殺意と良心(3)

アザゼル+鴉

長い馬車移動。
俺は不意に起こされまだ眠い体を動かしながら山の様に大きいと感じた建物の中に入る。
外見は教会。
だが、中は異様な空気に包まれていた。
またティアマトにしがみ付く。
前からティアマトより背が大きい黒いロープを羽織った人物が来る。
何故か知らないが警戒しなかった。
「・・・・・・・この子です」
ティアマトが俺を前に出す。抵抗はしなかった。
一度俺を見て視線をティアマトに向けた。
「ソウカ.........ゴ苦労ダッタ.....阿佐南カラハ言付ケハ?」
「いえ.....特に有りませんでしたが三日月君を......」
「解カッタ.....」
男が視線を俺に向ける。黒いフードの中に瞳が赤かった。まるでおとぎ話に出てくる吸血鬼。
そう、素直に思った。
「君ガ三日月ダネ?」
「うん....」
顔に似合わず優しい声で俺の恐怖を少しずつ取り除いた。
「私ノ名前ハディアボロス。ディデ良イヨ」
「でぃ?」
この男が俺の養父になったディアボロス。
昔も背中が丸かった......今もだ。
「ココハ本来君ミタイナ子供ガ来テハイケナイ場所。ダガ、私ハ君ノ力ヲ借リタイ。オ願イヲ聞イテクレルカナ?」
子供に難しい内容は理解出来ない。
だが、ディは極力俺に少しでも理解出来るように伝えた。
「よくわかんないけど.......うん。いいよ」
適当かもしれないがディ達には求めていた言葉。
「アリガトウ........君ハ必ズ......」
ディの最後の言葉が聞き取れなかった。まだ、眠かった故寝てしまったのだろう。
起きると朝日が眩しかった。
「おはよう。良く眠れた?」
一瞬、阿佐南先生に見えたティアマト。
「うん......」
取り敢えずまだ眠いが答えた。
「そう。朝から悪いけど運動しようね」
子供の俺には理解出来る前に傭兵としての訓練が何時の間にか始まっていた。
まずは基礎。
体力作りから始まった。
ティアマトが一緒に走ってくれる為何時も付いて行った。これはこれで普通。
初めの頃はもう体が動けないくらいになっていた。朝食を終え、しばらくの休憩。
そして、再びランニング。
初期の体力作りはこれだけ。
慣れてくるとランニングから各部分の筋力付け。
どれも難無くこなした。
ティアマトが一緒に走らなくても何時の間にか自立心が現れた。
そしてディが一通り教えた。俺が居る場所、何故体力トレーニングをしなければならないか。
だが、ディにとって思いもしない答えが俺の口から出た。
「ディが言うならそれに従う」
笑顔で言ったらしい.........
当時、十歳の話。

(2002.10.01)


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