殺意と良心(4)

アザゼル+鴉

傭兵になって間も無く........妙な蟠りが出来た。
「なぁ.....ディ」
「ン、如何シタ? 顔色ガ優レナイヨウダガ.......」
「気持ち悪い.......」
素直に言った。
「気分ガ良クナイノカ? 少シ休ンダラ如何ダ?」
「そう言うんじゃ無い......難か.....気持ち悪いんだ」
この時から色々な戦場に出て人を斬り捨てていた。
戦場に出てしばらく、気持ち悪い状態が続いた。
「ソウカ......」
ディは悩ましげな声になった。
「ソノ気持チヲ忘レルナ」
「どうしてだ?」
「本来、闇デ生キル者二トッテアッテハナラヌ物ナノダ」
「何なんだよ......それ」
「良心ダ」
「りょう.....しん?」
「良キ心ト書イテ良心。普通ノ人間ナラ持ツベキ心ダ」
「こころ.......」
「ダガオ前二ハ、殺意モ同居シテイル」
「殺意.........?」
「私カラハコレ以上言ワン。オ前自身デ殺意ト良心ヲ見比ベロ」
ディはそれから殺意と良心について語らなかった。
未完成な心の隅に妙な蟠りを持ち、戦場で傷を負って、あいつに会って殺意と良心の区別がついた。
殺意は人を恐怖に陥り、自分自身を無くす存在。
良心は人を受け入れ、自分自身を認める存在。
俺はそう解釈した。
そして俺は組織を抜け出た。
まだ、暗い夜。
その場の空気は一味違う雰囲気に満ちていた。
「全員に告ぐ! 帝国の部隊が我々の部隊に最終攻撃を行う為突撃してくると思われる! 全員、気を引き締めろ!」
残り僅かとなった深淵の一刀。
「なお、ひかる軍師は私の独断で永倉光成将軍の元へ送った。瀕死の状態の我軍に彼女を置く訳には行かない。皆もそれは承知して欲しい」
「鴉将軍! 私は将軍とクレアのために戦えてとても光栄に思っています。たとえ、死人になれど将軍やひかる軍師、ここに居る全員と戦ったことを魂に刻みます!」
「将軍! 私もです!」
「私も!」
次々に声が上がる。壊滅を承知で次々の言葉を投げかけて来る。
鴉は言葉の一つ一つを受け入れ、自分自身に刻み付けた。
「伝令! 帝国第20部隊を確認しました! 先発隊と交戦中です!」
いよいよだ..........
「全員に最終命令だ!帝国第20部隊を迎え撃てぇ!」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
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目を開けると見慣れぬ天井が目に映った。
「気ガ付イタカ?」
ディ? そうか......来てくれたんだ
「状況は?」
「聞いた話だと、シチル、リュッカともに少しは落ち着いている様だ。だが」
「今すぐに出る....」
「!? マダ傷ガ完治シテイナノダゾ!」
「だから出る。前に出て戦っている人達のことを考えるとこれぐらい.....」
「強要ハセン。ダガ、死ヌナヨ」
「アンタに鍛えられた体だ。そうそう朽ちんよ」

(2002.10.02)


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