お萩届いて

グレイアス

「萩? あの豆科の多年草か? 秋の七草の」
「将軍……そのボケ、寒すぎます…」
深い溜息と共に、伝令兵は小さくぼやいた。
「和菓子の方ですよ」
「判ってるって。で、届いたってんなら、ここへ持って来れば良いだろうに、何で『来て下さい』なんだ?」
「………まぁ、表に出れば判ります」
「お前なぁ…そんなんじゃ職務怠慢だぞ?」
言いつつも天幕から出る。

「……………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………」
 天幕の前に停められた10tトラック。そしてその荷台に山積みとなったお萩…。
さすがにその異様な光景には絶句した。

「こ、これは壮観だねぇ…」
「そうですねぇ…」
「我が隊の食事、1日分くらいは賄えそうだねぇ…」
「その後しばらく見るのも嫌になりそうですけどね…」
「しかし、これ全部お萩か?」
「他の何かに見えます? 全部お萩だそうですよ」
「本当に全部、食えるのか?」
「毒ですか? すでに幾つか毒見を済ませたと聞いておりますが…」
「いや、そうじゃない」
「はい?」
俺の言葉に怪訝な顔を向ける伝令兵。

「なんでこんなに山になってるのに、下の方も形が崩れてないんだろう?」
「あんたはっ、何処を見とるんですかぁぁぁ〜〜〜っ!!!!???」
「クレアの和菓子製造技術、恐るべし……」
「……お願いですから、変なとこに感心しないで下さいよぉ……」
涙を流す伝令兵を余所に、大量のお萩はその日の夜食として振舞われた。



 …後日談

帝国第8部隊は10tトラックを法術隊の足にしようと計画するも、ガス欠の為に断念する…。

「…ってか、なんでこんなんがあるんだ?」
「いや、自分に聞かれてましても……」

(2002.09.24)


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