序章・番外編1
御神楽 薙
あれ(序章・決意)から数日……。帝都。
まさか、ジョシュアさんの勤め先(兼住み込み先)というのが皇帝の住む城だとは思わなかった…。
仮にも犯罪者をそんなところに置いていいのだろうか…?
そんなことを考えつつ、今朝、割り当てられたばかりの部屋に入ったのだが…。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
………部屋の中央に……ぬいぐるみ?
(パタンッ)
……とりあえず、扉を閉める。
「・・・・・・部屋番号は合ってるよな?」
……少なくとも案内状に書いてある記号と、扉に書いてあるそれは一致している。
(ガチャリ)
もう一度扉を開けてみる。
……………ぬいぐるみさん、健在…。
(パタンッ)
おもわず再び扉を閉めてしまいます…。
帝国では部屋と同時にぬいぐるみまで支給されるのでしょうか…?
…………親父様。世界は本当に広いです…………。
「な、何者です!!」
…………って、へ?い つの間にか背後に人が。声からすると若い女性かな?
…………ぬいぐるみに気をとられて気がつかなかった…………。
とりあえず振り返って…
「動かないで下さい!!」
だ、そうです…。
しかたないので後ろ向きのまま自己紹介………。
「えと、今日からこの部屋で生活させてもらうことのなった者ですけど・・・・・・。」
「ば、バカなことを言わないで下さい! ここは私の部屋です!」
あ、やっぱりオレが間違ってたんだ。よかった、よかった。
「・・・・・・状況を詳しく説明していただけますね?」
………………よくなかった。なんだか怒っていらっしゃる……。
背中のいやな汗が数日振りに……。
数分後
やっぱり女性だった。いや、女の子と言ったほうがいいのだろうか?
「・・・・・・これ、建物が違いますよ。ほら、ここに書いてあるじゃないですか。」
「・・・・・・読めません」
まだこの国に来て一週間と少し。色々あって勉強なんてする暇もなかったんです…。
この国にくる前に話し言葉はなんとか頭に入れたんですが…。
「・・・・・・読めない? どういうことですか?」
「いえ、実は・・・・・・」
とりあえず状況を説明すること数分……
「・・・・・・状況は理解しました。ですが婦女子の部屋に無断で入ったわけですからそれなりの覚悟はしておいて下さい。」
「・・・いえ、まだ入ったわけでは・・・・・・。」
扉は開けてしまったけど…………。
「・・・・・・何か見ましたか?」
…………見る? 何かってなんだろう? 特に何も見てないよなぁ…………。
「いえ、特に・・・・・・。」
「・・・・・・本当ですか?」
「ええ。」
「・・・・・・そうですか、それなら今回だけは・・・。」
「せいぜい部屋の中央にあったぬいぐるみくらいですか・・・。」
(ピシッ)
ん? なんか変な音が聞こえたような…………。
「・・・・・・見たんですね?」
…………ひょっとして、それが見たら駄目な物だったのだろうか?
…………また、自ら地雷を踏んでしまったかな?
数日後・城内中庭
「はぁ、それは大変ですね。」
ここ数日忙しかったジョシュアさんとの久しぶりの食事中……
とりあえず近況報告などを……
「・・・流石にすれ違うたびにあからさまに避けられると気まずいです。」
「でも、今回のことは薙さんに非があります。」
「はい・・・。とりあえず誠意を持って謝ってはいるつもりなんですが、なかなか・・・。」
とりあえず、ジョシュアさんにはあらかた喋ってみた。その時ようやくこの前の女の子がミルという名前であることがわかった。士官学校で優秀な成績を修めている士官候補生らしい。
この時の説明で、ぬいぐるみのところは意図的に誤魔化した(しゃべったりすると余計に事態が悪化しそうな気がした)のでややちぐはぐな説明になった気がするが、とりあえずジョシュアさんは納得してくれたようだ。
「ええ、それが通じているから避けられるだけで済んでいるのかと。」
……なるほど、そういうこともあるのか。
「あ、すみません、もう時間なので・・・・・・。」
そういってジョシュアさんが席を立つ。
「あ、はい。お仕事頑張って下さい。」
さて、オレも……
いいかげん、仕事見つけなきゃ…………
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