが飲み込まれてゆく。その眺めに新しい興奮を呼び起こされ自分からも動こうとするも、再びやんわりと押し留められる。

「ふふっ……ダメですよ。今度は、私が楽しませてもらうんですから…」

 艶然とした微笑みを向けながら、カオスの反応を確かめるようにゆっくりと腰をうごめかせるエヴェリーナ――二人の夜は、まだまだ始まったばかり。

(2002.12.09)


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