Flame Of Darkness「序章」

キロール・シャルンホスト

キロール・シャルンホストの軍人精神の後継者が
約2百年後に現れるラコルニア帝国の将キロール・フォルスマイヤーであるならば
キロール・シャルンホストの暗黒面の後継者は今より語るこの男であろう。
元ガルデス共和国軍第10部隊「Legion」副将リック・ベルクルス。
ラグライナ帝国に、後にはアレシア連邦に牙を剥き滅びるテロリスト。
時代を逆行させんとした暗き炎の物語を語ろう・・・

クルス暦1256年、ラグライナ帝国に二人の男女が訪れた。
一人は20代後半の金髪の青年、今一人は長い黒髪をなびかせて歩く20代半ばの女性。
共に旅装束で武器は携帯していない。
2人を気にとめる者も帝都には居ない。
ガルデス共和国、クレアムーン問わず戦災難民が帝都に来る事も珍しくはない。
この2人もそうなのだろう・・・
だが、その一般論に否を告げる物があった。
それは青年の瞳に宿る燃え盛る炎・・・
青年の名はリック・ベルクルス。
これより始まる惨劇の主役。
テロリズムと言う名の惨劇の演出家であり、役者である。
一方の女性の名は、不明。
嘗ては共和国軍の補給担当官だったらしい事は分かっている。
だが、彼女が歴史に名を刻む事はない。
2人を分つ物は主義か主張か・・・
どちらにせよ、彼女の存在は歴史の大局に影響は与えない。
少なくとも、今は。

2人は刑場に立った。
キロール・シャルンホスト終焉の地である刑場に。
互いに交わす言葉もなく、ただ刑場を眺めやる。
ある男の終わりは、ある男に始まりを与えた。
「・・・俺はやるぜ・・・」
「もう、止めないさ・・・」
二人の交わした最後の言葉。
そして、今別れは訪れそれぞれの道に向って歩き出す。
女性は帝都を後にするべく、青年は・・・帝都を見下ろせる場所を探して。
そして、青年は見つけた。
帝都を一望できる場所を。
青年は、そこで自らに問い掛ける。
眼下の街並みを灰にし、女子供容赦なく死に向わせられるかと。
先程、刑場へ向う途中に見た少年の笑顔、息子が生きて帰ってきたとなきながら喜ぶ老婆。
「・・・・やってやろう・・・全てを灰に」
青年は一人誓った。
復讐ではない、正統な戦いでゃない。
ただ、自らの存在意義の証明のために。
キロール・シャルンホストの如く戦い抜く為に。
・・・・帝国をこの暗い炎で焼き尽くす。
そう考え、自らのエゴの歪さに声を上げて笑った。
低く、低く・・・まるで嗚咽のように。
・・・・この時こそ、反帝国主義「Legion」が産声を上げた時であった。
誇り高き共和国第10部隊Legionの死と共に・・・・・
<続>

(2002.12.17)


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