殺意と良心(2)

アザゼル+鴉

孤児院は他に比べ立派......かな? これも良く憶えていない。
一室でティアマトと先生と呼んで慕っていた阿佐南先生と話している。無論、俺の事。
俺は隣の部屋で結果を待つ。静かに見ても飽きない空を見ながら........
不意にドアが開く。
「三日月君.......先生の話聞いてくれる?」
何時も良い匂いがして青みが掛かった黒い髪.....憧れていたかもしれない。
「なぁに?」
「あのね、三日月君はあのお姉ちゃんと一緒に行かなきゃならないの」
阿佐南先生がティアマトを指す。
「どうして?」
今にも泣きそうな顔で尋ねた......多分。
阿佐南先生が俯き、振るえた。どうしたの?と声をかけたかもれない。
「あのね、今の三日月君じゃあ解からないの。でもね、行かなきゃならないの。先生のお願いとして聞いてね.....」
涙目で振るえながら俺の顔を見ていた。これはハッキリと憶えている。
「せんせいにまたあえる?」
「多分.....会えないかもしれないけど、来れる時は何時でも来てね......」
母親のような存在の人を突如無くす。まだ、自立精神が無い子供の俺にはとても嫌な事だ。
また会えると言う言葉を信じて俺はティアマトと一緒に行った.....
「許して.....私を.......許して...........」
俺の見えない所で泣いただろう。
大人の人がティアマトの帰りを待っていた。
「どうぞ...」
ティアマトが俺の掲げ馬車の荷台に乗せる。
1人は前に。もう1人は俺とティアマトを守る様に荷台に。
黒いロープを羽織り恐い。そう感じた。
「大丈夫......良い人よ.....」
自然にティアマトにしがみ付いていたのだろう、包む様に俺を抱くティアマト。
とても長く、じっとして居る事に疲れたのか何時の間にか眠りに付いていた。
「・・・・・その子で本当に大丈夫なのでしょうか?」
「・・・・・・・私はただこの子を迎えに来ただけ。全てを知っている訳じゃないの」
「血の世界にまだこれほど幼い子を......」
「もう、戻れない。この子の運命は決まっているも同然.....変えられない」

(2002.10.01)


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